「ぐっ……そ、それはだな……」
視線のやり場に困った俺は、なんとか理性を繋ぎ止めるために激しく頭を回転させた。
開き直ってそのまま胸元を凝視する度胸もなく、かといって露骨に目を逸らせばシキにからかわれるのは目に見えている。
俺は咳払いをひとつ挟み、できるだけ真面目な「質問者」のトーンを装って尋ねた。
「あのさ、シキ……ごまかすわけじゃないんだけど、ずっと気になってたことがあって。お前、さっきのアズミちゃんの服装もそうだけど、外で一瞬すれ違っただけだろ? なのに、服の下の下着とか、見えない部分の構造ってどうやって補完してるんだ?」
アズミちゃんのポロシャツの隙間から覗くピンク色のブラジャーと、程よい胸の谷間。
外見を一瞬見ただけで、下着のデザインや中の肉体まで完璧に再現できるものなのだろうか。
シキはパタパタと胸元をあおぐ手を止め、アズミちゃんの可憐な顔立ちに、どこか誇らしげで知的な笑みを浮かべた。
「ふむ、良い着眼点だぞ、キヨヒコ。私のような高次スライムの模倣能力は、単に『見た目をコピーする』だけにとどまらない。視覚情報から得た全身の骨格、肉の付き方、皮膚の張り、そして歩行時の微小な振動パターンまでを瞬時に演算し、解剖学的に『最も確からしい構造』を自動で補完・構築しているのだ」
彼女は得意げに胸を張り、アズミちゃんの姿のまま、白く細い指先を自らの顎に当てて説明を続けた。
「つまり、対象の外見を一枚撮影するだけで、衣服の下にある筋肉の密度や脂肪のつき方までミリ単位で正確に割り出せるというわけだな。……だが、衣服そのものの『見えない部分』に関しては少し勝手が違う」
「勝手が違う?」
「そうだ。服の下に何を着ているかまでは視覚情報として取得できんからな。だから見えない着ているものは、昨日のインターネットから得た知識をもとに、私なりにアレンジを加えているのだ」
シキはポロシャツの襟元を少し引っ張り、チラリと見えるピンク色のブラジャーを指差した。
「例えばこの下着の色やデザインだ。昨夜、お前のタブレットで収集した膨大な画像データ群……特に『清楚な外見の女性が着用すると効果的な下着』の統計パターンを解析し、この『あずみ』という女性の雰囲気に最も合致し、かつお前の視覚的嗜好を刺激する色として『ピンク』を選出してみたのだが……どうだ? 精確な予測だっただろう?」
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