俺は地縛霊だ。
この古い、苔むした寺の山門が、俺の世界のすべて。
いつからここにいるのか、何で死んだのかさえ、霧の彼方に消えかかっている。
ただ心に深く刻まれた「未練」だけが、俺をこの場所に縫い付けている。
毎日、人々の営みをただ眺めるだけの、色彩を欠いた日々。
誰からも見えず、誰にも触れられず、ただ時間が過ぎていく。
しかし、ある日、彼女がやってきた。
生命力にあふれた大きな瞳をした女子高生。
彼女がこの門をくぐった瞬間、俺の世界に色が戻った気がした。
彼女の姿は、まるでこの古びた風景の中で、そこだけ光が灯ったように鮮やかだった。
彼女は、俺の存在などこれっぽっちも気付くことなく、鼻歌交じりに、どこかへ向かって歩いていく。
その無防備さに、俺の中に眠っていた、とてつもない執着が目を覚ました。
「……あいつなら、俺の未練を晴らせるかもしれない」
俺は、自分でも驚くほどの速度で、彼女の背中に向かって飛んだ。
俺は頼りなげに浮いている小さな青い幽霊のような姿をしていたかもしれない。
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