高級料亭旅館の重厚な門をくぐると、打ち水がされた石畳の先で、凛とした和装の女将が深々と頭を下げて出迎えてくれた。
「いらっしゃいませ。お待ち申し上げておりました。あら、もしかして新婚さんでいらっしゃいますか? おふたりとも本当にお似合いですわ」
「えっ……!? あ、いや、その……まだ、そういうわけでは……っ」
畳みかけられた女将の柔らかな言葉に、力也は一瞬で耳の裏まで真っ赤にし、慌てて手を横に振った。
浮足立つ彼を横目に、俺はすかさず彼の袖をキュッと掴み、上目遣いに照れてみせる。
「もう、力也くんったら……そんなに慌てなくてもいいじゃない。ふふ、女将さん、ありがとうございます。まだ違いますけど……そう見えたなら、すごく嬉しいです」
「まぁ、まぁ! これは失礼いたしました。どうぞ、お部屋へご案内いたしますね」
案内された離れ客室は、檜の香りと庭園の青々とした緑が広がる極上の空間だった。
一通り説明を受け、部屋着の浴衣に着替えると、俺たちはまず旅の汗を流すべく大浴場へ向かうことになった。
「じゃあ力也くん、また後でね」
「ああ、ゆっくり温まっておいで」
男湯へ向かう力也の背中を見送り、俺は何の躊躇もなく、赤地に『女湯』と染め抜かれた暖簾をさらりとくぐった。
脱衣所に足を踏み入れると、夕方の時間帯とあってか、先客の女性客たちが数人、浴衣を脱ぎ着していた。
若い観光客のグループから、落ち着いた雰囲気の年配の女性まで、まさに様々な肉体がそこにはあった。
だが、俺はブラウスのボタンを外し、薄手の生地を肩から滑り落としながら、心の中で冷ややかに嘲笑した。
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