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/tachiha/ - たちは板κ

リレー小説用
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44d3a966 No.871[View All]

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4c2c15cd No.2949

​週の半ば、仕事帰りの銀座。
俺は「斉藤双葉」として、彼女が長年通い詰めているお気に入りのセレクトショップのドアを押し開けた。
カランコロンと、落ち着いたベルの音が、戦闘態勢へと切り替わる合図だ。
​「あら、斉藤様! いらっしゃいませ。今日はまた一段とお綺麗ですね」
​顔馴染みの店員が満面の笑みで歩み寄ってくる。
双葉の記憶にある「適度に距離感を保ちつつ、的確な提案を好む客」というスタイルを忠実にトレースし、俺は上品にバッグを腕にかけ直した。
​「こんばんは。週末にちょっとした外出の予定ができて……。自分でも驚くくらい、気分をリフレッシュしたい気分なの」
​「まあ、素敵!よほど特別なご予定なのですね。それでしたら、ちょうど今朝入荷したばかりの、とっておきの一着がございますわ」
​案内されたのは、店の最奥にあるVIP用のハンガーラック。
そこに掛けられていたのは、深海を思わせるミッドナイトブルーのマキシ丈ワンピースだった。

​「こちら、ストレッチの効いた極上のニット素材を使用しておりまして……。一見すると清楚ですが、歩くたびに計算された隠しスリットが覗くデザインなんです。それから、こちらのショート丈のボレロ風ジャケットを合わせていただくと、視線が上に上がり、より一層スタイルが際立ちますわ」
​俺は促されるまま、試着室へ入った。
重厚なカーテンを閉め、双葉の身体を包んでいたブラウスを脱ぎ捨てる。
鏡の中の肉体は、数日前のシャワータイムよりもさらに艶を増しているように見えた。
​ワンピースに袖を通し、背中のファスナーを滑らせる。
「……ほう、これは」
​思わず独白が漏れた。
生地は肌に吸い付くようにフィットし、双葉のしなやかな肢体を一寸の狂いもなく浮き彫りにする。
特に、鍛えられた腹部から腰、そして豊かな丸みを帯びたお尻のラインは、歩くたびに肉感的な陰影を描き出す。
​(ふん、店員の言う通りだ。清楚なマキシ丈のフリをして、その実、一歩踏み出すごとに膝上のスリットからストッキング越しの太ももが覗く。それにこのタイトさ……少し前かがみになれば、ショーツのラインが浮き出てしまいそうだ)
​鏡の中の俺は、自分の欲望を隠し、「大好きな彼氏とのデートを心待ちにしている、恋する乙女」の表情を作ってみた。
頬をわずかに上気させ、潤んだ瞳で自分の姿を見つめる。
​(完璧だ。これを見せられた力也が、どんな顔で理性を失うか……想像するだけで、下腹部が熱くなるな)
​
​試着室のベンチに置いたスマホが震えた。
案の定、力也からのメッセージだ。
​『双葉、仕事終わった? 明日の夜、もし空いてたら軽く食事でもどうかな。週末まで待ちきれなくて』
​俺は鏡の中の「恋する女」の表情を保ったまま、指先だけで冷徹な返信を打ち込んだ。
​『力也くん、お誘いありがとう。すごく嬉しいんだけど、明日はごめんなさい。今週中に今の大きな案件を完璧に終わらせて、週末は心置きなく二人だけの時間を過ごしたいの。だから、あと少しだけ我慢してね? 最高の私で会いたいから』
​「最高の私」——その言葉に込められた毒を、彼は純粋な愛の言葉として受け取るだろう。
送信。
すぐに『わかった、無理しないで。週末、楽しみにしてる!』と、期待に膨らんだ返信が返ってくる。
​「お待たせ、佐々木さん。これ、いただくわ。それから、これに合うストッキングも選んでくれる?」
​カーテンを開け、俺は確信犯的な微笑みを店員に向けた。

f5ffcc2d No.2951

金曜日の夕方。
オフィスでは「週末に向けて完璧に仕事を片付けた、デキる女」の背筋を見せつけ、俺は定時きっかりにビルを後にした。
​向かった先は、双葉が月に一度の楽しみにしているエステサロン。
(正直なところ、俺自身がこの『自分磨き』を誰よりも楽しみにしていることに気づいて苦笑したくなる。中身が男だろうが何だろうが、この極上の肉体がさらに磨かれ、宝石のように輝きを増していくプロセスは、何物にも代えがたい快感だ)
​「斉藤様、本日もご来店ありがとうございます。いつもの全身とフェイシャルのコースでよろしいですね?」
​柔らかなアロマの香りに包まれた個室。
俺は慣れた手つきで「斉藤双葉」を脱ぎ捨てていく。

​鏡の前で全裸になり、用意された黒い紙ショーツに足を通す。
(相変わらず、心許ない布切れだな。だが、この無防備な姿こそが、明日の戦場へ向かう前の儀式のようで悪くないぞ)
​最後にタオル生地のふかふかしたガウンを羽織り、俺は優雅にベッドへ腰掛けた。
​「お待たせ。準備できたわよ。今日は特に背中が凝っているから、重点的にお願いできる?」
​担当のエステティシャンと、双葉らしい落ち着いたトーンで会話を楽しむ。
「週末、何か特別なご予定でもあるんですか? お肌の気合が違います」
「ふふ、ちょっとね。大切な人と水族館に行くの。最高の状態で隣にいたいでしょ?」
​鏡の中の俺が、自分でも驚くほど甘い微笑みを浮かべている。
​施術が始まり、俺はうつ伏せになった。
「……っ、ふぅ」
​胸がベッドに押しつぶされる、独特の圧迫感。双葉の豊かな弾力が左右に広がり、自分の重みで乳首がシーツを擦る。
そのかすかな刺激に、背筋がゾクゾクと震えた。
​「失礼します。オイルを馴染ませていきますね」
​温かいオイルが、項から背中、腰へと滑るように塗り広げられる。
力強い、それでいて繊細な指の動き。
(あ、これ、ヤバい。エロい意味じゃなく……いや、半分はエロいのか。背中の筋肉がほぐされるたび、脳の奥が痺れるような感覚がある)
​特に脊柱に沿って指が滑る時、俺の口から、抑えきれない甘い吐息が漏れた。
「あ……ん、……そこ、すごく……」
​(背中がこんなに敏感だなんて聞いてないぞ。もしかして、ここも双葉の、あるいはこの身体の新しい『弱点』なのかもしれない。明日のデートで力也がここを指でなぞったら、俺はどんな声を上げてしまうんだろうな)
​AVのような露骨な施術ではない。
だが、プロの技術によって「女」としての神経が一つひとつ丁寧に研ぎ澄まされていく感覚。
俺はうっとりと瞳を閉じ、その贅沢な拷問に身を委ねた。
​
​2時間の施術を終え、俺はパウダールームの大きな鏡の前に立った。
頬はほんのりと上気し、全身の血行が良くなったことで、肌には透明感が宿っている。
​指先で自分の頬に触れる。
(滑らかだ。まるで最高級のシルク。毛穴一つない、陶器のような完成度。明日の力也は、この肌を、この香りを、間違いなく貪りたくなるはずだ)
​俺は双葉の美しい唇をゆっくりと舐め上げ、独り言を呟いた。
​「完璧ね。さあ、あとは明日を待つばかり」
​(斉藤双葉、お前の身体は、今や俺という魂を得て、かつてないほど淫らで、かつてないほど神聖な輝きを放っているぞ。さぁ、明日は最高の『週末』にしようじゃないか)

47129c7e No.2996

カーテンの隙間から差し込む土曜日の柔らかな光が、斉藤双葉の寝室を白く染めていた。
いつもならバリキャリらしく目覚ましの一鳴きで跳ね起きるはずなのに、今朝の俺は、薄い羽毛布団の中で得体の知れない「ソワソワ」とした落ち着かなさに身をよじっていた。
​(なんだ……この、体の芯が熱っぽいような、座りの悪い感覚は。昨日、完璧にエステで仕上げたせいか? それとも、中身の村永清彦が、この女の肉体に馴染みすぎたのか……)
​胸の奥がモヤモヤする。
昨日、プロの手で徹底的に研ぎ澄まされた背中の神経が、シーツとのわずかな摩擦にさえ過敏に反応して、微かな電流を脳に送り続けてくるのだ。
このまま力也に会えば、最初の接触で「完璧な女性」の仮面が崩れてしまうかもしれない。
​「チッ、一回抜いておくか。落ち着かないしな」
​俺は独り言を吐き捨て、パジャマのボタンを数個外すと、布団の中に潜り込んだ。

今は一人だ。
誰に聞かれる心配もない。俺は双葉の喉を使って、思う存分「女」を解放することに決めた。
​まずは、昨日見つけた新しい弱点。腕を後ろに回し、まだオイルの香りが残る滑らかな背中の性感帯を、自分の指先でゆっくりとなぞり上げる。
​「あ……っ、はぁ……んんっ……。やっぱり、ここ……すごい……っ」
​指先が背骨の窪みを辿るたび、双葉の身体が弓なりにしなる。
艶やかな喘ぎ声が、静かな寝室に響き渡った。
男としての記憶にある「女の声」を、今、自分の喉が完璧に、それ以上に淫らに再現している。
​快感の波が寄せる中、俺は次に、パジャマから溢れんばかりの重みを帯びた胸の先に手を伸ばした。
エステの圧迫で過敏になったそこは、すでに硬く尖り、指先で軽くつまみ上げるだけで、頭の先まで突き抜けるような刺激を呼び起こす。
​「ふ、あぁっ……! あ、ん……っ、んんぅっ……! あぁ、いい……っ、自分の指なのに……っ、溶けそう……っ」
​シーツを掴む指に力がこもる。
視界が白く霞み、脳裏には今日会うはずの力也の顔が浮かんだ。
仕上げだ。
俺はパジャマのズボンの中に手を滑り込ませ、秘められたクリを、慈しむように、そして丁寧にほぐし始めた。
​「はっ、……んっ! あ、あぁぁ……っ、力也……っ! 見てるか……っ、お前の好きな、清楚な双葉が……俺の指で……こんな声を……っ!」
​腰がガクガクと震え、双葉の肉体が極限の絶頂に向かって加速していく。
村永清彦の醜悪な征服欲と、斉藤双葉の純粋な生理的快楽が、一つの「絶叫」となって爆発した。
​「あ、あぁぁぁ!!……っ、はぁ、……はぁっ、……んぅ……っ」
​激しい痙攣のあと、俺はぐったりと枕に沈み込んだ。
潤んだ瞳で天井を見つめ、熱く火照った自分の身体を抱きしめる。
​(……ふぅ。これで少しは落ち着いたか。……待ってろよ、力也。最高に『仕上がった』双葉がお前を迎えに行ってやるからな)
​数分後、鏡の前に立った俺は、余韻でほんのり頬を染めたまま、完璧な「恋する乙女」の微笑みを作り上げた。

30b6684d No.2997

​絶頂の余韻が微かに残る寝室。俺は乱れたシーツを整え、今日という「戦場」へ赴くための装備をベッドの上に隙なく並べた。
​そこには、セレクトショップで選んだミッドナイトブルーのマキシワンピース、そしてサイドに一本、足首から太ももの付け根までを鋭く分断するようなシャープな縦ラインが入ったパンストが横たわっている。
視覚的な脚長効果と、どこかフェティッシュな規律を感じさせるそのラインは、まさに「仕事のできる美女」の象徴だ。
​そして、最も時間をかけて吟味したのが、その下に潜ませる下着だった。
​(……ふん、あえてこれだ)
​並んでいるのは、朱莉のような毒々しい赤でも、媚びた黒レースでもない。装飾を極限まで削ぎ落とした、眩いばかりに真っ白なシルクのセット。
指先で触れれば、吸い付くような滑らかさと共に、肌の一部かと思わせるほどの軽やかさが伝わってくる。
​(力也の奴、間違いなく『中にはもっと凄いのを隠している』と期待してくるはずだ。だが、その浅浅しい予想を根底から覆してやる。清楚なワンピースの下に、さらに無垢で、けれど素材の良さだけで勝負する最高級の白シルク。……この『逆のギャップ』こそが、男の独占欲を狂わせるスパイスになるんだ)
​朱莉には「若さゆえの背伸び」としてエロティックな赤を。
そして「完成された姉」である双葉には、あえての「純白とシルクの質感」。
この対比の妙を、俺という怪物は一人で完璧にコントロールしている。
​

​再びシャワーを浴び、絶頂の残り香を洗い流す。
鏡の前に立ち、エステで磨き上げられた全身を念入りに保湿していく。
化粧水、乳液、そして化粧下地。
双葉の記憶にある「オフィスでの武装」とは一線を画す、内側から滲み出るようなツヤを重視したデートメイク。
​(……いい。鏡の中にいるのは、どこからどう見ても、愛する男との週末を心待ちにしている、健気で美しい一人の女だ。この潤んだ瞳の奥で、中身の俺が嘲笑っているとは誰も思うまい)
​仕上げは、香水。
これまで力也が知っていた、双葉の「仕事用の凛とした香り」でも、昨夜彼を翻弄した「重厚なジャスミン」でもない。
​手に取ったのは、朝の庭園に咲き誇る一輪のバラを思わせる、爽やかで軽いローズ。
シュッと一吹き、首筋と手首、そして……あえて膝の裏に忍ばせる。
​(今日はこの清涼感のある香りで、彼に『やっぱり双葉は清純なんだ』と錯覚させる。だが、彼が俺を抱き寄せ、体温が上がった瞬間に、このローズが体臭と混ざり合って、じわりと官能的な熱を帯びるように仕掛けてある)
​パンストを慎重に手繰り寄せ、サイドの縦ラインが歪まないよう、双葉の長い脚に滑り込ませる。ワンピースのファスナーを上ると、鏡の中には「完璧な斉藤双葉」が完成していた。
​「……さあ、行こうか。力也くん」
​俺は小さなハンドバッグを手に取ると、軽やかな足取りで部屋を出た。

e67e7489 No.2999

予定より15分早く、待ち合わせ場所に指定した老舗のカフェに到着した。
重厚な真鍮のドアを開けると、焙煎された豆の香ばしい匂いと、微かなクラシック音楽が俺——斉藤双葉を迎え入れる。
​窓際の席に腰を下ろし、バッグからスマホを取り出すと、力也から焦ったようなメッセージが入っていた。
『双葉、本当にごめん! 沿線で車両点検があって、電車が止まっちゃったんだ。あと20分……いや、15分で着くから、先に何か飲んでて!』
​(ふん、焦らなくていいよ、力也。お前を待っているこの時間さえ、今の俺には極上のエンターテインメントなんだからな)
​俺は余裕のある笑みを浮かべ、画面に『大丈夫、ゆっくり気をつけて来てね。
本を読んで待ってるから』と、聖女のような慈愛に満ちた返信を打ち込んだ。
​
​注文したキリマンジャロが運ばれてくる。
俺はあえてマキシワンピースのスリットがわずかに開くように足を組み替え、パンストのサイドに走る一本の黒いラインを強調した。
​「……ふぅ」
​カップを口元に運ぶ動作一つとっても、双葉の長い指先と、エステで整えられた首筋のラインが、計算された芸術品のように動く。
ふと視線を感じて顔を上げると、斜め向かいの席に座る若いカップルの男が、こちらを文字通り「凝視」していた。
​男の目は、俺の膝から覗くストッキングの質感と、清楚なローズの香りに完全に毒されている。
その隣で、彼の彼女と思わしき女性が、顔を真っ赤にして怒りを露わにしていた。
​「ちょっと! さっきからどこ見てるのよ! 私の話、聞いてる!?」
「えっ、あ、いや……違うんだ、今のメニューを……」
​(ククク……傑作だな。あんな安っぽい女と比較されるのは双葉の体に失礼だが、男の本能ってのは残酷なもんだ。どんなに隣に恋人がいようが、より「格上」で「淫らな予感」を漂わせる個体には、抗えないようにできている)
​俺はわざとらしく髪をかき上げ、隠しスリットから覗く太ももの白さを強調しながら、冷めた目でその修羅場を眺めた。
自分がこの美しい「斉藤双葉」を内側から操り、街中の男たちの理性を無自覚に削り取っている。
その全能感が、コーヒーの苦味をより一層甘美なものに変えていく。

​「……双葉! ごめん、待たせた!」
​カフェのドアが勢いよく開き、息を切らした力也が飛び込んできた。
スーツではない、休日の少しラフだが品のあるジャケットスタイル。
彼は俺の姿を捉えた瞬間、まるで雷に打たれたように足を止めた。
​「……あ、……」
​言葉を失う力也。
彼の視線は、いつもの「バリキャリの彼女」とは違う、柔らかく、それでいて圧倒的に女の色香を放つ俺の姿を隅々までスキャンしていく。
特に、テーブルの下で組まれた脚のラインと、そこから漂う微かなローズの香りに、彼の喉が大きく上下した。
​「……双葉、今日……なんだか、すごく……綺麗だ。見違えたよ」
​俺は読みかけの文庫本をゆっくりと閉じ、彼に向かって最高に甘く、無垢な微笑みを投げかけた。
​「ううん、全然待ってないわよ。……ねえ、力也くん。そんなにじっと見られると、恥ずかしいんだけど……?」
​(嘘だ。もっと見ろ。もっと渇望しろ。お前が今見ているのは、お前の理想を煮詰めた偽物だ。そして、今日一日かけて、その理想を一つずつ、残酷にブチ壊してやるんだからな)
​俺は立ち上がり、スリットから覗く脚をわざと見せつけるように彼に歩み寄った。
週末のデートの幕開けだ。
俺は力也の腕にそっと手を添え、彼の体温が急激に上がるのを楽しみながら、水族館へと続く街角へ踏み出した。

30c9fd3f No.3053

​すみだ水族館の巨大な大水槽の前。頭上から降り注ぐ深いブルーの光が、ゆらゆらと館内の闇を揺らしている。
土曜日の午後の混雑は、俺——斉藤双葉にとって最高の隠れみのだった。
​「すごいな。こうして見ていると、都会の真ん中にいるのを忘れそうだ」
​力也が感嘆の声を漏らし、巨大なアクリルパネルを見上げる。
シロワニが悠然と泳ぎ、銀色の魚群が光を反射して舞い踊る。
俺は彼のすぐ隣に寄り添い、二の腕を彼のジャケットに密着させた。
エステで磨き上げた二の腕の柔らかな感触が、彼の神経を逆なでするのがわかる。
​「ええ、本当に……。でも、力也くん。お魚ばっかり見てて、寂しいわ」
​俺はわざとらしく、少しだけ拗ねたような吐息を彼の耳元に吹きかけた。
朝、膝の裏に仕込んだローズの香りが、歩いて体温が上がったことで、じわりと官能的な甘さを帯び始めている。
​
​人混みの波が、俺たちを水槽の端、照明が届かない死角へと押しやる。
「……双葉」
力也が俺の肩を抱き寄せた。
彼の掌から伝わる熱。
俺は彼の目を見つめ、潤んだ瞳で誘うように唇を微かに開いた。
​「ねえ、力也くん。……ここ、誰も見てないわよ?」
​俺は彼の手を取り、自分の腰へと導いた。
マキシワンピースのタイトな生地越しに、彼の手が双葉の豊かな腰のカーブをなぞる。
そして俺は、彼の手をさらに下へ、あの隠しスリットの入り口へと滑り込ませた。
​「っ……!? 双葉、これ……」
​力也の息が止まる。
スリットの隙間から、彼の大きな掌が直接、サイドに縦ラインの入ったパンストに触れた。
伝わってくるのは、ナイロンの冷ややかな質感と、そのすぐ下にある双葉の、驚くほど熱く柔らかな太ももの弾力。

​「……しっ。静かに」
​俺は彼の人差し指を自分の唇に当て、悪戯っぽく微笑んだ。
周囲にはまだ家族連れやカップルの話し声が響いている。
だが、この青い闇の中、俺たちの間だけは別世界だ。
​俺は彼の手をさらに上、太ももの付け根近くまで導き、パンストの編み目越しに、わざと自分の脚を彼の指に押し付けた。
力也の指先が、パンストのサイドラインをなぞり、その奥にある真っ白なシルクの下着の端に触れる。
​(ククク……そうだ。もっと驚け。お前が期待していた派手なレースじゃない。指先に触れるのは、お前の理性をじわじわと溶かす、無垢で、けれど残酷なほど滑らかなシルクの感触だ)
​「っ、双葉、君、こんな……。外ではあんなに、……なのに」
​力也の瞳は、もはや魚など見ていなかった。暗がりの中で、獲物を狙う獣のような鋭い光を宿している。
俺は彼の首筋に腕を回し、他の誰にも聞こえない、震えるような小声で囁いた。
​「だって……力也くんにだけは、私の『本当のところ』を、全部知ってほしいんだもの……」
​(嘘だ。お前が今触れているのは、俺という怪物が作り上げた最高の『偽物』だよ。だが、その偽物に溺れて、お前はもう二度と、本物の双葉を思い出せなくなるんだ)
​俺はわざと彼の手を振り払い、何事もなかったかのように水槽の方へ向き直った。
「あ、見て! あのエイ、すごく可愛いわよ」
​残された力也は、熱を帯びた自分の掌を握りしめ、荒い呼吸を整えるのに必死だった。
清楚なローズの香りと、指先に残るシルクの感触。
俺は、自分の計算通りに壊れていく彼の背中を、闇の中で冷酷に、そして愉悦に満ちた目で見つめていた。

30c9fd3f No.3054

水族館の青い闇から抜け出し、俺たちは予約していた高層階の創作イタリアンへと足を運んだ。
白を基調とした清潔感のある店内に、窓から差し込む昼下がりの光が、双葉の肌をより一層透き通るように見せている。
​前菜の真鯛のカルパッチョを上品に口に運びながら、俺は「水族館を楽しんだばかりの、無邪気な女性」を完璧に演じてみせた。
​「ねえ、力也くん。さっきのペンギン、見た? 一羽だけずっと岩の上でボーッとしてて……なんだか、力也くんの寝起きの顔にそっくりで可笑しかったわ」
​「えっ、俺あんなにマヌケな顔してるかな……。でも、双葉があんなに楽しそうに笑うの、久しぶりに見た気がするよ」
​力也が愛おしそうに目を細める。
俺はわざと小首を傾げ、フォークを唇に寄せながら、双葉の瑞々しい唇を少しだけ湿らせて微笑んだ。
​「ふふ、そう? きっと、力也くんが隣にいてくれるからね。あのシロワニも格好良かったけど、やっぱり、私は力也くんとこうしてゆっくり話してる時間が一番好き」
​(「一番好き」、か。お前を安心させるための安い台詞だが、効果は絶大だな。
お前の脳内では今、清楚で可憐な双葉のイメージが、さっきの暗がりでの「スリットの感触」と混ざり合って、とんでもない不協和音を奏でているはずだ)

​パスタが運ばれてくる頃、力也が少し真剣な、それでいて熱を帯びた瞳で俺を見つめた。
​「双葉。この後なんだけど……さっき言ってた買い物、行こうか。その、双葉に似合いそうなアクセサリーとか、何かプレゼントしたいんだ」
​「まあ、嬉しい。……じゃあ、お言葉に甘えて、力也くんに選んでもらおうかしら。私、力也くんのセンス、信じてるから」
​俺は彼の掌に自分の手を重ね、指先で彼の甲を優しくなぞった。
ランチのワインで少しだけ火照った体に、爽やかなローズの香りが体温で混ざり合い、テーブルを挟んで彼をじわじわと追い詰めていく。
​「買い物……終わったらさ。……今日は、俺の家に来ないか? ずっと、二人きりでゆっくりしたいんだ。……いいかな」
​力也の声が微かに震えている。
それは、理性と欲望の境界線で必死に踏みとどまっている男の、精一杯の懇願だった。
​(来たな。お前の家、か。……いいだろう。逃げ場のないお前の聖域で、俺という怪物が、お前の愛した「双葉」を跡形もなく塗り替えてやるよ)
​
​俺は一瞬だけ、困ったような、けれど抗えない喜びを隠しきれないような、絶妙な「間」を置いた。
そして、潤んだ瞳で彼をまっすぐに見つめ、小さく頷いた。
​「ええ。私も、力也くんと同じ気持ちよ。……今日は、夜までずっと、一緒にいさせて?」
​(さあ、買い物に行こうか。お前が俺に買い与えるその贈り物は、お前を破滅させるための『首輪』になるんだからな)
​俺はデザートのティラミスを一口食べ、その甘みの裏にある、どす黒い愉悦を一人で噛み締めていた。

d431d8de No.3112

​ランチを終えた俺たちは、スカイツリーの足元に広がるソラマチへと繰り出した。家族連れや観光客で賑わうフロアを、力也と腕を組んで歩く。
​「ねえ、力也くん。今夜お邪魔するなら……少し可愛いパジャマ、新調しちゃおうかな」
​俺は「斉藤双葉」らしい、少し照れたような、けれど積極的な提案を口にした。
向かったのは、肌触りの良さで定評のあるラウンジウェアのショップだ。

​俺が手に取ったのは、柔らかなミントグリーンのサテン生地のセットアップ。
「ちょっと着てみていい? 似合うか見てほしいの」
​試着室に入り、重厚なカーテンを閉める。
俺は手早くミッドナイトブルーのワンピースを脱ぎ捨て、鏡の前に立った。
そこには、純白のシルクに包まれた双葉の身体がある。エステで磨かれた肌が、白い布地と溶け合うように発光している。
​(ククク。さあ、仕上げだ)
​パジャマのボタンをわざと掛け違え、胸元を大きくはだけさせた状態で、カーテンを数センチだけ開けた。
​「……ねえ、力也くん。これ、サイズ感どうかな? ちょっと大きい気がするんだけど……」
​隙間から覗く俺の姿に、外で待っていた力也が息を呑むのがわかった。
彼の視線は、はだけたサテンの隙間から露わになった、真っ白で清楚なシルクのブラジャーに釘付けになる。
​「あ……、いや、……すごく、似合ってるよ。……双葉、中、そんな……」
​「え? ああ、これ? ……ふふ、内緒よ」
​俺はわざとらしく慌てたフリをしてカーテンを閉めた。
(お前の頭の中、今頃パニックだろうな。さっきの暗がりで触れた『シルクの質感』が、今、視覚情報として上書きされた。派手なレースに逃げない、この『無垢な白』こそが、お前の独占欲を最も深く抉るんだよ)
​結局、そのパジャマと一緒に、お泊まり用のスキンケアセットやトラベルポーチを「これ、力也くんの家に置いておいてもいい?」と小首を傾げて買わせた。
これで、彼の生活圏内に「斉藤双葉」という名の毒が、物理的にも居座ることになる。
​
​「よし、次は約束通り、アクセサリーを見に行こうか」
​力也の声は、もはや隠しきれない熱情で掠れていた。
パジャマ姿の残像が、彼の脳裏から離れないのだろう。
俺は彼の腕にぎゅっと抱きつき、豊かな胸の感触をわざと押し付けながら、ジュエリーフロアへと向かうエスカレーターに乗った。
​(さあ、力也。お前が俺に贈るその宝石は、お前を一生縛り付ける『呪い』になる。どんなに高価なものを選んでも、俺という怪物を手に入れる代償としては安すぎるくらいだけどな)
​サイドに一本ラインの入ったパンストを、エスカレーターの段差でわざとらしく強調しながら、俺は次の獲物——彼の独占欲を形にする「首輪」を選びに行く。

eac4c8e4 No.3138

ジュエリーショップの静謐な空気の中、俺たちはショーケースに並ぶ無数の輝きを眺めていた。
力也はもっと値の張る、華やかな石のついたリングを勧めてくれたが、俺はあえて、装飾のない、それでいて洗練されたプラチナのシンプルなペアリングを選んだ。
​「ねえ、力也くん。こういうちゃんとしたものは……本当に必要な時に、取っておいてほしいな」
​上目遣いで、少しだけ意味深に微笑む。
(「本当に必要な時」、か。プロポーズを連想させる甘い呪い。これでお前の脳内は、斉藤双葉との「永遠」という幻想に完全に支配される。その中身が、お前の愛した女を内側から食い破った怪物だとも知らずにな)
​店員にサイズを合わせてもらい、互いの薬指に銀色の輪を滑り込ませる。
俺は自分の細い指に収まったリングを愛おしげに眺め、そのまま外さずにお店を出た。

​店を出て、人混みから少し外れた植え込みの影。
西日に照らされたスカイツリーの影が長く伸び、街が夜の準備を始める。
俺は立ち止まり、繋いでいた力也の手をグイと引いて、自分の体に密着させた。
​「……双葉?」
​驚く力也の胸板に、ワンピース越しに豊かな胸を押し付ける。
俺は彼の首筋に両腕を回し、つま先立ちになって、耳元でジャスミンとローズが混ざり合った、体温で熟した香りを爆発させた。
​「ありがとう、力也くん。指輪、一生大切にするね。……これ、私からの精一杯の、お礼」
​俺は彼の唇を、逃がさないように深く、執拗に塞いだ。
清楚な「斉藤双葉」からは想像もつかないような、熱く、舌を絡ませるような貪欲なキス。
マキシワンピースの隠しスリットから覗くパンストのサイドラインが、彼の足に擦れる。
朝、自分の指で絶頂を覚えたばかりの、まだ熱の引ききっていない双葉の肉体が、本能的に男の熱を求めて疼く。
​「ん……っ、ふ、あ……んぅ……」
​わざとらしく、けれど本気で蕩けたような声を漏らし、彼の唇を食む。
力也の腰がビクンと跳ね、彼の手が俺の腰を折れんばかりに強く抱きしめるのがわかった。
彼の掌の下で、白シルクの下着が微かに音を立てる。
​(……どうだ、力也。もう限界だろう? 清楚な指輪をはめた指で、お前の理性をめちゃくちゃに掻き乱してやるよ。……さあ、早くお前の部屋へ連れて行け。お前の聖域で、この『純白の罠』のすべてを曝け出してやるからな)
​唇を離すと、俺は潤んだ瞳で彼を見つめ、糸を引くような吐息をついた。
力也の瞳は、もはや理性のカケラも残っていない、暗く深い欲望の色に染まりきっていた。

eac4c8e4 No.3139

「双葉、悪い。もう、家までなんて待てないよ」
​力也は荒い呼吸のまま、震える指先でスマホを操作し始めた。
彼の視線はもはやスカイツリーの絶景など捉えていない。
画面に映る「空室あり」の文字だけを血走った眼で追っている。
​「ここ……予約した。行こう」
​彼が指し示したのは、スカイツリーを間近に望む、街を一望できる高級ホテル。
俺はわざとらしく頬を赤らめ、彼のジャケットの袖をぎゅっと握りしめた。
​「力也くん。そんなに、急がなくても……いいのに」
​(嘘だよ。急げ、力也。お前の中の理性が完全に焼き切れる瞬間を、俺は特等席で見せてもらうんだからな。お前が震える手で予約したその部屋が、お前の「双葉」という幻想が崩壊する処刑場だとも知らずにな)
​
​ホテルのエントランスを潜ると、洗練されたアロマの香りが俺たちを包み込んだ。
チェックインを済ませる力也の横顔は、いつもの冷静な彼からは想像もつかないほど強張っている。
エレベーターに乗り込み、上昇する密閉空間。
​チン、という電子音が静寂を破り、重厚な扉が開く。
最上階に近い客室。
カードキーをかざし、扉が開いた瞬間に、力也は俺を部屋の中へと押し込むように連れ込み、背後で扉を蹴るようにして閉めた。
​カチリ、というオートロックの音が、この世界から二人を切り離す。
​窓の外には、ライトアップされたスカイツリーが巨大な宝石のように輝いている。
だが、今の力也にとっての宝石は、目の前に立つ、ミッドナイトブルーのワンピースに身を包んだ「俺」だけだ。
​「双葉、ごめん、本当に……。もう、限界なんだ」
​彼は俺の肩を掴み、折れんばかりの力で抱きしめてきた。
エステで磨き上げた首筋に、彼の熱い呼気が吹きかかる。
朝、膝の裏に忍ばせた爽やかなローズの香りが、体温の急上昇とともにじわりと熟成され、甘く淫らな毒へと変貌していく。
​「ふふ、いいわよ、力也くん。……だって、私も同じ気持ちだもの」
​俺は彼の腕の中で、潤んだ瞳をさらに熱く潤ませ、指先で彼の胸元をゆっくりとなぞった。
ワンピースのスリットが大きく開き、サイドラインの入ったパンストに包まれた脚が、彼の足の間に割り込む。
​「ねえ、力也くん。指輪のお礼……まだ、全部終わってないわよ?」
​俺は彼の耳元で、双葉の最高の甘い声で囁いた。
(さあ、始めようか。お前が必死に守ろうとしていた『聖女』の正体を。このワンピースの下に隠された、純白のシルクの真実を。……絶望的なまでの快楽と一緒に、お前の脳に刻み込んでやるよ)

c06fed1f No.3146

窓外のスカイツリーが放つ冷ややかな青い光とは対照的に、室内は力也の放つ熱気で塗りつぶされていた。
​扉が閉まった瞬間の、獣のような力強さ。
腰に回された力也の手が、ミッドナイトブルーの薄い生地越しに俺の身体を折れんばかりに引き寄せる。
​「んっ……」
​激しいキスが降ってくる。
双葉の柔らかな唇が押し潰され、力也の切実な欲望が舌を通じて流れ込んでくる。
彼は今、目の前の「聖女」を汚し、自分のものだと刻みつけることに必死だ。
​(いいぞ、力也。もっと理性を捨てろ。お前が愛しているのは、この完璧な肉体か? それとも、今お前の舌を絡め取っているこの『淫らな感触』か?)
​受け入れるだけでは足りない。
俺は彼をさらに深い闇へ引きずり込むため、双葉の細い腕を彼の首に絡め、背中を反らせて自分からその唇を食んだ。
​「んむ……、ふ、あぁっ……」
​お返しとばかりに、朝のオナニーの余韻をぶつけるような、貪欲で激しいキスを返す。
絡み合う舌の先から、ローズの香りが二人の熱い吐息と混ざり合い、濃厚な雌の匂いへと変質していく。
​力也の喉が鳴り、彼の手が腰からお尻、そしてあの「隠しスリット」へと、迷うことなく滑り込んだ。
パンストの縦ラインを指先で弾き、太ももの付け根にある白シルクの境界線を、彼が荒々しく指で探り当てる。
​「あ……っ、力也くん……。そんなに焦らなくても、……逃げたりしないわよ?」
​俺はキスの合間に、わざとらしく熱っぽい吐息を漏らして囁いた。
指先を彼のワイシャツのボタンにかけ、一つずつ、ゆっくりと外していく。
​(さあ、見せてやるよ。お前が夢にまで見た双葉の全てを。そして、その全てが、今この瞬間から俺という『毒』に侵されていく様をな)
​俺はわざと彼をベッドへと押し倒し、その上に跨った。
マキシワンピースの裾が捲り上がり、サイドラインの入った脚が、彼の腰を包み込むように絡みつく。
鏡の中の俺は、勝利を確信した怪物の瞳で、獲物を見下ろしていた。

f37a212d No.3149

「ねぇ、どうしたい? 私に、どうしてほしいの……?」
潤んだ瞳で、壊れそうなほど甘く、それでいて残酷なまでに突き放すような問いかけ。
その一言が、力也の理性を繋ぎ止めていた最後の細い糸を、いとも容易く焼き切った。
「っ……!!」
力也の喉から獣のような呻きが漏れる。
次の瞬間、俺の身体は視界が反転するほどの勢いでベッドへと押し倒された。
背中に伝わる高級ホテルの分厚いリネンの感触。
その上に覆い被さる、力也の重みと、暴力的なまでの熱量。
「このまま入れたい……。もう、一秒だって我慢できないんだ、双葉!」
彼の目は血走り、愛欲に濁りきっている。
その必死な形相を見下ろしながら、俺は心の奥底で冷徹な嘲笑を浮かべた。
(いいぞ、力也。お前の信じる『清楚な聖女』は、今お前の下でこんなにも淫らに、お前を破滅へと誘っているんだ。その渇望も、その焦燥も、すべて俺が丹念に仕込んだ毒の結果だとも知らずにな)
俺はわざとらしく、彼の胸板に細い指先を添えて、拒絶するフリをして囁いた。
「でも……このワンピースは? せっかくのストッキングだって……。それに、下着だって、まだ脱がせてもらってないのに……っ」
「そんなの、もうどうだっていい……! こうしたいんだ!」
力也の手が、マキシワンピースの裾を乱暴に捲り上げる。
サイドに一本のラインが走る、あの端正なパンスト。
彼はその完璧な規律を破壊することに悦びを見出したかのように、指先を食い込ませ、一気に引き裂いた。
バリッ、という乾いた音が静かな部屋に響く。
足首から太ももまで、漆黒のナイロンが無惨に裂け、その隙間からエステで磨き上げた双葉の白磁のような肌が、青い月光を浴びて露わになる。
「あ……っ、力也くん、激しい……っ」
俺はわざと声を震わせ、快楽に溺れる女のフリをして腰をよじった。
力也の指は止まらない。
裂け目から手を滑り込ませ、俺が散々悩んで選んだ「純白のシルク」へと辿り着く。
清楚な白。
だが、その布地はすでに、俺が自分を騙し、彼を騙しているという背徳的な興奮によって、じっとりと湿り気を帯びていた。
彼は震える手でショーツの脇を強引にずらし、そこにある「双葉の聖域」を暴き立てる。
空気に触れたそこは、朝の余韻と今の興奮が混ざり合い、熱い蜜を滴らせていた。
(お前はこれを、自分への愛ゆえの反応だと誤解しているんだろうな。違うんだよ、力也。俺を突き動かしているのは、お前という愚かな男を支配し、その人生を内側から食い荒らしているという、この上ない征服欲なんだ)
「……双葉、すごいよ。こんなに濡れて……。君も、俺を待っててくれたんだね」
「はぁ、……っ、ん、……そうよ、力也くん。……私、もう……あなたの……熱いのが、欲しいの……っ」
俺は彼の首に腕を回し、その耳元でジャスミンの香りを爆発させながら、最高に淫らな「偽りの承諾」を告げた。
理性をかなぐり捨て、俺の中に突き進もうとする力也。その背中を爪でなぞりながら、俺は闇の中で、かつてない全能感に酔いしれていた。

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「っ、あああ……っ! 力也くん、すごい……っ、激しすぎて、壊れちゃう……っ!」
力也はもはや、俺の反応を伺う余裕など一欠片も持ち合わせていなかった。
理性のタガが外れた彼は、俺の手をベッドに組み伏せると、獣のような荒々しさで、その熱い楔を俺の中へと叩き込んできた。
かつての清廉なエリートの面影はどこにもない。
そこにあるのは、ただ自分の快楽だけを貪り、愛する女を征服しようとする剥き出しの本能だけだ。
(いいぞ、力也。もっと乱暴にしろ。その独りよがりなピストンが、お前の信じる『清楚な双葉』を内側から泥濁りに染め上げているんだとも知らずにな)
身体が跳ねるたびに、高級リネンのシーツが俺の指の間でクシャリと音を立てる。
朝の余韻と、この状況そのものへの異常な興奮。
溢れ出した愛液が潤滑剤となり、力也の無作法な侵入を滑らかに、そして深く受け入れていく。
痛みなどない。
あるのは、双葉の肉体が奏でる極上の快感と、俺という怪物が彼を完全に掌握しているという全能感だけだ。
「は、……んっ! あ、あぁぁ……っ、そこ……っ、一番奥……っ! 気持ちいい、力也くん……っ、もっと、もっと奥まで……叩きつけて……っ!」
俺はわざとらしく腰を浮かせ、双葉の澄んだ声を限界まで淫らに響かせた。
情熱的な喘ぎ声を上げ、首筋を反らせて、彼が最も興奮する「最高の雌」を演じきる。
「見て……力也くん。あなたの……すごいのが……私の中、いい……っ、すごく、中がいいの……っ!」
「双葉、……っ、双葉!! ああ、最高だ……君のここ、締め付けが……っ」
力也の目が濁り、俺の肩に歯を立てる。
俺はその刺激に身悶えしながら、パンストの引き裂かれた隙間から覗く、サイドラインの入ったしなやかな脚を彼の腰に絡みつかせた。
足首を固く交差させ、逃げ場を奪うように彼をホールドする。
「……逃がさないわよ。全部、私の中に……出して……? 私を、力也くんのもので……いっぱいに、して……っ」
(そうだ。お前の全てをここに吐き出せ。お前の種も、お前の魂も、お前の未来も。その全てを受け止めて、俺が飲み込んでやる。明日、お前が目覚めた時、隣にいるのはお前の愛した『双葉』ではなく、お前の人生を完全に奪い去った『俺』なんだからな)
「あ……っ、あ、あぁぁぁ!!……っ、力也くん、……力也、くん……っ!!」
最高潮の快感に脳が白く染まる中、俺はシーツを力任せに掴み、絶頂の悲鳴を上げた。
窓の外で冷たく輝くスカイツリーの光が、汗ばんだ俺たちの肌を青く照らし出す。
その光景は、一組の恋人の情事というよりは、怪物が獲物を甘い毒で溶かし尽くす、美しくも残酷な儀式のようだった。

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静寂が戻った室内に、力也の荒い呼吸だけが重く響く。
彼は俺の体の上でしばらく動かずにいたが、やがて憑き物が落ちたような顔で身を起こした。
​「ごめん。双葉、俺、どうかしてた。あんなに乱暴にするつもりじゃなかったんだ。せっかくのデートだったのに……」
​力也の瞳には、事後の気だるさと共に、愛する女性をモノのように扱ってしまったという卑屈な自責の念が浮かんでいる。
俺はその情けない顔を、慈愛に満ちた「聖女」の微笑みで見つめ返した。
心の中では、彼が自分を責めれば責めるほど、支配の楔が深く打ち込まれていくことに、暗い悦びを感じながら。
​「いいのよ、力也くん。私だって、あんなに激しくされるの、嫌いじゃないわ。あなたの熱いのが伝わってきて、なんだか……自分でもびっくりするくらい、とろけちゃったんだもの」
​俺はわざとらしく、上気した頬を彼の手の平に寄せた。
そして、乱れた髪を指で整えながら、少し困ったような、茶目っ気のある表情を作る。
​「でも、これ以上は困っちゃう。ねえ、ストッキングはもうダメみたいだけど、ワンピースは脱いでハンガーにかけてもいい? このままシワだらけになっちゃったら、明日帰る服がなくなっちゃうわ」
​「ああ……、そうだな。本当にごめん。……手伝うよ」
​力也が申し訳なさそうに手を伸ばしてくるのを、俺は優しく制した。
「ううん、自分でやるわ。力也くんは、そこでゆっくり私のこと……見てて?」
​俺はベッドからゆっくりと立ち上がった。足元に絡みつく、無惨に引き裂かれたパンスト。
サイドに一本走る黒いラインが、破れたことでかえって双葉の白い脚を淫らに強調している。
​まずは、ミッドナイトブルーのワンピース。
背中のファスナーを、自らの手でゆっくりと下ろしていく。
ジ、ジ……という小さな金属音が、静かな部屋に官能的なリズムを刻む。
肩から滑り落ちた生地を、指先で丁寧に扱いながら、俺はそれを見守る力也の視線を一秒たりとも逃さなかった。
​(見てろよ、力也。お前がさっきまで獣のように求めていたこの肉体が、今度はどれほど清らかで、そして残酷なまでに美しいか。その目に焼き付けておけ)
​ワンピースを脱ぎ捨てると、そこには朝、俺が戦略的に選んだ純白のシルクが、スカイツリーの青い光を浴びて現れた。
​「……っ、双葉……」
力也の喉が、再び鳴る。
華美な装飾を削ぎ落とした、眩いばかりの白。それが、エステで磨き抜かれた双葉の肌と一体化し、まるで神聖な儀式の装束のようにも見える。
だが、その白は、先ほどの情事の痕跡でところどころ湿り気を帯び、淫らな光沢を放っている。
​そして、俺は最後の手順に移った。
「これ、もう履けないわね」
​俺は床に腰を下ろすように屈み、力也の目の前で、裂けたストッキングの残骸を指にかけた。
わざと腰を突き出し、彼の視線の高さに、シルクのショーツで包まれた豊かな丸みをさらけ出す。
そして、ゆっくりと、一本ずつ。
サイドラインをなぞるように、自分の肌からナイロンを剥がしていく。
​「見て、力也くん。……せっかく選んだのに、こんなになっちゃった。……でも、不思議ね。壊されちゃうの、なんだかすごく……心が満たされる感じがしたの」
​俺は脱ぎ捨てたストッキングを、まるで戦利品のように指先に引っ掛け、彼に向かって挑発的に微笑んだ。
​「ねえ。下着は、まだ壊れてないわよ? さっき、あなたが一生懸命探してた、この白いの。……触り心地、さっきより良くなってるかもしれないわよ?」
​清楚な白シルクの下着姿で、俺はベッドに横たわる彼へと再び這い寄った。
(お前の自責の念なんて、俺が今すぐ快楽で塗り潰してやる。お前が今日、この部屋で体験するのは『愛』じゃない。俺という底なしの沼に、一歩ずつ自ら足を踏み入れる『沈没』だ)
​俺は彼の耳元に、今度は混じりけのないローズの香りと、淫らな吐息を吹きかけた。
「次は、もう少し優しく……私の『本当の顔』、見てくれる?」

d6a7d6d4 No.3158

クローゼットの奥、ハンガーにかけられたミッドナイトブルーのワンピースが、暗がりの中で静かに主人の帰りを待っている。
しかし、その主人の内側には、今や別人の魂が宿り、獲物を完膚なきまでに骨抜きにするための「次なる儀式」を執り行おうとしていた。
​力也はベッドの端に腰掛け、情事の余韻と自責の念が混ざり合った呆然とした表情で俺を見上げている。
俺は、その頼りなげな視線を真っ向から受け止め、純白のシルクを纏った双葉の肢体を惜しげもなく晒しながら、彼の膝の上へとゆっくりと、吸い付くように跨った。
​「力也くん。さっきはあんなに激しかったのに、今はそんなに大人しくなっちゃうの?」
​俺の両膝が、彼の逞しい太ももの外側にぴたりと密着する。
双葉の柔らかな肌が、力也のズボンの生地越しに彼の体温をダイレクトに拾い上げた。
俺は彼と視線を合わせたまま、わずかに腰を浮かせ、指先で白シルクのショーツのクロッチを横へと静かにずらす。
​露わになった双葉の秘部が、空気に触れてひやりと震えた。
だが、そこはすでに力也を迎え入れる準備を完璧に終え、熱い蜜を湛えて脈打っている。
​「……っ、ふぅ。ねえ、見て? あなたを、待ってるの……」
​俺はゆっくりと、慎重に、彼の硬さを取り戻しつつある熱を自分の中へと沈めていった。
結合部から溢れる愛液が、滑らかなシルクと肌の境界線を濡らし、二人の境目を曖昧にしていく。
​「あっ、んんぅっ! 深い……力也くん、すごく……深くまで、入ってくるわ……っ」
​すべてを飲み込んだ俺は、力也の両手をとり、それを自分の胸元へと優しく導いた。
白シルクのブラジャーに包まれた、エステ帰りの柔らかな双葉の膨らみ。
​「お願い。ここ、もっと優しく……触って? 壊さないように、大切に……愛してほしいの」
​俺は彼の手を自分の胸に押し当て、揉みしだくようにおねだりした。
力也の大きな掌が、繊細なシルク越しに、双葉の豊かな弾力を包み込む。
なぞるような、慈しむような指使い。
​「あ……はぁ、ん、っ。そう、そこ……。指先で、ゆっくり回して。あぁ、気持ちいい……っ。力也くんの手、すごく温かくて……胸の奥まで、とろけちゃいそうっ」
​指先がブラの縁をなぞり、硬くなった乳首を布越しにコリコリと弄ぶたび、俺の喉からは、自分でも信じられないほど可憐で、それでいて毒を孕んだ甘い喘ぎ声が漏れた。
俺は腰を彼の体に完全に密着させたまま、前後左右に、円を描くように小さく動かし始めた。
​(どうだ、力也。お前が今触れているのは、お前を愛する双葉の、世界で一番柔らかい場所だ。この掌に伝わる質量と、俺がわざとらしく、けれど精巧に響かせるこの喘ぎ声……。お前の理性が、再び塗り潰されていく音が聞こえるぞ)
​「ん、っ、あ…っ! そこ…っ、今、こすれたところ……すごく、いいのっ。力也くん、もっと胸、強く揉んで……? あなたの手の中で、私が……ぐちゃぐちゃになっちゃうくらい……っ」
​俺は彼の首筋に顔を埋め、ローズの香りを深く吸わせながら、しなやかな背中を弓なりに反らせた。
揉まれる胸の快感と、下腹部でじわじわと熱を帯びる結合の刺激。
双葉の可愛らしい喘ぎ声が室内の静寂を淫らに切り裂き、力也の耳を、脳を、そして本能を激しく揺さぶる。
​「あ、んっ! はぁ力也、くん……っ、また……熱くなって、きたわね……? 私の、胸の柔らかさ……そんなに、好きなのっ?」
​俺は彼の手の中で、さらに強く、自分の胸を彼の掌に押し付けた。
双葉の肉体が放つ圧倒的な「女」の芳香と、手のひらから伝わる極上の肉感。
その刺激に抗えるはずもなく、力也のアソコが、先ほど以上の熱と硬さを取り戻し、俺の最奥を突き上げるように再び猛り狂い始めるのを、俺は確かな勝利の予感とともに感じ取っていた。

347bf18c No.3160

「……っ、ふぅ。力也くん、そんなに焦らないで。今は、私のリズムに任せて……?」
​俺は力也の肩に白く細い腕を回し、耳元で熱い吐息を漏らした。
彼の上に跨ったまま、結合部の密着を深める。
白シルクのショーツが横にずれた状態で、双葉の熱い内壁が彼の猛りを一寸の隙もなく包み込んでいる。
​俺はわざと、気が遠くなるほどゆっくりと腰を浮かせ、そしてまた沈み込ませた。
​「あんっ。はぁ、……ん。見て、力也くん……。今、一番奥が……こすれてるの、わかる……?」
​ヌルリとした愛液の摩擦音だけが、静寂の支配する部屋に響く。
力也が堪えきれずに腰を突き上げようとすると、俺は彼の胸を優しく、けれど拒めない力で押し留めた。
​「だめよ、動いちゃ。今は、このじわじわ溶けていく感じを……二人で、ゆっくり味わいたいの。……ね?」
​俺は双葉の可憐な瞳を潤ませ、慈愛に満ちた(ように見える)微笑みを彼に投げかけた。
再び、ゆっくりと円を描くように腰を回す。
一点一点、快感の芯を探り当てるような緻密な動き。
内側の肉壁が、力也の熱を愛おしむように、そして絞り出すように脈打つ。
​「あ、んっ。ふ、ぅ……。あ……っ、気持ちいい……っ。力也くんのが……私の中で、膨らんでいくのが……全部、わかるわ……っ」
​短い、けれど喉の奥から溢れるような可愛い喘ぎ声。
時折、キュッと内側を締め付けて、彼の反応を伺う。
力也の顔が快楽で歪み、腰がびくんと跳ねる。
​「っ、双葉、そんなに締められたら……もう……っ!」
「ふふ、だめ。まだいっちゃだめよ? ……ほら、一回お休み」
​彼が絶頂の閾値を越えそうになると、俺はピタリと動きを止め、彼の胸に顔を埋めた。
結合したままの静止。
逃げ場のない熱さが、逆に彼の理性を極限まで削り取っていく。
​「はぁ、はぁ。ねえ、力也くん。今、私のここ……すごく熱くなってるの、感じてる……? あなたを、離したくないって……言ってるみたい」
​呼吸が整うのを待って、また再開する。
今度は少しだけ、粘りつくような深いストローク。
「あ、っ、んんっ……! あ……あぁぁっ……!」
​不意に、双葉の肉体が小さく痙攣した。
「あっ、はぁ、……っ、あ……っ! いっ、ちゃう……っ、力也くん、私……また、いっちゃう……っ!」
​一足先に、双葉の身体が快感の波に飲み込まれる。
一度、二度と、内側から彼を激しく締め付け、熱い蜜がさらに溢れ出す。
中身の俺も、そのあまりの肉体的快楽に脳が痺れ、白目を剥きそうになるのを必死で「演技」の中に閉じ込めた。
​「っ、はぁ。……ふぅ。すごかった……。ねえ、力也くん、今の……わかった? 私の中、すごく……キュンキュンしてたでしょ?」
​俺は震える指先で彼の髪をなで、再びゆっくりと腰を動かし始めた。
「さあ、続きをしましょう? もっと、もっとゆっくり。あなたの全部が、私の一部になっちゃうまで……」
​(どうだ、力也。お前はこの「優しい拷問」に、いつまで耐えられるかな。お前を愛でているのは双葉だが、お前を壊しているのは俺なんだ。その至福の苦しみを、一秒でも長く味わわせてやるよ)
​俺は再び、吸い付くような動きで彼を蹂躙し、その恍惚とした表情を愉悦とともに見つめ続けた。

347bf18c No.3163

「ふふっ、力也くん。そんなに顔を真っ赤にして……。腰がピクピク動いてるわよ? 我慢、辛い?」
俺は力也の肩に回した腕に、わざとらしく体重をかけ、密着した下腹部の熱をより深く、重く押し付けた。
双葉のしなやかな肢体が、彼の逞しい体躯の上で、支配的な優雅さを纏って躍動する。
「さっきはあんなに野獣みたいに襲われたんだから。今は私が、この気持ち良さを一滴もこぼさないように、ゆっくり、……じっくり、噛み締めたいの。だから、勝手に動いちゃ……ダメ」
俺は彼の耳元で、冷徹なほど甘い言葉を呪文のように囁き、強制的な「お預け」を命じた。
力也の喉がゴクリと鳴り、全身の筋肉が強張る。
彼は俺の言いつけを守ろうと、溢れ出しそうな衝動を必死に抑え込み、アソコの筋肉をギュッと締め上げて耐えているのが、結合部を通じて手に取るように伝わってきた。
(そうだ、それでいい。お前の中の理性が、欲望という名の檻の中で悲鳴を上げているのがわかるぞ。お前を愛でているのは双葉の肉体だが、その手綱を引いているのは俺だ)
俺はわざとらしく、視線を力也の瞳に固定したまま、再び気が遠くなるほどゆっくりと腰を揺らし始めた。
結合の最深部で、双葉の肉壁が彼の猛りを一寸の狂いもなく包み込み、絡みつく。
「あ……んっ。ふ、ぅ。ほら、力也くん……。ここ、すごく熱いのが……突き刺さってるわ。動かないで、そのまま、私の熱を感じて……?」
短い、けれど喉の奥から溢れるような可愛い喘ぎ声を漏らしながら、俺はゆっくりと胸元の白シルクのブラジャーに手をかけた。
薄いレースの縁を指先でなぞり、焦らすように、じわりと上にずらしていく。
露わになったのは、エステで磨き上げられ、熱を帯びて桜色に染まった双葉の双丘。
そして、その中央で我慢の限界を象徴するようにピンと硬く尖った先。
「……あ……っ」
力也の瞳が、その光景に吸い寄せられる。
彼はもう言葉にならない声を漏らし、導かれるように顔を寄せた。
熱い舌が、尖った先を逃さず捉え、じっくりと、執拗に刺激し始める。
「あ、んんっ……! は、ぁ……力也、くん……っ、そこ、舌、すごいっ! あぁ、だめ、また……っ!」
内側から突き上げる腰の快感と、胸の先を転がされる鋭い刺激。
その二重の奔流に、双葉の肉体が再び激しく痙攣した。
「あ…っ、はぁ、っ、あっ! いっ、ちゃう……っ、力也くん、私……また、いっちゃう……っ! はぁぁぁぁぁ、んんんっ!!」
結合部をギュウギュウと締め付けながら、双葉の身体は絶頂を迎えた。
溢れ出した愛液がシーツを濡らし、絡み合う肌の音をより淫らに変えていく。
「はぁ、はぁ。……ねえ、今の……わかった? 私、また……いっちゃった。……力也くんの舌、すごく……エッチなんだもの……っ。……でも、まだよ? まだ動いちゃダメだからね」
俺は彼の髪を乱暴にかき乱し、再び、彼を破滅させるための「優しい拷問」を再開した。
(どうだ、力也。お前の聖女が、今や自分の快楽のためだけにお前を道具にしている。その事実に打ちひしがれながら、俺の、いや双葉の肉体に一生溺れ続けていろ)
「……さあ、続きをしましょう? もっと、もっとゆっくり……。あなたの全部が、私の一部になっちゃうまで……」

d0b7c6a5 No.3164

「んっ……ふ、あぁっ! 力也、くん……だめ、そんなに……腰、ピクピクさせてっ。我慢、辛い?」
​俺は力也の肩に回した腕を、わざとらしくさらに強く絡ませ、密着した下腹部の熱をより深く、重く押し付けた。
双葉のしなやかな肢体が、彼の逞しい体躯の上で、支配的な優雅さを纏って躍動する。
力也の顔はもはや苦悶に近い表情に歪み、額には大粒の汗が浮いている。
結合部からは、彼が懸命に衝動を抑え込もうと、内側の筋肉をギュウギュウと締め上げている健気な抵抗が、熱い振動となって伝わってきた。
​「さっきはあんなに野獣みたいに襲われたんだから。今は私が、この気持ち良さを一滴もこぼさないように、ゆっくり、……じっくり、噛み締めたいの。だから、勝手に動いちゃ……ダメ」
​俺は彼の耳元で、冷徹なほど甘い言葉を呪文のように囁き、強制的な「お預け」を継続させた。
だが、仕上げの時間は近い。
​「あっ、ん、んんっ……!」
​力也の喉から、押し殺したような悲鳴が漏れる。
彼の体は、電気を流されたように跳ね、耐えていた決界が音を立てて崩れ始めた。
そこへ、俺はとどめを刺すように、腰を最大まで浮かせてから、一気に、最深部まで深く沈め込んだ。
​「は、んっ! ほらっ、ここ、一番奥っ。ギュウギュウに、締めてあげる……っ!」
​「……っ!! あ、あああ、もう……無理だ!!」
​力也の理性が、ついに完全に焼き切れた。
「双葉、ごめん……っ! もう、我慢できない……っ!!」
​彼は俺の制止を力ずくで振り切り、俺の腰を折れんばかりの力で掴むと、猛烈な勢いで腰を突き上げ始めた。
「あ、あぁっ! だめ、だめだってば、力也くん……っ! まだ、私がっ、あ、あぁぁぁっ!!」
​形の上では、狼狽えた「聖女」を演じて声を上げる。
だが、その裏側で、俺の心は勝利の咆哮を上げていた。
(そうだ、それでいい! お前の浅薄な理性なんて、この肉体の快楽の前では紙屑同然だ。俺の計算通りに壊れ、俺の望むままに獣へと堕ちていく。)
​「あああああ! 双葉、双葉ぁぁぁっ!!」
​力也の咆哮と共に、彼のアソコが限界まで膨張し、熱い奔流が双葉の最奥へと、何度も、何度も、激しく叩きつけられた。
「はっ、あ、あぁぁぁ!!っ、すごい、……いっぱい、来てるわ……っ! 力也くんの……全部、私の中にっ!!」
​双葉の身体もまた、その凄まじい衝撃に翻弄され、絶頂へと叩き落とされる。白シルクのショーツはもはや原型を留めないほどに濡れ、二人の境界線は溢れ出した熱い液体でぐちゃぐちゃに溶け合っていた。
​やがて、激しいピストンが止まり、静寂が戻る。
力也は俺の肩に顔を埋めたまま、肩で荒い息を吐いていた。
やがて、彼は震える声で、絞り出すように呟いた。
​「ごめん。また、約束を破った。君がゆっくりしたいって言ったのに、俺……自分のことばっかり。最低だ」
​彼が顔を上げると、そこには深い後悔と、自分への嫌悪が混ざり合った、この世の終わりのような表情があった。
​俺はわざとらしく、慈愛に満ちた聖母のような微笑みを浮かべ、彼の汗ばんだ髪を優しく撫でた。
​「いいのよ、力也くん。そんなに自分を責めないで? 私、あなたのあんなに必死な顔が見られて、実はちょっと、嬉しかったんだから。私をそんなに求めてくれるの、あなただけだもの」
​(お前は後悔していればいい。さあ、力也。お前はもう、俺の手の平から一生逃げられないぞ)
​俺は彼を優しく抱きしめ、窓の外で青く輝くスカイツリーを見つめながら、勝利の美酒に酔いしれるように、彼の背中をいつまでも、いつまでも、なぞり続けていた。

5f5eb17f No.3167

静寂を取り戻した室内に、エアコンの微かな稼働音と、二人の重なり合った鼓動だけが響いている。
シーツは乱れ、窓外のスカイツリーは深夜の深い藍色の中で、より一層鋭く冷徹な光を放っていた。
俺は力也の胸に頭を預けたまま、指先で自分の腰に張り付いた、無惨に濡れそぼった白シルクのショーツの端を弄んだ。
「ねえ、力也くん。見て、この下着。もうぐちゃぐちゃになっちゃったね。これじゃ、明日のチェックアウトの時……私、ストッキングもショーツも履いてない状態になっちゃうよ?」
わざとらしく困ったような、けれどどこか楽しんでいるような響きを混ぜて囁く。
力也はハッとしたように顔を上げ、ベッドの下に散らばったパンストの残骸と、俺の無防備な姿を交互に見て、再び顔を赤らめた。
「本当だ、ごめん。俺が無理やり……。あ、今からでも近くのコンビニまで走って買ってくるよ。双葉をそんな格好で帰らせるわけにいかないし」
彼は慌てて身を起こそうとしたが、俺はその逞しい腕を掴み、そっとベッドへと引き戻した。
「だめ。……行かないで。今は、この時間を大切にしたいの。コンビニに行く時間があるなら、一秒でも長く、こうしてあなたの体温を感じていたいわ」
「双葉……。でも、それじゃ……」
「ふふ、いいじゃない。……明日、明るくなってから考えれば。それまでは、私はあなたの『獲物』のままでいさせて?」
力也は困ったように眉を下げたが、俺の言葉に絆されたように、再び深く溜息をついて横たわった。
「わかったよ。……なら、朝、君が起きる前に俺がこっそり買い出しに行ってくる。それならいいだろう?」
「ええ、頼もしいわね、力也くん。私のサイズ、ちゃんと覚えてる?」
「バカにしないでくれ。さっき、嫌っていうほど……その、目に焼き付いたよ」
そんな他愛もない、けれど「恋人同士」の甘い毒を含んだ会話が、真夜中の大気に溶けていく。
俺は力也の腕の中で、勝利者の優越感を噛み締めていた。
彼が自分を責め、俺に尽くそうとすればするほど、斉藤双葉という虚像は強固になり、力也の人生を侵食していく。
しばらくして、俺は彼の胸から顔を上げ、上気した肌をなぞるように問いかけた。
「……ねえ。身体、少しベタベタするわね。シャワー、借りてもいい?」
「ああ、もちろん。ゆっくりしておいで。バスタオル、新しいのを出しておくよ」
「ありがとう、優しいのね」
俺はベッドから降り、足元のパンストの残骸を爪先で避けて、浴室へと向かった。
扉を閉め、鏡の前に立つ。
そこには、愛欲に溺れたはずの女の顔をした、冷徹な一人の男がいた。
(完璧だ。力也の奴、完全に俺の掌の上で踊っている。明日、コンビニで安い下着を買ってくる時、彼は自分が守るべき『愛しい双葉』のために尽くしていると陶酔するだろう)
シャワーを浴び、肌に残った力也の匂いと、朝から纏っていたローズの香りを洗い流す。
時間はまだ夜中。
夜が明けるまでには、まだたっぷりと時間がある。
俺は温かな湯を浴びながら、次なる「双葉」としての演技を、暗闇の中で静かに練り上げていた。

aa61b303 No.3181

ぬるめのシャワーが、火照りきった双葉の肢体を優しく撫でていく。
浴室に広がるのは、ホテルのアメニティ特有の、気品ある香り。
俺は高級なボディソープをたっぷりと泡立て、力也の指痕がうっすらと残る肩や腰、そして彼が何度も吸い付いた胸を、慈しむように、そして念入りに洗い流した。
(洗い流しても、洗い流しても、身体の芯にはまだ熱がこびりついているな。この肉体が、力也という男をどれほど深く、絶望的なまでに受け入れたか、指先が覚えている)
俺はシャワーヘッドを手に取り、最も汚れ、そして最も彼に愛撫された場所へと向けた。
「っ、ふぅ。だめね、いくら綺麗にしても……まだ、あんなに残ってる」
指先をそっと忍ばせると、体温で温められた力也の残滓が、白濁とした蜜となって、透明な湯水に混じりながら際限なく流れ出てくる。
太ももの内側を伝うその熱い感触。
それは、俺が力也の人生を、その本能ごと飲み干したという決定的な証拠のように思えた。
「っ、ん、あ……。力也くん、本当に……全部、私の中に置いていったのね」
俺は鏡に映る、濡れそぼった斉藤双葉の顔を見つめ、陶酔したような声で呟いた。
湯気に曇る鏡の中で、双葉の瞳は愛欲の名残で潤んでいる。
だが、その瞳の奥底で、俺という怪物が静かに、そして冷酷に獲物の末路を眺めていた。
「ふふ……。綺麗に洗ってあげなきゃ。明日、あなたが買ってくる新しい下着を履く時まで、私はあなたの『聖女』でいなきゃいけないものね……」
(お前の種が、この双葉の身体の中で溶けていくたびに、お前という人間は俺の所有物へと書き換えられていくんだよ。お前がコンビニで必死に俺のためのショーツを選んでいる姿を想像するだけで、ぞくぞくするほどの愉悦が込み上げてくる)
シャワーの飛沫が、排水口へと吸い込まれていく。
俺は自分の内側に残る、力也の存在感を指先で確かめながら、時間をかけて、一滴も残さぬように、けれどその「感触」を脳に刻み込むように、清めの儀式を続けていた。
夜はまだ、明けない。
この静かな浴室で、俺は次の「斉藤双葉」を、より完璧に、より残酷に、再構築していく。

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シャワーを浴び終え、ホテルの分厚いバスローブに身を包んで髪を乾かしていると、枕元でスマホが短く震えた。
画面には、ついさっきまでこの部屋で獣のように俺を求めていた男からのメッセージ。
『やっぱり今から買い物に行ってくる。双葉をそんな格好でいさせるわけにいかないし。ルームサービスを適当に頼んでおいたから、届くぐらいには帰るよ。何かいるものがあったら連絡して』
俺は鏡の中の「斉藤双葉」と視線を合わせ、口角をわずかに吊り上げた。
(健気なことだ。罪悪感に突き動かされて、深夜の街へ繰り出すか。だが、その「誠実さ」こそが、お前をより深く俺の支配下に縛り付ける重りになるんだよ)
濡れた指先で、画面を叩く。
「サイズは間違えたらダメだからね。あと、アイスが食べたい。いつも食べてるバニラがいいかな。でも、無ければ買わなくてもいいわよ。気を付けてね。待っているわ」
あえて「いつも食べてるバニラ」という言葉を混ぜる。これはテストだ。
彼が俺(双葉)の細部をどれだけ記憶し、どれだけ「理想の彼女」を完璧にケアしようとするかを確認するための、ちょっとした意地悪。


ルームサービスが届くのを待つ間、俺は窓際のソファに深く腰掛け、夜景を眺めていた。
スカイツリーの灯りが深夜の静寂に沈んでいく。
(さて、どんな顔をして帰ってくるか……)
そう思っていた矢先、廊下から急ぎ足の足音が聞こえ、カードキーが電子音を立てた。
ルームサービスが届くよりもずっと早く、息を切らせた力也が戻ってきたのだ。
「はぁ、はぁ。双葉、ただいま。遅くなってごめん」
ドアを開けた力也の手には、コンビニのビニール袋が二つ、固く握りしめられていた。
彼の髪は夜風に少し乱れ、頬は深夜の冷気と走ってきたせいで赤らんでいる。
「力也くん、早かったわね。走ってきてくれたの?」
俺はバスローブの裾をわざとらしく少しだけ乱し、ソファから立ち上がって彼に歩み寄った。
「ああ、一刻も早く、君のところに戻りたくて。これ、頼まれてたもの……全部買ってきたよ」
彼は袋の中から、まずはコンビニで手に入る精一杯の、けれど清楚なデザインのショーツとストッキングを取り出した。
そして、もう一つの袋からは、俺が指定したブランドのバニラアイス。
「アイス、このバニラで合ってるよね? 売り切れてなくて良かった。それと、明日の朝に君が困らないように、クレンジングとか、予備の肌着もいくつか選んできたんだ」
(合格だ。お前は、自分の罪を贖うかのように、この『双葉』という偶像に捧げ物をしている。だが、お前が今買い与えたその下着を履くのは、お前の愛した女を乗っ取った怪物なんだぞ)
俺は彼の腕にそっと手を添え、鼻先を彼のジャケットの襟元に近づけた。
夜の空気と、微かな汗の匂い。
「ありがとう、力也くん。本当に優しいのね。アイス、一緒に食べましょう? あなたが頑張って買ってきてくれたんだから、溶けちゃう前に……ね?」
俺は彼の手から袋を受け取り、わざと指先を絡ませながら微笑んだ。
力也の瞳に、再び熱が灯る。
俺のバスローブの胸元、先ほど彼が愛撫したばかりの、まだ赤みの残る肌がチラリと覗く。
「双葉、君は……本当に。俺にはもったいないくらいだ」
力也は俺を愛おしそうに抱き寄せた。
その腕の中で、俺は彼の献身を嘲笑いながら、届くはずのルームサービスのことなど既に頭から消し去っていた。

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力也の頭を優しく抱き寄せ、俺はバスローブの裾を広げながら彼を膝元へ招き入れた。
深夜のホテルの一室は静寂に包まれ、俺の指先が彼の髪を撫でる音だけがかすかに聞こえる。
さっきまでの激しい情事の痕跡など嘘のように、今の力也はまるで飼い慣らされた獣だ。
「よしよし」と髪をすくう手のひらに、彼の体温がじわりと伝わってくる。
罪悪感と安堵が入り混じった彼の吐息が、俺の腹部に熱い湿り気を与えていた。
「そんなに自分を責めないで。……頑張って買い物に行ってくれたんでしょう? 温めてあげるから」
俺はテーブルに置いたばかりのバニラアイスを手に取った。
銀色のスプーンを差し込み、冷気を孕んだ真っ白なクリームを掬い上げる。
ホテルの暖かなオレンジ色の照明を浴びて、それはまるで宝石のような艶やかな光を放っていた。
「あーんして?」
力也は一瞬、戸惑ったように目を丸くした。深夜の密室、バスローブ姿の俺、
そしてアイス。彼の理性が、この状況の背徳的な甘さを理解し、再び疼き始めているのが見て取れる。
「いいから。……私が、食べさせてあげる」
俺が促すと、力也は観念したようにゆっくりと口を開いた。
彼の温かな舌の上に、溶け出したばかりの甘いバニラを落とす。
口移しに冷たさを共有する感覚。
彼が飲み込む瞬間に、残った雫を俺の指先でなぞり、そのまま自分の唇へと運んだ。冷たさと甘さが、俺の舌の上で彼の熱と混ざり合う。
「甘いね。力也くんの味もする」
俺はわざとらしく微笑むと、今度はスプーンを一度置いた。
そして、アイスのカップを手に取り、その冷たい塊を指先に少量掬い取る。
力也の視線が、俺の手元に釘付けになる。
俺はバスローブの襟元を大きくはだけさせ、淡い照明の下に晒された胸元へと、その冷たい雫をゆっくりと滑り込ませた。
「あん……っ、冷たい……っ」
凍てつくような冷たさが肌を突き刺し、背筋に電流のような快感が走る。
力也の呼吸が荒くなり、彼の視線が俺の胸元に突き刺さる。
「食べて? 溶けちゃうわよ」
誘うような囁きに応えるように、力也が顔を寄せてくる。

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彼の熱い吐息が、冷えた皮膚を急速に温めていく。
彼が舌を這わせるたび、アイスの甘い香りと、俺の体臭が混ざり合い、濃厚な芳香となって部屋を満たした。
彼が舌先で乳首を刺激するたび、俺はわざとらしく身をよじり、可愛い喘ぎ声を上げる。
「そう……そこ、もっと。もう一口、のせてあげる」
またアイスを掬い、今度は先ほどよりも多めに、しっとりと濡れた肌の上へと乗せる。
彼がそれに食いつくたびに、俺は彼の髪を指で絡めとり、その支配感に酔いしれた。
力也の理性が急速に崩壊していくのが分かる。彼はもう、俺の胸元に埋もれたまま、理性をかなぐり捨てて貪り始めた。
「あ、あぁっ。力也くん、そんなに……っ」
彼の手が俺のバスローブを掴み、そのままベッドへと押し倒そうとした、その瞬間だった。
コンコン、コンコン
無機質なノックの音が、密室の空気を断ち切るように響いた。
「っ!」
力也の動きが止まる。
彼は我に返ったように体を起こし、気まずそうに俺を見た。
ルームサービスが届いたのだ。情事の熱に浮かされていた彼にとって、それは現実へと引き戻す冷水のような合図だった。
俺は内心、このあまりに間抜けなタイミングに嘲笑をこらえながら、わざとらしいほどしおらしく、バスローブの胸元を整えた。

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力也は深く息を吐き、乱れた髪を掻き上げてからドアへと向かった。
「ごめん、すぐ戻る」
数分後、ルームサービスを隅に置いた力也が戻ってくる。
彼はまだ火照った目で俺を見つめていた。
「台無しにして悪かった。冷めないうちに食べようか」
俺はソファに深く腰掛け、彼を挑発するように見上げた。
「ふふっ、力也くんってば。そんなに慌てなくても、アイスは逃げないわよ?」
「……双葉」
「ねえ、美味しい料理より、他に食べたいものがあるんじゃないの? せっかくの二人きりなんだから、遠慮しなくていいわよ」
俺はバスローブの襟を指で軽く引き下げ、冷たいアイスの雫が残る鎖骨をわざとらしく晒した。
「さっきの続き、まだ胸元が冷たいままなんだけど。ねえ、我慢しなくていいって言ったでしょう?」
力也はテーブルの上の料理を一瞥し、迷いなく俺の方へ歩み寄った。
「もう、逃がさない」
「ええ、逃がさないで。今度は、力也くんのすべてで、私を満たして?」

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ガチャン、という電子錠が閉まる冷たい音が、部屋の静寂をかき消した。
ルームサービスが届いたばかりの部屋には、贅沢な香りが漂っているけれど、今の力也にとって、そんなものはただの背景にすぎない。彼が求めているのは、今、バスローブを緩めてソファで妖艶に微笑む、俺――「双葉」という名の、甘美な罠だけだ。
「料理なんて、どうでもいい」
力也は真っ直ぐに俺へと歩み寄る。
その足取りには、先ほどまでの迷いや自責の念など微塵も残っていない。
ただ、純粋な、底なしの飢えだけがある。
(いいぞ、力也。お前の理性を焼き切るのに、言葉なんて必要ない。この身体で、感覚で、お前を俺という底なし沼に沈めてやる)
俺はソファの上で、わざとゆっくりと足を組み替えた。バスローブの合わせ目がさらに深く開き、柔らかな太ももの内側が露わになる。
「ふふ、正直ね。ねえ、さっきアイスで遊んだところ、まだ冷たくて……ちょっとゾクゾクするの」
俺は自分の方へと力任せに引き寄せた。
彼が顔を近づけてくるその距離で、俺はわざとらしく唇を少しだけ尖らせ、アイスを含ませた指先を彼の唇に添える。
「我慢させた分、倍にして返して。私を、もっと深く、……壊れるくらいに愛して?」
「ああ、双葉。君の全部が、欲しくてたまらないんだ」
力也は俺の腰に腕を回し、強引にソファから立たせた。
俺は彼の肩にしがみつきながら、耳元で吐息を漏らす。
「力也くん、そこっ。まだ、アイスの冷たさが残ってるから、あなたの熱で、溶かして?」
彼は何も言わず、俺のバスローブの紐を解いた。
露わになった俺の身体を、貪るような視線が撫で上げていく。
アイスの雫が残る鎖骨から、柔らかく膨らんだ胸元へ。
(そう、見てろ。お前が愛した『斉藤双葉』という偶像が、今どんなに淫らに乱れているか。さあ、始めよう。お前を完全におかしくする、二度目の宴を)
俺は彼をベッドへと押し戻し、再びその上に跨った。
今度は、食事の誘惑も、理性の残骸もない。
ただ、俺が彼を支配し、彼が俺という毒に溺れる、純粋な快楽の時間。
「んっ、……力也くん。ねえ、もっと奥まで……。私を……全部、あなたの色に染めてっ!」
俺は彼の首筋に噛みつき、わざとらしく、けれど確かな勝利の悦びを込めて、甘く、高く、喘ぎ声を上げた。
ホテルの贅沢なベッドが揺れ、二人の吐息が絡み合い、この密室は完全に俺たちの欲望の檻へと変貌していく。

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力也は、先ほどまでの獣じみた猛りとは一転して、まるで壊れ物を扱うかのような慎重さで俺の身体を支配していた。
正常位のまま、俺の両脚を彼の腰に深く絡みつかせ、一進一退を繰り返すような、重く、密度の高いピストン。
「っ、ん、あぁ……。力也、くん……、そんなに……ゆっくり……っ」
愛液はすでに十分すぎるほど溢れ、結合部が動くたびに「くちゅり」と、耳を塞ぎたくなるほど淫らな音を立てる。
抵抗など微塵もなく、彼の熱が俺の最奥まで滑らかに、けれど確実に、逃げ場を奪うように侵入してくる。
(冷静になったつもりか、力也。だがな、その『優しさ』こそが一番、双葉の身体を敏感にさせるんだよ。お前のその丁寧な蹂躙が、俺の中の『雌』をこれ以上ないほどに疼かせてるんだからな)
「あ、はぁっ、んんっ! あ、あぁぁぁ!!」
もはや声を抑えることなどできなかった。
ホテルの高い天井に、双葉の可憐な悲鳴が響き渡る。
快感が背骨を駆け上がり、脳を真っ白に塗りつぶしていく。
だが、どれほど思考が溶けそうになっても、俺の中の「本性」が表に出ることは許さない。荒々しい男の口調が漏れぬよう、俺はシーツに顔を埋め、歓喜に震える声をすべて「女」の形へと昇華させる。
「すご、いっ、力也くん、そこ……っ、すごく、いいの……っ! ああ、もっと……もっと、強く……叩きつけて、……っ!」
しばらくその甘美な拷問に身を委ねていたが、俺はさらに深い絶望的な快楽を求め、わざとらしく身体をよじって彼から離れた。
そして、シーツの上を這うようにして四つん這いになり、丸みを帯びたお尻を彼の方へと突き出した。
「ねえ、力也くん。……次は、後ろから……して?」
振り返った俺の瞳は、涙で潤み、熱に浮かされている。
双葉の少し控えめで、けれど情欲に負けたおねだりの口調。
「私、あなたの顔が見えないくらい……激しくされるのも、嫌いじゃないの。後ろから、獣みたいに……私を、あなたのものだって、分からせて?」
俺は腰を挑発的に振り、彼を誘う。
「お願い、力也くん。我慢しないで、私の……一番、恥ずかしいところ……全部、見て、……壊してっ」
(さあ、来いよ。お前が愛した双葉が、今こんなに淫らなポーズで、お前の衝動を待っているんだ。その理性という名の薄皮を、今度こそ完全に、俺が剥ぎ取ってやるよ)
俺はわざとらしく、自分の手で胸元を揉みしだきながら、彼が再び牙を剥く瞬間を、歓喜の震えと共に待ち構えていた。

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「……っ、あ、あぁぁぁ……っ!!」
力也が俺の腰を両手でガッチリと掴み、背後から一気にその猛りを最奥へと叩き込んだ瞬間、脳裏が真っ白な閃光に焼き尽くされた。
正常位の時とは比較にならないほどの深度。
内臓を直接押し上げられるような、暴力的で、それでいて逃げ場のない快感の塊。
(ククク……そうだ、そこだ! 力也、お前が今、双葉の聖域を蹂躙しているその感触。それが、お前を地獄へ引きずり込む最高の快楽だ!)
自分で自分の胸を揉んでいた手は、あまりの衝撃に力を失い、シーツへと投げ出された。
俺は指先を、高級リネンのシーツに深く食い込ませ、爪が剥がれんばかりに強くそれを掴み取る。
「はぁ、っ、あ……っ! 力也くん、それ、……深い、深すぎるわ……っ! ああ、もう……私、壊れちゃう……っ!!」
短い、けれど喉を掻き切るような切実な喘ぎ声が、ホテルの静謐な空間を淫らに汚していく。
後ろから繰り出される無慈悲なピストン。
腰が打ち付けられるたびに、グチュッ、パンッ、という生々しい肉の音が響き、俺の意識は快楽の奔流に飲み込まれていく。
もはや、双葉という人格を維持することすら、本能の叫びに邪魔されるほどの絶頂。
「力也、くん……っ、お願い、後ろから、私の胸……っ、揉んで! 強く、もっと、……おかしくなるくらい……っ!」
俺の懇願に応えるように、力也の大きな掌が背後から回り込み、揺れる双葉の膨らみを鷲掴みにした。
彼の指先が、汗ばんだ肌の上を滑り、先ほどアイスで冷やされたはずの、今は熱を帯びて硬く尖った先を乱暴に、けれど執拗につまみ上げる。
「あ、ぁぁぁっ! は、んっ、……んんんっ!!」
下腹部を突き上げる衝撃と、胸の先を弄ばれる鋭い刺激。
二つの快感の波が俺の身体の中で衝突し、火花を散らす。
力也の指が乳首をコリコリと強く潰すたびに、腰が勝手に跳ね、結合部がより深く、密着を増していく。
「あっ、力也くん、それ、すごく、いい……っ! つまんで、もっと、千切れちゃうくらい……っ! ああ、もう……私、どこにいるのか、……わかんない……っ!!」
俺は、シーツを掴む手にさらに力を込め、お尻を突き出して彼の衝動をすべて受け止めた。
双葉の可憐な喘ぎ声は、今や一匹の雌の、剥き出しの咆哮へと変わっている。
(見ろ、力也。お前の聖女が、こんなに汚い声で、お前の蹂躙を求めて鳴いている。その快感を、その背徳を、お前の魂の奥底に一生刻みつけておけ!)
力也の呼吸が荒く、獣のような唸り声へと変わる。
彼の指が、俺の胸を、乳首を、執拗に刺激し続け、俺は果てることのない快楽の螺旋を下へと、下へと、真っ逆さまに落ちていった。

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「あ、あああ……っ! 力也くん、……力也、くん……っ!!」
最高潮の快感が、堰を切ったように全身を駆け抜けた。
背後から突き上げられる衝撃が、まるで魂そのものを抉り出すような鋭さで俺の最奥を打つ。
力也の指先が乳首を限界まで引き絞り、同時に彼自身の熱い奔流が、双葉の聖域へと、濁流のように、そして執拗に叩きつけられた。
「は、っ、あ……っ! はぁぁぁぁぁ、んんんっ!!」
目の前が真っ白な閃光に焼き尽くされる。
身体中の神経が一本の糸のように張り詰め、次の瞬間、プツリと断線した。
力也の荒い呼吸、シーツが擦れる音、窓の外のスカイツリーの光……そのすべてが、遠ざかる波のように意識の彼方へと消えていく。心地よい絶望。
完全なる支配と、完膚なきまでの蹂躙。
俺は、双葉としての絶頂の悲鳴を上げたまま、深く、昏い意識の底へと真っ逆さまに落ちていった。


柔らかなカーテン越しに差し込む、朝の澄んだ光が瞼を焼いた。
重い瞼をゆっくりと持ち上げると、そこにはホテルの高い天井と、昨夜の情事の痕跡を残したままの、乱れた寝室が広がっていた。
首を動かすと、すぐ隣に、穏やかな寝息を立てる力也の横顔があった。
昨夜、獣のように俺を貪り、すべてを出し尽くした男の顔は、今は驚くほど幼く、そして無防備だ。
眉間に刻まれていた苦悩の皺は消え、愛する女を手に入れたという、一点の曇りもない充足感に満たされている。
(おめでたい男だ。お前が腕の中に抱いているのは、愛する婚約候補の『双葉』じゃない。お前のすべてを奪うためにやってきた、名もなき怪物だとも知らずに)
俺はわざとらしく、バスローブからはみ出た肩の指痕を指でなぞった。
身体中に残る気怠い重み。
内側に残る、彼の残滓の感触。
朝の光に照らされた俺の指先には、昨日、二人で選んだあのシンプルなプラチナのペアリングが、皮肉なほど美しく輝いている。
俺はそっと手を伸ばし、力也の寝顔を指先でなぞった。
「……おはよう、力也くん」
声は、完璧な「斉藤双葉」の、甘く、澄んだ響きのまま。
彼が目覚めた時、最初に見る光景。それは、朝の光を浴びて、昨夜の淫らな姿など嘘のように清らかに微笑む、世界で一番愛しい女の姿でなければならない。
俺は、彼の頬を愛おしそうに撫でながら、彼が目覚めるその瞬間を待った。
この朝が、彼にとっての地獄へのカウントダウンの始まりだということを、最高に美しい笑顔で隠しながら。

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力也の睫毛が微かに震え、規則正しかった寝息がふっと乱れた。
(――おっと、お目覚めか)
俺は即座に表情を消し、そっと目を閉じて「斉藤双葉」の健やかな寝顔を作り出した。
呼吸を深く、ゆっくりとしたリズムに変え、完全に意識を手放しているように見せかける。
いわゆる、タヌキ寝入りだ。
ベッドのマットが、力也が身を起こしたことでわずかに沈んだ。
閉じた瞼の裏で、彼の気配をじっと探る。
力也はしばらくの間、隣で眠る俺(双葉)の姿を、愛おしそうに見つめているようだった。昨夜の激しい情事、そして自分が我慢できずに乱暴に貪ってしまったことへの気恥ずかしさと、それを受け入れてくれた恋人への圧倒的な愛着。
そんな彼の心情が、張り詰めた空気から手に取るように伝わってくる。
やがて、カサリとベッドが鳴り、力也の顔が近づいてくる気配がした。
(……ん?)
チュッ、と額のあたりに、羽毛のように軽いキスが落とされる。
慈しむような、あまりにも純粋な朝の挨拶。
中身が男の俺としては思わず吹き出しそうになるのを、超人的な精神力で抑え込み、微動だにせず眠り続けた。
その後、ベッドから完全に這い出た力也は、俺を起こさないよう細心の注意を払いながら、足音を忍ばせてバスルームへと向かった。
カチャリとドアが閉まり、すぐに微かなシャワーの音が響き始める。
「……ふぅ。大したロマンチストだな、力也」
俺はパチリと目を開け、天井を見上げて小さく鼻で笑った。
ベッドから起き上がると、身体の節々に昨夜の激しいピストンの名残が、心地よい気怠さとなって残っている。
バスローブを羽織り直し、軽く髪を整えてから、俺は彼がコンビニで買ってきてくれた袋の中身をチェックした。
新しいショーツと、新しいストッキング。クレンジングまで揃っている。
(本当にマメな男だ。これでお前は、双葉を『守るべき理想の彼女』として、ますます神格化していくわけだ……)
やがて、シャワーの音が止まり、浴室のドアが開いた。
湯気と共に、さっぱりとした顔をした力也が姿を現す。
俺はソファに腰掛け、彼が戻ってきたタイミングを見計らって、今まさに目が覚めたばかりという風を装い、細い腕で小さくあくびをしながら、潤んだ瞳で彼を見上げた。
「……あ、力也くん。おはよ……」
「あ、双葉、起こしちゃったか? ごめん、シャワーを借りてたんだ」
「ううん、うっすら力也くんの匂いがしなくなって、寂しくて目が覚めちゃった……」
俺はわざとらしくバスローブの裾を揺らしながら、ベッドサイドから彼に歩み寄り、その逞しい胸元に身を寄せた。
シャワー上がりの、少し冷えた彼の肌が心地よい。
「起きたら、おでこがなんだか温かかった気がするの。……ねえ、力也くん、私が寝てる間に、何か悪いことしなかった?」
悪戯っぽく微笑みながら彼を見上げると、力也は図星を突かれたように耳まで真っ赤にして、バタバタと視線を泳がせた。
その情けないほど純情な反応を見つめながら、俺は胸の奥で、暗い愉悦の炎を静かに燃え上がらせていた。

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「……ふふ、じゃあ私もシャワーを浴びて、着替えちゃおうかな」
俺は力也の胸から離れると、彼が昨日用意してくれたコンビニの袋を愛おしそうに腕に抱えた。
「ありがとうね、力也くん。私のために、夜中に一生懸命選んでくれたんでしょう? 大切に使うね」
そう言って微笑みかけ、バスルームへと向かう。ドアを閉めて鍵をかけた瞬間、俺の顔から「聖女」の笑みがスッと消え失せた。
シャワーの熱い湯を浴びながら、昨夜、双葉の身体の奥深くに刻み込まれた力也の感触を、今度こそ完全に洗い流していく。
肌を包むホワイトティーの香りが、昨夜の淫らな熱を徐々に冷ましていった。
鏡の前で髪を乾かし、いよいよ「仕上げ」の時間だ。
袋から取り出したのは、力也が深夜のコンビニで、恥ずかしさを堪えながら選んだであろう、シンプルなショーツ。
そして、真新しいストッキング。
(ククク……力也。お前がどんな顔をしてこれをレジに持っていったのか、想像するだけで滑稽だよ。だが、お前が愛を込めて用意したこの下着に、今から足を通すのは――)
薄手のシルクのようなショーツを引き上げ、双葉の滑らかな肌に密着させる。
続いて、ストッキングをつま先から丁寧に通し、太ももの奥までじわりと引き上げていく。
肌を締め付けるナイロンの感触が、これから始まる完璧な「日常の偽装」へのスイッチだった。
その時、浴室の薄いドア越しに、室内の電話に向かって話す力也の低い声が漏れ聞こえてきた。
「あ、もしもし、フロントですか? 1402号室のものです。ええ、今から飛び込みで朝食のレストランを利用したいんですが、席は空いていますか? ……そうですか、良かった。ありがとうございます」
どうやら、ルームサービスをろくに食べずに俺を貪り尽くしたことを、まだ気に病んでいるらしい。
せめて美味しい朝食を、という彼なりの不器用な罪滅ぼしなのだろう。
(本当に、分かりやすくて御しやすい男だ)
ワンピースに袖を通し、髪をハーフアップに整えてから、俺は「斉藤双葉」として浴室のドアを開けた。
「力也くん、お待たせ。……フロントに何か電話してた?」
首を少し傾げながら部屋に戻ると、どこかホッとしたような、けれどまだ少し気恥ずかしそうな顔で俺を振り返った。
「あ、双葉。……うん、昨日の夜、ルームサービスをほとんど残させちゃったからさ。今からホテルの最上階のレストランで、朝食バイキングが利用できるか聞いてたんだ。席、確保できたよ」
「まぁ、本当に? 嬉しい……。お腹、ちょうどペコペコだったの」
俺は彼の元へ歩み寄り、買ってもらったばかりのストッキングに包まれた脚を艶めかしく揺らしながら、彼の腕にそっと自分の腕を絡ませた。
「下着もストッキングも、サイズぴったりだったわ。……私のこと、よく見ててくれてるのね、力也くん。……さあ、行きましょう? あなたと食べる朝食、すごく楽しみ」
(お前の優しさも、誠実さも、すべて俺の糧になる。さあ、最高に美味い朝食を奢ってもらおうか、力也)
俺は無垢な少女のような笑顔を彼に向け、二人で部屋のドアを開けて、清々しい朝の廊下へと踏み出した。

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ホテルの最上階にあるレストランは、朝のまばゆい光に満ちていた。
窓の外には東京の街並みが一望でき、昨夜二人で見上げたスカイツリーが、今は日の光を浴びて淡くそびえ立っている。
朝食は、驚くほど普通に進んだ。
オムレツを口に運び、コーヒーをすする双葉の仕草は、どこからどう見ても育ちの良い、おっとりとしたお嬢様そのものだ。
力也は向かいの席で、時折昨夜の情事を思い出すのか、耳の裏を赤くしながらも、熱い視線をこちらに注ぎ続けている。
「双葉、……もしよかったら、今日もこの後、一緒にどこか出かけないか? まだ時間はあるし、君と少しでも長く一緒にいたくて」
デザートのフルーツを突きながら、力也が少し焦ったような口調で提案してきた。
俺はフォークをそっと置き、困ったように眉を下げて、上品に首を振った。
「嬉しい、力也くん。でも、今日はこの後、お母様から頼まれている用事があって、実家に戻らなきゃいけないの。ごめんなさいね」
体よく、けれど完璧な理由で断る。
(ククク……足りないと思わせるくらいが、男を狂わせるには丁度いいんだよ。それに、この双葉の肉体も、昨夜のお前の猛進のせいで、あちこち悲鳴を上げているからな……)
俺は少し恥ずかしそうに視線を伏せ、コーヒーカップの縁を指先でなぞりながら、彼にひとつの「質問」を投げかけた。
「ねえ、力也くん。今回のデート、なんだか……今までの私と少し違ったでしょう? 乱暴におねだりしちゃったり、あなたに意地悪を言ったり……。こんな、いつもと違う私でも、本当に良かったの?」
潤んだ瞳で真っ直ぐに彼を見つめる。
力也は一瞬目を見開いたが、すぐに胸に手を当て、真剣な、魂を絞り出すような声で答えた。
「何を言うんだ、双葉。違ってなんかいないよ。いや、むしろ、昨日の君を見て、俺は今まで以上に君を愛せるって確信したんだ。君のそんな新しい一面を知ることができて、俺は……本当に幸せだよ」
(ハハハハハ!!)
心の中で、抑えきれない大笑いが込み上げてくる。
本物の斉藤双葉がどんな女だったかなど、もうどうでもいい。
力也は今、本物以上に魅力的な、俺が作り上げた『理想の双葉』に、魂の底まで心酔しているのだ。
お前が愛しているその「新しい一面」は、すべて俺という男が仕掛けた、お前を破滅へ導くための罠だとも知らずに。
「ありがとう、力也くん。……そう言ってもらえて、すごく安心したわ」
朝食を終え、チェックアウトを済ませると、力也は当然のようにタクシーを拾い、双葉の自宅の前まで送り届けてくれた。
車のシートの中で、彼は買ってもらったばかりのストッキングに包まれた俺の膝にそっと手を重ね、名残惜しそうにこちらを見つめていた。
俺は彼のそんな未練がましい視線を心地よく浴びながら、次に彼をどう料理してやるか、車窓から流れる朝の景色の中で静かに、残酷に描き始めていた。

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タクシーが、双葉の自宅マンションのエントランス前に静かに停車した。
自動ドアが開く。
だが、俺はすぐに車を降りようとはせず、わざとらしく力也のほうを振り返り、その大きな手を両手でそっと包み込んだ。
「着いちゃったね、力也くん」
朝の光が差し込む車内で、俺は名残惜しさをこれでもかと瞳に滲ませ、彼の顔をじっと見つめた。
ハーフアップに整えた髪が肩からサラリと流れ、昨夜、彼が激しく貪った首筋がチラリと覗く。
「うん。なんだか、昨日の昼から今朝までの時間が、嘘みたいに早く感じるよ。まだ、君を帰したくないな」
力也は俺の手を握り返し、本当に辛そうな、引き裂かれるような表情を浮かべた。
その目は、もっと一緒にいたい、できることならこのまま部屋までついていきたいという、未練と情欲の残火で濁っている。
「ふふ、私も同じよ? 本当はね、お母様の用事なんて断って、ずっとあなたの腕の中にいたいくらい……」
俺はわざとらしく声を少し震わせ、彼の胸元にそっとおでこを預けた。
彼の心臓が、トクトクと早く、力強く脈打っているのが伝わってくる。
「でも、だめ。これ以上一緒にいたら、私、本当に今日やるべきことを全部放り出しちゃいそうだから。今日のところは、ちゃんとお別れしなきゃ」
そう言って、俺は顔を上げ、彼の唇にほんの少しだけ、触れるか触れないかの切ないキスを贈った。
「私のわがままで、下着まで買いに走らせちゃってごめんね。でも、力也くんが選んでくれたこれ……すごくドキドキしたわ」
スカートの裾を少しだけ持ち上げ、ストッキングに包まれた膝元を見せる。
力也の喉がゴクリと鳴った。
「じゃあね、力也くん。気を付けて帰るのよ? 私に足りないって思った分、次のデートで、もっといっぱい……愛してね」
(そうだ、その飢えた顔のまま、一週間悶々と過ごすがいい。お前は帰りのタクシーでも、家に着いてからも、俺の――双葉のこの肉体の感触と、買わせた下着のことで頭がいっぱいになるんだ)
俺は彼の手を名残惜しそうに、指先を一本ずつ離すようにしてゆっくりと解き、今度こそタクシーを降りた。
バタン、とドアが閉まる。
走り去るタクシーのリアウィンドウ越しに、こちらをずっと見つめている力也の視線を感じながら、俺は可憐に手を振り続けた。
車影が完全に角を曲がって見えなくなった瞬間。
俺は小さく息を吐き、口元を覆っていた「聖女」の仮面を剥ぎ取って、冷酷な、勝利者の笑みを浮かべた。
「あーあ、大した大魚が釣れたもんだ。さあて、次はどうやってあいつの人生を狂わせてやろうか」
ストッキングの擦れる音を響かせながら、俺は静まり返ったマンションのエントランスへと、確かな足取りで歩き出した。

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オートロックを抜け、静まり返った双葉の部屋に足を踏み入れる。ドアが閉まった瞬間、張り詰めていた「斉藤双葉」の空気が完全に霧散した。
俺はバッグを放り出し、まずはスマホを取り出して力也にメッセージを送る。
『無事にお部屋に着いたよ。力也くんも気を付けて帰ってね。昨日は本当に……幸せだったわ。またすぐに、私を抱きしめてね』
送信ボタンをタップし、スマホをベッドへ放る。
(今頃あいつは、ニヤニヤしながらスマホを眺めていることだろうよ)
そこからは一瞬だった。力也が吟味して買ってくれた清楚なワンピースのファスナーを引き下げ、床へ脱ぎ捨てる。
続いて、彼が深夜のコンビニで気恥ずかしそうに選んだ、あのショーツ。
そして丁寧に足を通したストッキング。
それらもすべて無造作に足元へ脱ぎ捨て、俺は一糸まとわぬ姿になった。
姿見の前に立ち、双葉の肢体をじっくりと観察する。
「へえ、随分と派手にやってくれたじゃないか」
鏡の中の白い肌には、昨夜の狂乱の痕跡が、これでもかと刻み込まれていた。
首筋から鎖骨にかけては、彼が理性を失って貪り吸い付いた赤紫色の鬱血――キスマークが点々と散らばっている。
両方の胸、特にあの乳首の周りは、アイスを乗せられて弄ばれ、力也の大きな指で強くつまみ上げられたせいで、今もなお赤く腫れぼったく自己主張していた。
さらに腰のあたりには、バックの時に折れんばかりの力で掴まれた、彼の指の形の跡がうっすらと青く浮かび上がっている。
(この身体のどこを見ても、力也が刻んだ『所有印』だらけだな。あいつがこれを見たら、独占欲でまた頭がおかしくなるんじゃないか?)
シャワーの気怠さと、夜通し身体を酷使した圧倒的な疲労感が、ここにきて一気に押し寄せてきた。
俺は鏡の前を離れると、裸のまま、まだ力也の匂いが残っているような錯覚を覚えるベッドへとダイブした。
ひんやりとしたシーツが火照った肌に心地いい。意識はものの数秒で、深い、深い眠りの底へと落ちていった。


「……ん……っ」
次に目を覚ました時、部屋の中はすっかりオレンジ色の斜光に包まれていた。
スマホの画面を確認すると、時刻はすでに夕方の5時を回っている。
「よく寝たな……。さて、そろそろ『仕上げ』の時間だ」
俺はベッドから起き上がると、クローゼットから首元の詰まった、キスマークが完全に隠れるデザインの私服を選んで着替えた。
今日の「双葉の予定」は、実家に顔を出すこと。これをこなさなければ、力也に対する完璧なアリバイが完成しない。
実家へと向かい、鍵を開けて玄関に入る。
「お母さん、ただいま。遅くなっちゃってごめんなさい」
奥から「あら、お帰り」と顔を出した母親に、俺はいつものおっとりとした双葉の笑顔を向ける。
「ちょっとお友達と会う約束が長引いちゃって。これ、お土産ね」
適当に買っておいた手土産を渡し、世間話をいくつか交わす。
母親は娘が昨夜、男の腕の中で獣のように乱れていたことなど、夢にも思っていない。
ただ「実家に戻ってきた従順な娘」として、愛おしそうに俺を見つめている。
(完璧だ。これで力也への言い訳も、周囲へのカモフラージュも一切の隙がなくなった)
母親と話しながら、俺は服の内で密かに疼く、力也に 蹂躙された胸の痛みを思い出していた。
お前をどこまでも完璧に騙し、支配してやる。俺の仕掛けた罠の中で、次はお前がどんな表情を見せるのか、今から楽しみで仕方がなかった。

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実家でのカモフラージュを完璧にこなし、自分のマンションへ戻る夜道。
俺はスマートフォンの画面を指で弾きながら、次なるステップの計算を始めていた。
(ただの恋人ごっこはここまでだ。次は……あいつの口から『結婚』という言葉を吐き出させる)
こちらから「結婚して」とねだるのは三流だ。男という生き物は、手に入りそうで手に入らないもの、あるいは「他人に奪われそうになっている自分の所有物」に対して、異常なまでの執独占欲を燃やす。
力也に自分からプロポーズをさせ、一生俺という罠から逃げられない契約を結ばせる。
そのためのシナリオは、もう出来上がっていた。
「焦らせて、揺さぶって、追い詰める。ふふっ、最高の脚本じゃないか」
次の週末。
俺たちは少し背伸びをした、
夜景の見えるイタリアンレストランのテーブルにいた。
買ってもらった下着の上に、清楚な淡いピンクのブラウスを纏った俺は、ワイングラスを傾けながら、熱い視線を送ってくる力也にうっとりと微笑みかけた。
「ねえ、力也くん。この前ね、大学時代の友達の結婚式があったの」
「へえ、結婚式か。どうだった?」
「うん、すごく綺麗だった。花嫁姿の彼女を見てたらね、なんだか胸がキュッとしちゃって。女の人にとって、大好きな人の一番になるのって、やっぱり特別なことなんだなって……」
俺はわざとらしく言葉を濁し、伏し目がちにグラスの縁をなぞった。
力也の表情が、微かに緊張を帯びる。
「双葉も、憧れるか? 結婚」
「……憧れないって言ったら、嘘になっちゃうかな。でも、私にはまだ早いかなって思ったり……ううん、なんでもないわ!」
慌てて首を振る「理想の彼女」の健気な演技。
力也の瞳の奥で、独占欲の火種がパチッと弾けたのを俺は見逃さなかった。
だが、追い打ちはここからだ。
俺は少しだけ表情を曇らせ、困ったように溜息をついて見せた。
「……実はね、ちょっと力也君には言いにくいんだけど……困ってることがあるの」
「困ってること? どうしたんだ、双葉」
「あのね……職場の先輩の男性なんだけど。最近、二人で食事に行こうって何度も誘われてて……。私には付き合っている人がいるからって断ってるんだけど、『相談に乗るだけだから』って、すごく熱心で……」
「……なんだって?」
力也の声が、一瞬で低く沈んだ。
彼の手がテーブルの上で固く握りしめられる。
この前、双葉の身体を文字通り塗りつぶしたばかりの彼にとって、他の男の影など最大のタブーだ。
「私、力也くんを一筋に愛してるから、絶対に二人きりでは行かないわ。でも……男の人って、一歩引くと余計に追いかけてくるものなのかなって、少し怖くなっちゃって……」
「……双葉、その男の名前は?」
「ううん、いいの。力也くんに心配をかけたくて言ったんじゃないの。ただ……私、力也くんのものだから。誰にも触られたくないの……っ」
俺は上目遣いに彼を見つめ、テーブルの下でそっと彼の膝に手を重ねた。
力也の瞳には、今や明確な嫉妬と殺気、そして「今すぐこの女を自分の完全な所有物にしなければ」という強い焦燥感が渦巻いていた。
(そうだ、力也。焦れ、憤れ。お前の目の前にいる可憐な双葉は、今にも他の男に奪われるかもしれないんだぞ。守りたければ、繋ぎ止めたければ……お前が言うべき言葉は、もう一つしかないだろう?)
「……双葉」
力也が俺の手を、骨が折れんばかりの強い力で握り返してきた。
彼の唇が微かに震え、覚悟を決めた男の顔へと変わっていく。
「次の休み……どこか遠くに旅行に行こう。君に、ちゃんと話したいことがあるんだ」
「え? 遠くへ……?」
「ああ。二人きりで、誰にも邪魔されない場所で……俺の想いを、全部君に伝える」
「……力也くん……」
俺は頬を染め、感極まったように頷いた。
だが、そのテーブルの下で、ストッキングに包まれた脚を艶めかしく組み替えながら、俺は心の中で暗い勝利の笑みを浮かべていた。
(獲物が、自分から罠の深みへ跳び込んできたな。プロポーズの舞台整え、ご苦労様。最高の旅にしてあげるよ、力也)

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レストランを後にした俺たちは、夜風の冷たい表通りへと歩き出した。
ライトアップされた並木道を並んで歩くうち、力也の歩幅がわずかに小さくなり、俺の肩へと引き寄せられる。
彼の纏う空気は、先ほどのレストランでの会話以来、明らかに張り詰めていた。職場の男の影という毒が、彼の心の中でじわじわと効き始めている証拠だ。
「……双葉」
足を止め、力也が真剣な眼差しで俺を見下ろす。
その瞳には、さっきの嫉妬の色がまだ消えきっていない。
「うん? どうしたの、力也くん」
「この後……、少し時間、あるか? ホテルでも取ろう。まだ話し足りないし……それに、君を今すぐ家に帰したくないんだ」
(ふふ……焦っているわね。旅行の前に、もう少しじらして焦燥感を煽ってやろうかとも思ったけれど。まあ、いいか。ここで一度、たっぷりと身体に刻み込んでおけば、週末の旅行までの間、あいつの脳内は俺のことで埋め尽くされるはずだ)
「ホテル?」
俺はわざとらしく少し困ったような、けれど拒みきれない女の顔を作り、長い睫毛を伏せた。
「ううん、ホテルなんて……お金ももったいないわ。それに、なんだか人の目があるところは落ち着かなくて……」
力也は息を呑んだ。
俺のその言葉が何を意味するか、彼が気づかないはずがない。
「じゃあ……俺のマンションに来るか?」
「うん。力也くんの部屋がいいな。……誰にも邪魔されないで、二人きりで、あなたのことだけを感じていたいの……」
俺が上目遣いにそう囁くと、力也の理性のタガが完全に音を立てて外れた。
彼は周囲に人がいないのを確かめると、俺の腰を強く引き寄せ、熱い息を吐き出す。
「……っ、双葉。そんな目でするなよ……。今夜は、一歩も外に出さないからな」
「ふふ、……怖い顔しないで、力也くん。……ほら、早く行きましょう? 私を、あなたの部屋で……めちゃくちゃにして?」
俺たちはタクシーを拾い、力也のプライベートな空間へと急ぐ。
週末のプローズという罠へ向けて、今夜はさらに深く、彼を俺という毒に沈めてやるのだ。

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力也の部屋の鍵が開く音が、静かな室内に響いた。
生活感の漂う、けれどどこかすっきりとした男一人暮らしの空間。
俺は迷いなくリビングへ向かうと、部屋の中央にある大きな革張りのソファに深々と腰を下ろした。
少し遅れてやってきた力也がその隣に腰掛けると、俺は吸い寄せられるように、彼の広い肩へとそっと頭を乗せた。
「……やっぱり、力也くんの部屋は落ち着くわ」
力也の手が俺の背中に回り、抱きしめる力がぐっと強くなる。
彼の胸の鼓動が、俺の頬にダイレクトに伝わってきた。
「……双葉。さっきのレストランでの話だけど……職場の男のこと、本当に気にしなくていいんだな?」
「ふふ、まだその話をしてるの? 本当に心配性なんだから。私が見ているのは、力也くんだけよ」
俺が彼の顎を指先で優しくなぞると、力也の瞳に熱い火が灯った。
彼は俺の両肩を掴み、そのまま大きなソファの上へとゆっくり押し倒してきた。
背中にクッションの柔らかな沈み込みを感じながら、俺は一切抵抗せず、彼を受け入れるように腕を広げた。
「……双葉」
「ん……っ」
降ってくる彼の唇を、素直に受け止める。さっきまでの嫉妬と焦燥を吐き出すかのような、深くて重いキス。
彼の舌が滑り込んでくるたび、俺は喉の奥で甘い悲鳴を漏らし、彼の首に細い腕をしっかりとしがみつけさせた。
しばらくして、微かな水音を立てて唇が離れる。
至近距離で見つめ合う力也の瞳は、今にも理性が焼き切れそうなほど狂おしく揺れていた。
「ごめん、俺、今日はもう自分を抑えられる自信がない。君を傷つけちゃうかもしれない」
「……いいのよ」
俺は彼の髪に指を絡め、耳元で甘く吐息を吹きかけた。
「今日は……力也くんの好きなようにして? どんな風に抱かれても、私、絶対に嫌なんて言わないから」
「……本当だな? あとでやっぱりやめてって言われても、もう止まれないぞ」
「やめないで。……むしろ、もっと激しくしてほしいの。あなたの手で、私が他の男のことなんて二度と考えられないくらい……全部、塗りつぶして?」
「……双葉っ!」
力也の低い呻き声とともに、再び激しいキスが降ってくる。
彼の大きな手が、俺のブラウスのボタンへと迷いなく伸び、一つ、また一つと解いていく。
(ククク……そうだ。今夜はお前のその独占欲を、心ゆくまで満たしてやるよ。俺という底なし沼にどっぷりと浸かって、週末の旅行で最高の一言を吐き出す準備をするがいい)
俺は満足げに目を閉じ、彼が貪るように衣服を剥ぎ取っていく感触を、甘い喘ぎ声とともに噛み締めた。

471f0b68 No.4165

ボタンがすべて外され、冷たい室内の空気に肌が晒された。
だが、すぐに力也の熱い体温がそれを上書きするように重なってくる。
彼の大きな手が、ブラウスを押し開き、レースのブラ越しに俺の胸を乱暴に、けれどどこか愛おしむように強く包み込んだ。
「……っ、ん……力也くん、あたたかい……」
「双葉、君は……俺以外の男に、こんな顔見せちゃ駄目だ。絶対に……俺だけのものなんだからな」
「ええ……、私、誰にも見せないわ。力也くん以外に、こんなこと……させるわけないじゃない……」
首筋に、鎖骨に、激しい熱を帯びた吸い痕が再び深く刻まれていく。
痛みと快感が混ざり合った刺激に、俺は背筋を反らせて甘い悲鳴を上げた。
彼が俺を貪れば貪るほど、その内側にある嫉妬と独占欲は満たされ、同時に彼自身の心は「双葉を完全に所有した」という愚かな錯覚に縛られていく。
(そうだ、もっと強く噛みつけ。その傷痕の数だけ、お前は一生俺という罠から離れられなくなるんだよ)
ソファの上で服が乱れ、彼の荒い吐息と俺の可憐な喘ぎ声が混ざり合う。
力也はまるで己の恐怖を打ち消すかのように、執拗に俺の全身を確かめ、その本能のままに貪り尽くした。
「あ、あぁっ! 力也くん、そこっ! すごい、……頭が、おかしくなっちゃう!」
「おかしくなればいい。俺で、全部塗りつぶされてくれ!」
彼の衝動をすべて受け止め、その熱を全身で吸い上げる。
嵐のような激しい情事が過ぎ去り、静まり返ったリビングで、俺たちはソファの上に乱れた姿のまま重なり合っていた。
力也は俺の肩に顔を埋め、深く荒い呼吸を繰り返している。
彼の大きな腕は、未だに俺の腰を折らんばかりに強く抱きしめたままだ。
俺は彼の汗ばんだ髪にそっと指を滑らせ、勝利者の優しい微笑みを浮かべた。
「ありがとう、力也くん。私、とっても幸せ……」
「双葉。次の旅行、楽しみにしていてくれ。俺、君を……一生大事にする決意を固めるから」
「ええ。楽しみにしているわ」
俺は彼の首にしがみつき、彼の見えない暗闇の中でそっと冷酷に口角を吊り上げた。
力也の人生を丸ごと呑み込む「プロポーズ」という名の罠。
その仕掛けは、今夜の愛撫で完璧なものとなった。
週末の旅行で彼が差し出すであろう指輪を、俺はどんな「聖女」の笑顔で受け取ってやろうか。

5f5eb17f No.4171

ボタンがすべて外され、冷たい室内の空気に肌が晒された。
だが、すぐに力也の熱い体温がそれを上書きするように重なってくる。
彼の大きな手が、ブラウスを押し開き、レースのブラ越しに俺の胸を乱暴に、けれどどこか愛おしむように強く包み込んだ。
「……っ、ん……力也くん、あたたかい……」
「双葉、君は……俺以外の男に、こんな顔見せちゃ駄目だ。絶対に……俺だけのものなんだからな」
「ええ……、私、誰にも見せないわ。力也くん以外に、こんなこと……させるわけないじゃない……」
首筋に、鎖骨に、激しい熱を帯びた吸い痕が再び深く刻まれていく。
痛みと快感が混ざり合った刺激に、俺は背筋を反らせて甘い悲鳴を上げた。
彼が俺を貪れば貪るほど、その内側にある嫉妬と独占欲は満たされ、同時に彼自身の心は「双葉を完全に所有した」という愚かな錯覚に縛られていく。
(そうだ、もっと強く噛みつけ。その傷痕の数だけ、お前は一生俺という罠から離れられなくなるんだよ)
ソファの上で服が乱れ、彼の荒い吐息と俺の可憐な喘ぎ声が混ざり合う。
力也はまるで己の恐怖を打ち消すかのように、執拗に俺の全身を確かめ、その本能のままに貪り尽くした。
「あ、あぁっ! 力也くん、そこ……っ! すごい、頭が、おかしくなっちゃう…っ!」
「おかしくなればいい……。俺で、全部塗りつぶされてくれ……!」
彼の衝動をすべて受け止め、その熱を全身で吸い上げる。
嵐のような激しい情事が過ぎ去り、静まり返ったリビングで、俺たちはソファの上に乱れた姿のまま重なり合っていた。
力也は俺の肩に顔を埋め、深く荒い呼吸を繰り返している。彼の大きな腕は、未だに俺の腰を折らんばかりに強く抱きしめたままだ。
俺は彼の汗ばんだ髪にそっと指を滑らせ、勝利者の優しい微笑みを浮かべた。
「ありがとう、力也くん。私、とっても幸せ……」
「双葉。次の旅行、楽しみにしていてくれ。俺、君を……一生大事にする決意を固めるから」
「ええ。楽しみにしているわ」
俺は彼の首にしがみつき、彼の見えない暗闇の中でそっと冷酷に口角を吊り上げた。
力也の人生を丸ごと呑み込む「プロポーズ」という名の罠。
その仕掛けは、今夜の愛撫で完璧なものとなった。
週末の旅行で彼が差し出すであろう指輪を、俺はどんな「聖女」の笑顔で受け取ってやろうか。

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静まり返った力也の部屋に、二人の乱れた息遣いだけが残響となって漂っていた。
ソファーの上で重ね合わせた体温が、徐々に冷えていくのを肌で感じる。
俺(双葉)はわざとらしく彼の胸元に擦り寄ると、満足げに長い吐息を漏らした。
「力也くん。すごく……熱かったわ」
「双葉……。ごめん、少し乱暴にしちゃったろ?」
力也は我に返ったように、愛おしそうに俺の髪をなぞり、脱ぎ捨てられていたブラウスをそっと俺の肩に羽織らせてくれた。
その顔には、先ほどまでの嫉妬と凶暴な独占欲の影は消え去り、ただ愛する女を完膚なきまでに愛でた男の、甘い充足感だけが広がっている。
「ううん、うれしかったの。あなたが私を、そこまで求めてくれたことが」
俺は彼の頬に手を添え、潤んだ瞳で真っ直ぐに見つめた。
「ねえ、力也くん。次の旅行……本当に楽しみにしてるわね。あなたの特別な想い、ちゃんと受け止める覚悟……私、もうできてるから」
「ああ。最高の旅行にするよ。期待していてくれ」
力也は俺の手を握りしめ、まるで宝物を誓うように熱いキスを落とした。
(ククク、見ろよ、この男の顔。自分が仕掛け人だと思い込んでいる哀れな道化だ。俺に人生の主導権を握られたことにも気づかず、喜んで最高のプロポーズの舞台を整えようとしているんだからな)


それからの数日間、力也の心酔ぶりは目を見張るものがあった。
朝昼晩を問わず届く甘いメッセージ。「体調は大丈夫か?」「昨日の君が頭から離れない」「今週末の旅行、絶対に喜ばせるから」。職場の男への警戒心と、俺(双葉)を完全に自分のものにしたいという焦燥感が、彼を激しく突き動かしているのが手に取るように分かった。
俺はその度に、完璧な「斉藤双葉」として優しく甘やかす返信を送り、彼の熱量を最大限にまで高めておいた。
毒は、じっくりと回すのが鉄則だ。
そして迎えた週末。
力也が迎えに来た車に乗り込み、俺たちは都内を離れて、緑豊かな高級温泉街へと向かった。
助手席に座る俺は、彼が選んでくれた清楚なワンピースの裾を少しだけ持ち上げ、真新しいストッキングに包まれた脚を組み替えて見せる。
車内の狭い空間に、ふわりと甘い香水の香りが満ちる。
「ねえ、力也くん。どこに向かってるのか、本当に教えてくれないの?」
「ふふ、着いてからのお楽しみだよ。双葉がずっと行きたがってた、景色の綺麗なお宿を取ったんだ」
ハンドルを握る力也の横顔は、心なしか緊張で固くなっている。
ポケットの中に忍ばせているであろう「小さな箱」の存在が、彼をソワソワさせているのだろう。
「まあ、楽しみ! でも、力也くんと一緒にいられるなら、どこだって私には最高の場所よ?」
俺はそう言って彼の手元にそっと手を重ねた。
力也は一瞬、息を呑み、嬉しさを噛み殺すように口元を緩めた。
「双葉、君は本当に……俺をどうにかする天才だな」
(ククク……お前を狂わせる天才、と言ってほしいね。さあ、着いた先でどんな素晴らしいプロポーズを見せてくれるんだ? お前が跪いて指輪を差し出す瞬間を、俺は最高に可憐な笑顔で受け取ってやるよ)
車は山道を抜け、静寂に包まれた極上の料亭旅館の門をくぐろうとしていた。
二人の未来を縛り上げる、甘く残酷な夜が、いよいよ幕を開ける。

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高級料亭旅館の重厚な門をくぐると、打ち水がされた石畳の先で、凛とした和装の女将が深々と頭を下げて出迎えてくれた。
「いらっしゃいませ。お待ち申し上げておりました。あら、もしかして新婚さんでいらっしゃいますか? おふたりとも本当にお似合いですわ」
「えっ……!? あ、いや、その……まだ、そういうわけでは……っ」
畳みかけられた女将の柔らかな言葉に、力也は一瞬で耳の裏まで真っ赤にし、慌てて手を横に振った。
浮足立つ彼を横目に、俺はすかさず彼の袖をキュッと掴み、上目遣いに照れてみせる。
「もう、力也くんったら……そんなに慌てなくてもいいじゃない。ふふ、女将さん、ありがとうございます。まだ違いますけど……そう見えたなら、すごく嬉しいです」
「まぁ、まぁ! これは失礼いたしました。どうぞ、お部屋へご案内いたしますね」
案内された離れ客室は、檜の香りと庭園の青々とした緑が広がる極上の空間だった。
一通り説明を受け、部屋着の浴衣に着替えると、俺たちはまず旅の汗を流すべく大浴場へ向かうことになった。
「じゃあ力也くん、また後でね」
「ああ、ゆっくり温まっておいで」
男湯へ向かう力也の背中を見送り、俺は何の躊躇もなく、赤地に『女湯』と染め抜かれた暖簾をさらりとくぐった。
脱衣所に足を踏み入れると、夕方の時間帯とあってか、先客の女性客たちが数人、浴衣を脱ぎ着していた。
若い観光客のグループから、落ち着いた雰囲気の年配の女性まで、まさに様々な肉体がそこにはあった。
だが、俺はブラウスのボタンを外し、薄手の生地を肩から滑り落としながら、心の中で冷ややかに嘲笑した。
(ほう、色々と揃っているじゃないか。だが……)
鏡の前に立ち、下着を外して露わになった自分の姿を映し出す。
吸い付くような白い肌、引き締まった細い腰、柔らかな胸の膨らみ。
周囲の女性たちが、ふとこちらに視線を向け、その完璧なスタイルと生々しい色香に気圧されるように微かに息を呑むのが分かった。
(見ろよ。どんな女がここにいようと関係ない。一番美しく、一番男を狂わせる肉体を持っているのは、この私だ)
俺は自慢の髪を優雅にアップにまとめ上げると、圧倒的な優越感を胸に抱き、湯気が立ち込める大浴場の扉を静かに押し開けた。

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内湯を通り抜け、重い木枠の扉を開けると、澄み切った秋の冷気とともに絶景が目に飛び込んできた。
露天風呂の頭上に広がるのは、見事なまでに真っ赤に色づいた紅葉。
夕日を受け、朱色と黄金色に輝く葉が、湯船の澄んだ水面にゆらゆらと映り込んでいる。
「……綺麗」
俺は「双葉」の可憐な声で小さく呟きながら、岩造りの湯船へと足を踏み入れ、しっとりと肌を滑る温泉に身体を沈めた。
湯船の周りには、先客の女性たちが思い思いの姿勢でくつろいでいる。
女同士という圧倒的な安心感からだろう。
タオルを頭に乗せ、腕や足を緩やかに投げ出して身を委ねる彼女たちの姿は、男の前では決して見せない無防備さと大胆さに満ちていた。
(なるほど、目の保養だな)
俺はあくまで「紅葉の美しさに目を奪われている純粋な女性」のフリをし、時折うっとりと目を細めて空を仰ぐ振りをした。
だが、その視線の端では、湯気越しに見え隠れする周囲の瑞々しい裸体をしっかりと観察し、男としての本能的な愉悦を密かに堪能していた。
豊満な胸元、美しい背中のライン、湯に濡れて艶を増す肌。
女性たちが自分を「同性」と疑わずに晒しているその無防備さが、俺の歪んだ優越感をさらに煽り立てる。
やがて、肩まで深くお湯に浸かり、火照った身体を岩肌に預けた。
ゆらゆらと揺れる紅葉の水面を見つめながら、思考は自然と「これからのこと」へと向かっていく。
(さて……男湯の力也は、今頃どんな顔で湯に浸かっているだろうな)
昨夜の激しい情事の余韻と、職場の男への嫉妬。
そして今夜、この旅のクライマックスで繰り出すであろう、人生を賭けたプロポーズ。
彼は自分こそがこの物語の主人公であり、愛する女を自分の手で幸せにするのだと信疑っていない。
(部屋に戻れば、豪華な夕食と、あいつが用意した小さな箱が待っている。膝を折り、情けなくも真剣な目で指輪を差し出してくるあいつの顔が、今から目に浮かぶようだ)
プロポーズを受け入れ、完全に彼の「理想の妻」となり、そこから先は彼の人生、財産、そして精神そのものを俺の手の中でゆっくりと壊し、蝕んでいく。
「ふふ……」
口元から漏れ出た吐息が、白い湯気となって紅葉の空へ消えていく。
肌を刺す秋風と熱い湯のコントラストを心地よく感じながら、俺はこれから始まる最高の戯曲の幕開けを、湯船の中で静かに待ち焦がれていた。

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湯上がりの火照った肌を柔らかいバスタオルで丁寧に拭い、火照りを静めながら脱衣所の鏡の前に立つ。
バッグの底から取り出したのは、この特別な夜のために密かに準備しておいた勝負下着だ。
一見すると清楚な淡いラベンダー色だが、よく見れば繊細な刺繍レースが惜しみなく使われた、極めて攻撃的なデザイン。
ブラとお揃いのショーツに滑らかな脚を通し、ウエストまで引き上げる。
フロント部分を覆う透け感のあるレース越しには、綺麗に整えられた下の毛が微かに透けて見え、後ろを振り返ればお尻が大胆に透けて見えるシースルー構造になっていた。
(清楚な顔をして、下にはこんな淫らな仕掛けを忍ばせている。このギャップに、力也の理性が耐えられるわけがない)
ブラのホックを留め、豊満な胸を収める。鏡の中に映る自分は、どこからどう見ても男を狂わせるために作られた最高の「斉藤双葉」だ。
その上から旅館の浴衣を羽織り、帯をキュッと結ぶ。
胸元はあえて少しだけ隙間を作り、動きに合わせてレースの端がチラリと覗くように計算して整えた。
髪を軽くなでつけ、脱衣所をあとにした。
しっとりと濡れた髪から漂うシャンプーの甘い香りと、帯の下に忍ばせた密やかな毒。
廊下の畳を踏みしめるたび、足元からほのかな高揚感が湧き上がってくる。
角を曲がり、二人で過ごす離れ客室の扉が見えてきた。
「待たせたわね、力也くん」
可憐な微笑みを唇に浮かべ、俺は静かに客室の引き戸に手をかけた。
中では、今か今かと俺の帰りを待ちわびている力也の気配がしている。
最高の夜を完成させるための舞台へ、俺は静かに一歩を踏み出した。

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客室の畳に広げられたのは、山海の幸が艶やかに彩られた極上の懐石料理だった。
伊勢海老のお造り、絶品のA5ランク和牛の溶岩焼き、季節の松茸の土瓶蒸し。
湯上がりのしっとりとした空気の中、お互いの浴衣姿を褒め合いながら、力也はどこかソワソワとした様子でグラスを傾けている。
「双葉、本当に綺麗な浴衣だな。……すごく似合ってるよ」
「ふふ、ありがとう力也くん。力也くんの浴衣姿も、すごく男らしくてステキ……」
俺は「斉藤双葉」として完璧に微笑み、細い指先で上品に箸を進めた。
口の中に広がる肉の甘みと旨味。
力也が奮発した最高級の料理の味を堪能する。
その時、ふと――頭の片隅を、かつての「俺自身の元の肉体」の記憶がかすめた。
(そういえば、俺の元の身体はどうなっているんだったか)
あの男の肉体は今頃、事件を起こして警察に身柄を拘束されたあとは、病院の隔離病棟にでも担ぎ込まれているのだろうか。
無機質で味気ない病院食を口に運んでいるのかもしれない。
(惨めなものだな。だが、俺はもうあの不器用で冴えない男じゃない。今やこの美しく完璧な『斉藤双葉』の肉体を手に入れ、上質な料理を味わい、金も人生も差し出そうとする男を嘲笑っている)
過去の自分への冷ややかな嘲笑と、今の支配者としての絶頂感。
その対比が、目の前のご馳走をより一層美味しく感じさせた。
「どうしたの、双葉? ぼーっとして」
「ううん、なんでもないの。あまりにもお料理が美味しくて……あと、力也くんと一緒にこうやって美味しいものを食べている時間が、夢みたいに幸せだなって思って」
俺はふんわりと微笑み、力也の顔を見つめた。
「あ、あのさ、双葉。食事が終わったら……ちょっと大事な話があるんだ」
力也がゴクリと唾を飲み込み、胸元のポケットを無意識に確かめる動作を俺は見逃さなかった。
(来たぞ。元の体の虚しさなんて、この極上のエンターテインメントの前には蚊の鳴くようなものだ。さあ力也、最高の演技を見せてくれよ)
「大事な話? うん、分かったわ。……なんだかドキドキしちゃうな」
俺は上目遣いに彼を見つめ、浴衣の胸元から覗く勝負下着のレースを意識しながら、甘く、恐ろしい毒を含んだ笑みを深めた。

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仲居さんが手際よく膳を下げ、二人きりになった部屋に静寂が戻ってきた。
仲居が気を利かせて持ってきた冷たいお茶の湯気が、静かに立ち上っている。
力也は座布団の上で少し姿勢を正すと、喉を鳴らすように深く息を吐いた。その手は、浴衣のポケットの中で固く握りしめられている。
「双葉……。さっきの、大事な話なんだけど」
「うん……? なあに、力也くん」
俺は首を少し傾げ、不安と期待が入り混じったような、完璧な「恋する少女」の眼差しで彼を見つめた。
座り直す動作に合わせて、浴衣の胸元からは先ほど更衣室で仕込んだラベンダー色のレースがチラリと顔を出す。
力也の視線が一瞬だけ俺の胸元に落ち、ゴクリと唾を飲み込んだ。
だが、彼はすぐに俺の目を直視し、意を決したようにポケットから「それ」を取り出した。
小さく重厚な、深緑色のベルベットの箱。
「……双葉。俺、さっきレストランで君が『大好きな人の一番になりたい』って言ったとき、心から思ったんだ。俺が……俺の人生のすべてを賭けて、君を一番にするって」
彼の手が微かに震えている。箱の蓋が、カチリと静かな音を立てて開かれた。
行灯の柔らかな光を受けて、中央に埋め込まれた一粒のダイヤモンドが、眩いばかりの輝きを放つ。
「俺と、結婚してください。……他の誰にも君を渡したくない。一生、俺の隣で笑っていてほしいんだ」
魂を絞り出すような、一筋縄ではいかない真剣な告白。
職場の男への嫉妬と、俺が植え付けた独占欲、そして何より彼自身の「双葉を守りたい」という純粋な愛が、その一言に凝縮されていた。
(ハハハハハ……!!)
俺の心の中で、悪魔のような嘲笑が激しく渦巻いた。
膝を折り、震える手で指輪を差し出すこの哀れな男。
お前が人生を賭けて誓ったその愛の対象は、もうこの世のどこにも存在しない。
お前が愛しているのは、俺が演じる偽物の双葉であり、お前が差し出したその指輪は、お前自身の首を絞める絞首台の縄だ。
だが、俺の顔に浮かんだのは、ボロボロと大粒の涙をこぼす、感極まった「聖女」の表情だった。
「り、力也くん……っ! ……嘘、本当……!?」
両手で口元を覆い、信じられないというように目を見開く。

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「本当だよ、双葉。俺の……俺の奥さんになってくれるか?」
「……はいっ……! はいっ! 嬉しい……! 私、力也くんの奥さんになりたいっ!!」
俺は畳を滑るようにして彼に飛びつき、その胸に顔を埋めて激しく泣きじゃくった。
力也は安堵と爆発的な歓喜に満ちた声を漏らし、俺の体を折れんばかりの力で強く、強く抱きしめてきた。
「双葉……ありがとう、双葉! 絶対に幸せにするから……絶対にするからな!」
「力也くん……力也くん……っ」
彼の肩に回した俺の腕。
その指先が、彼の背中で静かに、残酷に丸まった。
涙で濡れた俺の顔から、力也に見えない角度で、スッと感情が消え失せる。
お前が俺を幸せにするんじゃない。
お前の財産も、家柄も、精神も、その命の最後の一滴まで――俺が残さず喰らい尽くしてやるんだよ、力也。
俺は彼の背中を優しく撫でながら、暗闇の中で極上の笑みを浮かべ、彼がはめてくれるであろう指輪の冷たい感触を待った。



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