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/tachiha/ - たちは板κ

リレー小説用
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f4e630df No.4327

f1ea1350 No.4489

「ねえ、渚沙。今日の服、どっちが似合うと思う?」
鏡の前で、二枚のブラウスを自分の胸元に交互にあてがう少女――愛花(あいか)。
ふわふわとした柔らかい茶髪に、濡れたような大きな瞳。
クラスでは「高嶺の花」と噂される美少女が、いま俺の目の前で無防備に微笑んでいる。
(う、うわああぁぁぁっ! 距離が近い! 近すぎるって愛花ちゃん!!)
俺は心のなかで大絶叫していた。
だが、口から出たのは、俺が憑依している少女――渚沙(なぎさ)の可憐な声だ。
「え、えーっと……右のフリルがついた方かな? 愛花ちゃんの雰囲気にすごく合ってると思うよ」
「本当? ふふっ、渚沙が選んでくれたならこっちにするね」

愛花ちゃんは嬉しそうに目を細めると、ぎゅっと俺(渚沙の体)の腕を抱きしめてきた。
豊かで柔らかい感触が腕を通して伝わってきて、俺の精神(ソウル)は爆発しそうだ。
そもそも、なぜ俺がクラスメイトの渚沙の体に憑依しているのか。
理由は至極単純……いや、ちょっとだけ不純だ。
俺は愛花ちゃんに片思いをしている。
だけど、彼女は男子に対して少し壁を作るタイプで、なかなか距離が縮まらない。
そこで俺は、偶然手に入れてしまった『一時的に他人に意識を飛ばせる謎の能力』を使い、今日二人で放課後ショッピングに行くと話していた親友の渚沙に乗り移ったのだ。
目的はただ一つ。
「渚沙の振りをして、愛花ちゃんの好きなタイプや、俺(自分)に対する印象を聞き出すこと」。
これさえ分かれば、明日からのアプローチも完璧になるはずだった。
……そう、完璧な作戦だったはずなのだ。
「ねえ、愛花ちゃん……そろそろ腕、離してくれないかな? ちょっと歩きづらいというか……」
「やだ。放課後くらい、こうやって渚沙を独り占めさせてよ」
愛花ちゃんはすねたように唇を尖らせると、さらにぐいっと腕を抱き寄せてくる。
体温が直に伝わってくるほどの密着度。
その頬はほんのりと朱に染まっていた。
(あれ? なんか、おかしくないか?)
学校でも確かにこの二人は仲が良かった。
だが、今の愛花ちゃんの空気感は、単なる「仲の良い女友達」に対するそれではない気がする。
瞳の温度が、熱い。熱すぎるのだ。
カフェに入り、向かい合わせの席に座った俺たちは、パフェを注文した。
俺は咳払いを一つ挟み、本来の目的を果たすために探りを入れることにした。
「そ、そういえばさ、愛花ちゃんって今、好きな人とか気になる男子とかっていないの? クラスの男子とかさ」
「男子?」
愛花ちゃんはパフェのスプーンを止め、心底どうでもよさそうな顔で首をかしげた。
「う~ん、考えたこともないかな。みんなガサツだし。……あ、強いて言えば、いつも端っこにいる隆司くんとかは?」
思わず身を乗り出す俺。ついに本命の話題か!?
「ううん。ただ影が薄くて大人しそうだから、害はなさそうだなって思っただけ」
「害がないだけ――!?」
ショックで吐血しそうになった。
俺の評価、ただの『害のないモブ』だったのかよ!
がっくりと肩を落とす俺を見て、愛花ちゃんはくすっと笑うと、テーブル越しに俺の手をそっと包み込んできた。
細くて、温かくて、柔らかい手。
「そんな男子の話なんてどうでもいいじゃない。……ねえ、渚沙。私が本当に好きな人が誰なのか、本当に気づいてないの?」
愛花ちゃんの声のトーンが、一段低く、そして甘く変化した。
じっと見つめ返してくる上目遣い。
その瞳には、俺の体を借りている「渚沙」の姿だけが鮮明に映っている。

f1ea1350 No.4490

「え……? え?」
「いつも学校でくっついているのも、今日二人きりで買い物に誘ったのも……全部、渚沙と一緒にいたいからだよ」
愛花ちゃんは耳まで真っ赤にしながら、でも逃がさないと言わばかりに俺の手をキュッと握りしめた。
「私ね、渚沙のことが大好きなの。友達としてじゃなくて……一人の女の子として、ずっと好きだったの」
――ドクン、と渚沙の心臓が大きく跳ね上がった。

(は? え……? 百合……!? 愛花ちゃんの本命って、俺じゃなくて、渚沙なの―――!?)
頭のなかで激しい鐘の音が鳴り響く。
すべての謎が解けた。
男子と距離を置いていた理由も、学校で渚沙にだけ異様に甘えていた理由も、今日こんなに距離感が近かった理由も!
彼女のハートを射止めていたのは、俺ではなく、俺がいま入っているこの身体の持ち主だったのだ!
「渚沙……? 急に黙っちゃって、どうしたの……?」
愛花ちゃんが不安そうに、うるうると瞳を潤ませて俺の顔を覗き込んでくる。
その表情が、あまりにも可憐で、可愛すぎて――渚沙の体の胸キュンセンサーが限界突破しそうだ。
(待て待て待て! 俺は男だぞ!? 男だけど……いま目の前で超絶美少女が真っ赤になって愛を囁いてくれてるんだぞ!? たとえ自分に向けられた言葉じゃなくても、こんなの耐えられるわけないだろ!!)
「あ、あのね愛花ちゃん……! その、気持ちはすっごく嬉しいんだけど……っ!」
「嬉しい……? じゃあ、私のこと、受け入れてくれる……?」
上気した顔で、じわじわと顔を近づけてくる愛花ちゃん。
吐息がかかる距離。

(アカン!! これ以上の展開は、本当の渚沙にも俺の理性的にもマズい!! 脱出! 一旦自分の体に戻るんだ俺ぇぇぇぇぇっ!!)

俺は必死に精神を集中させ、幽体離脱の感覚を呼び覚まそうとした。
しかし――過剰な緊張と胸キュンのショックのせいか、なぜか能力が上手く発動しない。
「渚沙……目、閉じて?」
「待って! タイム! タイムだからぁぁぁっ!!」
夕暮れ時のカフェで、俺の(渚沙の)悲鳴が虚しく響き渡る。
好きな子の『秘密の恋心』を知るという目的は果たされた。
だがその代償として、俺は今、人生最大のピンチ(と甘い誘惑)の渦中に叩き落とされていたのだった――!

1114ba6b No.4497

今まさに、愛花(あいか)ちゃんに迫られ目を閉じるようにお願いされた、俺こと 隆司 (渚沙(なぎさ))は、理性的なタガが外れるのをすんでのところで愛花ちゃんの交わりを必死に振りほどきつつ、渚沙の声で言葉を紡いでいく。

「待って、愛花ちゃん ! あなたは、その………、わたしとどこまでの関係をきずきたいの ! ? あなたにとって、わたしを大好きなその気持ちはうれしいんだけど、それをしたらきっとわたしたち、必ず後悔することになっちゃうんだよ ! ? だいたい、そんな簡単に好きとか言っちゃってるけど、よく考えてみて ? 色々順序とか手順をすっ飛ばして、ただ勢いのままに突っ走ろうとしている ! そんな恋のしかたじゃ、長続きはしないんだよ ! 焦ったって、時間は待ってくれない ! だから、落ち着いて。ね ? 」

これでいけるか ?

f1ea1350 No.4547

「待って、愛花ちゃん! あなたは、その……わたしとどこまでの関係をきずきたいの!? あなたにとって、わたしを大好きなその気持ちはうれしいんだけど、それをしたらきっとわたしたち、必ず後悔することになっちゃうんだよ!? だいたい、そんな簡単に好きとか言っちゃってるけど、よく考えてみて? 色々順序とか手順をすっ飛ばして、ただ勢いのままに突っ走ろうとしている! そんな恋のしかたじゃ、長続きはしないんだよ! 焦ったって、時間は待ってくれない! だから、落ち着いて。ね?」
勢いにまかせて一気に捲し立てた。
渚沙の可憐な声に、俺(隆司)の必死すぎる魂の叫びを乗せて。
「――っ!?」
目の前で唇を重ねようとしていた愛花ちゃんが、弾かれたように動きを止めた。
上気していた顔から一転、白と赤が目まぐるしく入れ替わり、最後には耳の先まで真っ真っ赤になる。
「あ、あ……っ……!」
愛花ちゃんは自分の両手で口元を覆うと、涙目になって数歩後ずさった。
(よ、よし! なんとか踏みとどまらせたぞ……!!)
俺は心のなかで大きくガッツポーズを決めた。
理性のタガが外れて他人の体でファーストキスを奪うという、人類史に残る大惨事は間一髪で回避されたのだ。自分の土壇場でのアドリブ力を褒めてやりたい。
……が、安心したのも束の間。
目の前の愛花ちゃんが、ぽろぽろと大きな涙粒を瞳に溜め始めたではないか。
「ご、ごめんなさい……! 私、舞い上がっちゃって……渚沙の気持ちも考えずに……っ!」
「えっ!? あ、いや、泣かないで愛花ちゃん!」
「だって、渚沙の言う通りだもん! 私、ずっと隠してきた気持ちがあふれちゃって、勢い任せで……最低だよねっ」
ぎゅっとスカートの裾を握りしめ、健気にも反省する美少女。
うう、心が痛い。
罪悪感で胸が押しつぶされそうだ。告白を断った(?)わけじゃないのに、なんで俺がこんな悪者みたいになってるんだ!
しかし、ここからの愛花ちゃんの思考回路は、俺の想像の斜め上を突き抜けていった。
愛花ちゃんはハンカチでそっと目元を拭うと、決意を秘めた真剣な眼差しで俺(渚沙の体)を見つめ返してきたのだ。
「……でもね、渚沙。私、全然『簡単に好き』なんて言ってないよ」

f1ea1350 No.4548

「えっ?」
「ずっと……ずっと前から渚沙のことだけを見てたの。でも、渚沙の言う通り『順序』を飛ばしちゃダメだよね。私、焦りすぎてた」
「あ、うん?(なんか雲行きが怪しいぞ?)」
「真剣に私との将来や長続きすることを考えて、あえて止めてくれたんだよね? 渚沙ってば、私のことそんなに真面目に考えてくれてたんだ!」
うっとりと頬を染め、熱っぽい視線を送ってくる愛花ちゃん。
(ち、違う! そうじゃない!! 恋愛の教訓っぽく言ってうやむやにしようとしただけなんだってば!!)
「だからね! 私、ちゃんとする!」
「ちゃんとするって、なにを……?」
「まずは順序を守って、お互いをもっと深く知り合うことから始める! 今日は手を繋ぐところまでに留めておくね!」
「え、あ、はい――って、手は繋ぐの!?」
ガバッと力強く右手を取られた。
繊細で柔らかい指が、俺(渚沙)の指と指の間に隙間なく絡められる。
いわゆる恋人繋ぎだ。
「っ! 渚沙の手、温かいね。嬉しいな」
満開の桜のようにパッと華やかな笑顔を見せる愛花ちゃん。
そのあまりの可愛さに、渚沙の心臓が「ドックン!」と激しく鳴り響いた。
(アカン!! 可愛すぎる!! 俺(男)の精神が萌え死ぬか、渚沙の身体が胸キュンで卒倒するかの二択だこれ!!)
しかも「順序を踏んで正々堂々と渚沙を落とす」モードに入ってしまった愛花ちゃんは、もう止められない。
俺が自分の片思いの相手の素顔を知ろうとした結果、「好きな女の子が、自分が入っている女子の体を本気で攻略しようとしてくる」という地獄のような(一部の人間には天国のような)泥沼恋愛リアリティショーが開幕してしまった。
(やばい、やばいやばいやばい! このままじゃ渚沙の貞操(?)と俺の理性が死ぬ! 今度こそ本当の本当に脱出しないと――!)
「――ぬぐっ!?」
頭の奥で、カチリと何かが噛み合う音がした。
全身を包む猛烈な浮遊感。視界が急速に歪んでいく。
(きた! 能自分の体に戻れる!!)
「あ、愛花ちゃん……! わたし、そろそろ帰らなきゃ――」
言いかけた瞬間、俺の意識は渚沙の体から引き剥がされ、暗闇の中へと引きずり込まれた。

f1ea1350 No.4549



「――ハッ!?」
目が覚めると、俺は自分の部屋の学習机に突っ伏していた。
目の前には自分の見慣れたゴツい手。
胸を触っても膨らみはない。声を出してみれば、低めの男子の声だ。
「も、戻れたぁぁぁぁぁっ!!」
俺はベッドに倒れ込み、天井を仰ぎながら荒い息を吐いた。
助かった。
間一髪で生還したのだ。
だが、安堵したのも束の間、冷や汗が背中を吹き抜けた。
(……待てよ?)
俺が元の体に戻ったということは、あっちのカフェにいるのは――中身が本物の「渚沙」に戻った、愛花ちゃんと手をつないでいる状態の渚沙ということになるのでは……?
突然意識を取り戻した渚沙は、目の前で大好きな親友(愛花)に真っ赤な顔で手を握られ、「順序を守って付き合おうね!」的な熱烈なアプローチを受けているのだ。
『え? 愛花ちゃん……? なんで手を繋いで?』
『ふふっ、さっき渚沙が言ってくれたでしょ? 焦らずに順序を守ろうって!』
『……は????』
頭の中に容易に浮かび上がる、パニックになる渚沙の姿。
「……終わった……」
俺は頭を抱えて絶叫した。
愛花ちゃんの告白の真相を知ったどころか、二人の関係性を絶望的なまでに掻き回してしまった。
明日、学校で渚沙と愛花ちゃんにどんな顔をして会えばいいんだ――!?
俺の高校生活最大の危機は、まだ始まったばかりだった。

cf793932 No.4552

>> 俺は頭を抱えて絶叫した。愛花(あいか)ちゃんの告白の真相を知ってしまったどころか、二人の関係性を絶望的なまでに掻き回してしまった。明日、学校で渚沙(なぎさ)と愛花ちゃんにどんな顔をして会えばいいんだ ーー ! ? 俺の高校生活最大の危機は、まだ始まったばかりだ。

からの続き

( ……… 待て、そのことを本物の渚沙が覚えていない可能性も、あるか ?)

たしか一般的に言う憑依は、乗り移ったガワの相手は眠気に襲われた感じになって、例外を除いてほとんど記憶に残らないと聞いたような気がする。この場合、愛花ちゃんが渚沙を本気で攻略しようとする件は完全にうやむやにはできないが、まだ絶望的にとらわれるのはそうけいなのではないのだろうか。

(ならば、俺が次に行動を起こさなければいけないのはむしろ………)

というわけで 、『一時的に他人に意識を飛ばせる謎能力』をもっと有効活用できる手段はないか、それこそ渚沙と愛花ちゃん以外の女子にも目を向けて2人の進展を確かめるべく、改めて考えを模索する方向にかじをきることにしたのだった。

1d129dea No.4864

※ 2026/09/26(土)23:16:17 No.4552 以降、消滅の恐れがありますので引き上げておきます。続き期待



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