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うちの町には古い神社がある。
京都にあるなんとか神社みたいに狭い敷地に千本近い鳥居があって、地元ではちょっとした名所なのだが、全国的にはまだまだと言ったところだ。
「まあ、そんなことはどうだって良いんだけどね。」
俺はそう呟きながら、境内の坂道を掃除をしながら登っていく。小学校の頃、怪我をした子狐を助けて、うちの神社で飼うようになってからの以来の俺の日課である。
ちなみに俺はこの神社の三男だ。神社は長男である兄貴が継ぐはずなので、俺はアルバイト的にこの神社で巫女をしている。
え?三男で巫女って変だろうって?
まあ、変なのは確かだけど、御祭神であるなんたらの姫御子って神様が年に一度のお祭りの日に現れ、俺を巫女に指名した上に巫女に相応しい姿にされてしまったのだからしょうがない。神様のやることにいちいち文句なんて言ってられねぇし。
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「マジで意味が分からない」
ネットでバズった俺の写真についたハッシュタグを見て、俺は盛大にツッコミを入れた。
『天使巫女ちゃんマジ尊い』
……いや、天使はキリスト教で巫女は神道だろ! 宗教混ざってんだよ!
ツッコミどころは満載なのだが、ネットの暴走は止まらない。
静かだった境内は、俺を一目見ようとスマホを構えた男たちで埋め尽くされていた。
「いや〜、まさに神風! お札も絵馬も飛ぶように売れるぞ! ありがとなー!」
境内を埋め尽くす参拝客を前に、神社を継ぐ長男の兄貴はホクホク顔で大喜びだ。
だが、この状況を全く面白く思っていない奴が一人いた。
男時代からの親友、キヨである。
「おい、あいつらさっきからお前の脚ばかり狙って撮影してんだぞ。……離れろ」
キヨは腕組みをしながら般若のような顔で俺の横に仁王立ちし、参拝客を鋭い眼光で睨みつけている。
その殺気のせいで神社のありがたみが半減しそうだ。
「だいたいお前も防犯意識がなさすぎる! ほら、袴の裾を広げるな!」
「いや、掃除の邪魔なんだけど……ってか、なんでお前がそんなに怒ってんだよ!?」
男友達だったはずのキヨが、なぜか過保護なボディガードと化している。
神様の気まぐれで女の子(巫女)にされただけでも大災難なのに、ネットの謎バズと親友の重すぎる保護欲に挟まれ、俺の巫女バイトは今日も波乱万丈だった。
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その時。「こん、こん、、、。」と、昔、俺が助けた子狐が纏わりついてきた。
本来キツネはワン、ワンと犬のように鳴くはずなのだが。
(これ、清美。お主、普段から、頭の中でも女子らしい言葉を使えといっておるじゃろうが。)
この子狐、実は何とかの姫巫女の動物化した時の姿だったらしい。
(何とかの姫巫女とはなんじゃ。妾には、月詠の姫巫女という、立派な名前があるのじゃ。)
はいはい、月詠の姫巫女様ね。
(世が世なら、妾は、天照大神の曾孫の従姉妹の、稲荷神の末裔ぞ。)
「はいはい。でも、普通の猪に突き飛ばされて怪我して泣いてたけどな。」
(ぐぬぬ。あの時は、月の入りの直後で、霊力が出しきれてなかったのじゃ。)
「はいはい。運が悪かったな。で、今日はどうしたん?」
(ああ、そうじゃった。きょうのお供物は何じゃ?妾的には甘い油揚げを使ったお稲荷さんがいいのじゃが。)
「分かってますよ。でもお稲荷さんは2個だけですよ。お稲荷さんだけだと、狐の身体には悪いですからね。」
そんな風に、狐と会話してるような俺をみて兄ちゃんは、
「やっぱ清彦、お前、狐の世話にぴったりだな。」とわらった。