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/tachiha/ - たちは板κ

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dc3c8d61 No.3956

dbe41bb0 No.4050

「ねえ、凛。ちょっとこっち向いて」
部室のソファーで文庫本を開いていた黒髪の少女——凛は、となりに座る茶髪の少女——葵(あおい)の唐突な呼びかけに顔を上げた。
「ん? なに、葵——っ!?」
言葉の終わりは、情けない悲鳴へと変わった。
葵の手が、あろうことか凛の制服の胸元に迷いなく伸び、容赦なくその柔らかさを揉みしだいてきたからだ。
「な、ななな何やってんの葵っ!? ちょ、離っ!」
「んー? どうしたの凛、そんなに赤くなって。女子同士のスキンシップなんだから、これくらい普通でしょ?」
葵は可憐な笑顔を浮かべながら、指先に少しだけ力を込める。
その瞳の奥には、獲物を追い詰める肉食獣のような鋭い光が宿っていた。
(間違いない。この『予期せぬ身体接触を受けた時の、息を呑んで硬直するリアクション』! こいつ、俺の高校時代の悪友・大輝(たいき)にそっくりだ)
葵——元・男子高校生の佐藤葵は、心の中でニヤリと笑った。
ある日突然目覚めたら美少女になっていた葵は、周囲にバレないよう「おしとやかな女子」を必死に演じてきた。
しかし、偶然同じ部活に入ってきた凛の挙動には、どうしても元・男特有の妙な不器用さが透けて見えていたのだ。
(もし本当に大輝なら、男時代の癖を突けば絶対にボロを出すはず!)
一方、揉まれ放題になっている凛——元・男子高校生の大輝は、頭の中で警報を鳴らし続けていた。
(嘘だろ!? 今の女子高生って挨拶代わりに胸揉み合うのがフツーなのか!? 勘弁してくれ、男時代の感覚が残ってるから脳がバグりそうだ! でもここで過剰に拒絶したら『男っぽい』って怪しまれて、TSしたのがバレるんじゃ!?)
凛は必死に顔を真っ赤にしながら、歯を食いしばって耐えることを選んだ。
「ふ、普通……なのかな? でも、ちょっと力加減が……あぅ」
「あれ? 嫌ならハッキリ言っていいんだよ? それとも、男の人に触られてるみたいで嫌だった?」
「ち、違う! 葵はかわいい女の子だから嫌じゃないけど……ただ、その、慣れてなくてっ」
潤んだ瞳で必死に耐える凛の反応に、葵の心臓が跳ね上がった。
(〜〜〜っ!? なんだこの破壊力は!? 中身が大輝だとしたら激重の地獄絵図だけど、見た目が完璧な黒髪美少女だからダメージがヤバい!)
「じゃあ、もっと慣れさせてあげるね」
「待って! それ以上は本当に……っあ」
試すはずだったスキンシップは、次第にお互いの甘い吐息と赤面が交差する、逃げ場のない密室の攻防戦へと変貌していく。
相手のボロを出させようと過激に攻める葵と、女子のルール(?)に従おうと健気に耐える凛。
互いに元男だという決定的な秘密を抱えたまま、二人の「自称・普通の女子トーク」はどこまでもすれ違い、甘く焦れったい時間を刻んでいくのだった。

2abc7862 No.4119

「くっ、葵……もう勘弁して……っ!」
凛は両手で顔を覆い、ソファーの上で小さく丸まった。
耳の先端まで真っ赤に染まり、息を荒げている様子は、どこからどう見ても可憐な乙女そのものだ。
(おかしい……おかしいぞ!?)
試す側だった葵のほうが、なぜか冷や汗をかいていた。
(大輝の奴なら『おいやめろ変態!』とか『胸なんか揉んでんじゃねー!』とか、もっと男っぽい口調で暴れるはずだろ!? なんでこんな『初めてのスキンシップに戸惑うウブな美少女』みたいなリアクション完璧にこなしてんだよ!?)
葵の心臓が早鐘を打つ。
仕掛けたのは自分なのに、予想以上の破壊力に脳のキャパシティが限界を迎えかけていた。
「ふぅん。凛ってば、本当にウブなんだから」
葵は必死にポーカーフェイスを決め込み、ゆっくりと手を離した。
だが、凛の反応があまりにもリアルだったため、自分の見立てが間違っていたのではないかという不吉な疑念が頭をよぎる。
(待てよ? もしこいつが本当にただの『生まれつきの女子』だったらどうする? 俺は今、純粋無垢な女子高生に対して、挨拶代わりにガチのセクハラをかましただけの変態女子ってことになるんじゃ!?)
背筋にすーっと冷たいものが走る。
「ご、ごめんね? 凛が可愛かったから、つい意地悪したくなっちゃって……」
「ううん……大丈夫。葵が私を友達として親しく思ってくれてるのは……分かったから……」
凛はウルウルと涙目になりながら、乱れた制服の胸元をぎこちなく整える。
(危ねぇぇぇぇ!! 死ぬかと思った!!)
凛の心の中は大惨事だった。
(『女子同士のスキンシップだから』って言われて必死に耐えたけど、あんなの絶対嘘だろ!? 葵のやつ、手つきが妙に手慣れてたぞ……!? 待てよ、あいつ、男だった頃の俺がよく言ってた『女子同士の過激なスキンシップ最高』みたいな妄想をそのまま実行してないか……?)
凛の中で、ひとつの強烈な疑念が確信へと変わりつつあった。
(間違いない……葵のこの、妙に距離感がバグってる感じと、女の子の扱い方が『男目線の理想』っぽい感じ……。葵の奴も、俺と同じで何らかの理由で性転換した元男なんじゃないか……!?)
胸の動悸を抑えながら、凛はチラリと葵の顔を盗み見た。
葵はすました顔で文庫本に目を落としているが、その耳の裏がうっすらと赤くなっているのを凛は見逃さなかった。
(フッ、ボロを出したのはそっちだぜ、葵。俺を試そうとしたのか知らんが、今度はこっちから仕掛けさせてもらう)
凛はそっと息を整えると、潤んだ瞳のまま、葵の肩にふわりと頭を預けた。
「ひゃいっ!?」
不意打ちの密着に、葵が変な声を上げて跳ね起きそうになる。
「……葵。さっきのお返し。もっと、仲良くなりたいな……なんて」
上目遣いで甘い声を出しながら、凛は葵の太ももの上にそっと自分の手を重ねた。
男時代に培った「男がされたら一番グラッとくるシチュエーション」を全力で再現してみせたのだ。
(どうだ葵! 男ならこの距離感と太もも攻撃には耐えられまい! 正体を現せ!)
「っっっ〜〜〜〜〜〜!!?」
葵の脳内で何かがプチッと弾けた。
頭頂部から湯気が出そうなほど真っ赤になり、凛の甘い匂いと柔らかい体温に包まれて息が止まる。
(大輝の奴……まさか無自覚でやってんのか!? それとも、俺が男だと気づいていて弄んでるのか!? どっちにしろ……可愛すぎて理性が飛ぶだろこんなの!!)
隠し通したい「TSの秘密」と、お互いの男時代の知識を悪用(?)した過激な牽制戦。
二人の「普通の女子」としての日常は、ますます甘くスリリングな泥沼へとハマっていくのだった。

fe91989d No.4138

(これ、マジで大輝なのか!? いや、男だった頃のあいつがこんな完璧な上目遣いなんてマスターしてるわけ)
葵の思考回路は完全にショート寸前だった。
膝の上に重ねられた凛の細い手のひらから、伝わってくる熱い体温。
男目線の「されて一番嬉しいシチュエーション」を熟知しているような隙のない攻め。だからこそ、疑念は深まるばかりだ。
(くっそ! もし本当に大輝なら、元男のくせに俺を萌え死にさせようとしてやがる! だがな、こっちだって元・男だ。女の子に甘えられて引き下がるわけにはいかねぇんだよ!)
葵は震える息を吐き出すと、腹を括った。
引きつりそうな表情を必死で抑え込み、意地悪く微笑んでみせる。
「ふふ、凛ってばホントに甘えん坊さんなんだから。……じゃあ、もっと密着しよっか」
「へっ?」
次の瞬間、葵は凛の腰に両手を回すと、逃がさないと言わんばかりにぎゅっと力強く抱き寄せた。
凛の小さな鼻先と、葵の唇が触れ合いそうなほどの超至近距離。
(うおわあああああ近近近近い!?!?)
凛の脳内で警報が鳴り響く。
自分が仕掛けたトラップだったはずなのに、葵の容赦ないカウンターによって一瞬で形勢逆転されてしまった。
葵から漂う甘いシャンプーの香りと、服越しに感じる柔らかい体温。
(待て待て待て! 葵のやつ、腰の引き寄せ方が手慣れすぎだろ!? こんなの完全に男が女子を抱き寄せる時の手つきじゃないか! やっぱりお前、元男だろ!?)
凛は顔から湯気が出そうなほど真っ赤になりながら、必死に「可愛い女子」のフリを維持しようと必死に耐えた。
だが、耳元で葵の吐息混じりの声が響いた瞬間、ついにキャパシティを突破する。
「凛……耳、すっごく赤くなってるよ? ……可愛い」
「〜〜〜〜〜っっ!!」
(だめだ!! これ以上耐えたら俺の理性が死ぬ!! 女子同士のコミュニケーションの範囲を完全に超えてるだろ!!)
限界を迎えた凛が「あ、葵、ちょっと待っ——」と男口調混じりの悲鳴を上げかけた、その時。
ガラガラッ!
「失礼しまーす! 生徒会の書類持って……って、えっ」
部室のドアが勢いよく開いた。
後輩の部員が目撃したのは、ソファーの上でぴったりと抱き合い、顔を真っ赤にして見つめ合う美少女二人の姿。
「あ……ご、ごめんなさいお邪魔しましたっ!!」
バタン! と音を立ててドアが閉まる。
静寂が戻った部室で、二人は弾かれたように体を離した。
「「………………」」
荒い息を整えながら、凛と葵は互いに明後日の方向を向く。
正体を暴くつもりが、自爆覚悟の泥沼戦に終わったのだ。
(あぶねぇぇぇ! あと一歩で『やめろ大輝!』って叫ぶところだった……!)
(危なかった! あと数秒で『頼むからやめてくれ大輝!』って泣きつくところだった……)
お互いに「相手は絶対に元男だ」という確信を強めつつも、決定的な一線を越えられない二人。
二人の「普通の女子」としての日常は、より一層こじれた甘い泥沼へと突き進んでいくのだった。



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