[ futaba / tachiha / aiba / honba / aoba ] [ main / recent post ]

/tachiha/ - たちは板κ

リレー小説用
Name
Options
Subject
Comment
File
Password (For file deletion.)

File: 1782198013774.png (1.86 MB, 768x1280, 44x80jx79.png)

eeaef069 No.3766

26c25815 No.4047

大聖堂のステンドグラスから差し込む光が、私の——いや、俺様の純白のドレスを眩しく照らし出していた。
「聖女アリア様、間もなく勇者様との謁見の時間です」
控えていた侍女の言葉に、俺は優雅に頷いて見せる。
だが、その内面は激しい苛立ちと混乱で狂いそうだった。
(ふざけるな! なぜこの俺様が、こんなヒラヒラした布切れを纏い、下着の締め付けに耐えねばならんのだ!)
俺の名はザガン。世界を恐怖に陥れた魔王だったはずだ。
それがどうだ。
数日前、憎き勇者パーティーとの死闘の果て、死に際に放った秘術『魂転移』が狂い、あろうことか敵のヒーラーである聖女アリアの体に憑依してしまったのだ。
「うぅ……腰のあたりがスースーして落ち着かん……」
思わず口から漏れた声は、鈴を転がすような可憐な美声。
俺は慌てて口を押さえた。
アリアの体は華奢で、背中や太腿が大きく露出したドレスは、魔術の触媒効果を高めるためとはいえ過激すぎる。
手甲だけは魔王時代の名残りとして魔力を込めて維持しているが、それ以外はどう見ても「無防備で儚げな少女」そのものだ。
そこへ、重厚な扉が開いて男が姿を現した。
金髪をなびかせ、眩しい笑顔を浮かべる男——俺を死の淵まで追いつめた勇者レオンだ。
「アリア、待たせたね。体の具合はどうだい? 魔王との戦いの疲れがまだ残っているんだろう」
レオンが親しげに俺の肩へ手を伸ばしてくる。
俺の脳内で何かがぶちんと切れた。
(気安く触るな愚民が! 貴様のその首、今すぐこの手甲で叩き折ってやる——!)
「——調子に乗るなよ小僧、ブチ殺すぞ」
本能のままにドスの効いた暴言を叩きつけた。
……つもりが。
「あ、あのっ……レオン様……っ。まだ少し、胸がドキドキして……っ」
アリアの身体の防衛本能か、はたまた声帯の仕様か。
口から飛び出したのは、上目遣いで頬を赤らめ、上ずった声で囁く完璧な萌え台詞だった。
「アリア……! 僕のことを思って、そんなに緊張してくれていたのか……!」
レオンの目が一瞬で甘く濁る。手甲をはめた俺の手を、彼は両手で優しく包み込んだ。
(違う! 殺意だ! これは純粋な殺意のドキドキだバカ者!!)
身をよじって逃げようとするも、可憐な聖女の身体はあまりに小さく、男の力には抗えない。
魔王としての尊厳はズタズタだが、今正体がバレれば即座に浄化されるのは俺の方だ。
俺はぐっと奥歯を噛み締め、可愛らしく微笑んで見せるしかなかった。
(覚えておけよ勇者。俺様がこの女の体を完全に使いこなし、元の魔力を取り戻した暁には絶対に貴様を泣かせてやる!)
可憐な聖女の皮をかぶった魔王の、身を削るようなドタバタ潜入生活が、こうして幕を開けたのだった。

87b4b40c No.4062

謁見を終え、聖女用の豪華な私室へと戻った俺は、バタリとベッドに倒れ込んだ。
「ハァ……ハァ……死ぬかと思った……」
可憐なレースのフリルに顔をうずめながら、大きく息を吐き出す。
勇者レオンの奴、俺の手を握ったまま「君が無事で本当によかった」だの「これからは僕が君を一生守る」だの、甘ったるい台詞を吐き捨てていきおった。
魔王城の拷問部屋でもあんな苦痛は味わったことがない。
「とにかく、一刻も早くこの身体から抜け出すか、魔力を回復させて奴らを返り討ちにする算段を立てねば……」
体を起こし、鏡の前に立つ。
鏡に映るのは、背中が大きく開いた純白のドレスを纏い、透き通るような白銀の髪をなびかせた美少女だ。
鋭い視線を向けようとしても、うるんだ瞳と上気した頬のせいで「上目遣いで強がっている少女」にしか見えない。
「……くそっ、威厳の『い』の字もないな」
俺はイライラとドレスの裾を揺らしながら、手甲を装着した右手をかざした。
身体の奥底から魔力を練り上げ、小さく詠唱する。
「出でよ、我が忠実なる下僕……漆黒の小悪魔(インプ)よ!」
スパークッ!
小さな火花が散り、もくもくと上がった紫色の煙の中から、手のひらサイズの羽が生えたトカゲのような魔物が現れた。
魔王軍の連絡員、インプのベルである。
『ひいっ!? 魔王様!? お命は無事でしたか! ……って、え? えええぇぇっ!?』
ベルは空中でのたうち回りながら、俺の顔と胸元を二度見、三度見した。
『ま、魔王様……? なんですかその格好!? なんでそんな可愛い女の子になっちゃってるんですか!? しかもなんかすごく露出度が高くてエッチなドレスを着て——ぶふっ!!』
「黙れ無礼者が!!」
俺は一瞬でベルを掴み上げ、メリメリと握り潰した。
『ぎゃああああっ!? すみませんっ、お許しをっ! 中身は間違いなく魔王様です! その容赦のない力任せな暴力、間違いなく我が主ですっ!!』
「フン……理解したなら良い」
俺はベルを解放し、溜息をついた。
「見ての通りだ。最後の『魂転移』が失敗し、あろうことか敵の聖女に憑依してしまった。今の俺様は魔力の九割を失い、この軟弱な女の体に縛り付けられている」
『な、なんと恐ろしい……! では、あの勇者レオンと同じ屋敷に住んでいるのですか!?』
「そうだ。奴は俺(アリア)に気があるらしく、やたらと距離を詰めてきおる。今日など手を握られ——」
カチャリ。
「——アリア? 入るよ」
「!?」
予告もなくドアノブが回る音。レオンの声だ!
「しまっ……! ベル、隠れろ!」
『ひえっ!』
ベルが慌ててクローゼットへ飛び込むと同時に、ドアが開いた。

87b4b40c No.4063

レオンが盆に載せた温かいスープを持って入ってくる。
「急に押し掛けてごめんね。厨房で君の好きなハーブスープを作ってもらったんだ。……おや、顔が赤いけれど、やっぱり熱があるんじゃないかい?」
レオンが心配そうに顔を覗き込んできた。
その距離、わずか数センチ。
男の体温と爽やかな汗の匂いが鼻腔をくすぐる。
(近すぎる! 離れろバカ者! 貴様、魔王の私室にノックもなしに入るなど死罪だぞ!!)
俺は心の中で怒号を上げ、レオンの胸板を強く突き飛ばした。
「失せろ下がれ触るなこのスケベ勇者が!!」
……と、叫んだつもりだった。
「ひゃんっ……!? れ、レオン様……っ、いきなり入ってくるなんて……意地悪です……っ」
可憐な悲鳴と共に、俺の体は自らレオンの胸へと倒れ込んでいた。
突き出そうとした両手は、なぜかレオンの服の裾をぎゅっと掴んでいる。
(なっ!? なぜだ!? なぜ勝手に身体が甘えるような動きをする!?)
「あっ……ごめん! 驚かせるつもりはなかったんだ!」
レオンは焦って俺の肩を抱き留めた。
その腕の力強さと優しさに、アリアの身体が『キュン』と謎の反応を示す。
(やめろ! 反応するなこの雌肉め! 俺様は魔王だぞ!!)
「アリア……君は本当に可愛いな。昔はもっとおとなしかったのに、最近は感情表現が豊かになって……僕、なんだかすごく嬉しいよ」
レオンの顔が近づいてくる。
その瞳には、熱っぽい愛情が宿っていた。
(ま、待て! こいつ、このままキスする気か!? 魔王のファーストキスが勇者相手など、冥府の歴史に永遠の汚点として刻まれてしまう——!!)
絶体絶命のピンチ。俺は必死で頭を回転させ、アリアの身体の「防衛本能」を逆手に取ることを思いついた。
「レ、レオン様……っ! 私、なんだか急に……クラクラして……っ」
ガクッと頭を垂れ、レオンの胸の中で死んだふり(気絶の演技)を決行する。
「アリア!? 大変だ、やっぱり無理をしていたんだね! すぐにベッドへ……!」
レオンはお姫様抱っこで俺をベッドに横たえると、愛おしそうに額の髪を撫で、静かに部屋を出て行った。
パタン、とドアが閉まる。
「………………」
俺は跳ね起きると、自分の顔を両手で覆った。
「死ぬ……! このままだと魔王としての尊厳より先に、俺の精神が破壊される……!!」
クローゼットからこそっと出てきたベルが、引きつった笑みを浮かべていた。
『ま、魔王様……案外、勇者様とお似合いかもしれませんね……』
「消し飛ばすぞ貴様ーーー!!」
聖女の皮をかぶった魔王の、身も心も弄ばれる苛烈な日常は、まだまだ始まったばかりであった。

2ec797f3 No.4127

魔王城攻略の疲れを癒やすため、国王から与えられたのは、まるでプールのように広大な城の露天風呂だった。
温かい湯気が立ち込める中、俺——アリア(中身は魔王ザガン)は、湯船の隅で小さくなっていた。
「はぁ〜……生き返るわねぇ。アリア、そんな端っこにいないで、もっとこっちに来たら?」
湯気の中から姿を現したのは、勇者パーティの第一級魔法使い・マジョリカだった。
普段は重厚なローブと大きな帽子で体を覆っているため気づかなかったが、布地をすべて脱ぎ捨てた彼女の素顔と体型は、とんでもない破壊力を秘めていた。
豊満なんてレベルではない。
細いウエストに対して主張が激しすぎるたわわな胸元、湯の中からでもわかる濡れた太腿の肉感。
同じ女性の体とはいえ、華奢なアリアの身体とは根本から作りが違っていた。
(ぐぬぬ! なんだその凶悪な肉体は! 魔王軍のサキュバース隊長ですら、そこまで破廉恥な体つきはしておらんぞ!)
「どうしたの? じっと見つめて。ふふ、もしかして私の体、羨ましい?」
マジョリカは妖艶な笑みを浮かべると、湯をかき分けて俺のすぐ隣へと距離を詰めてきた。
豊満な胸が湯面でぷかぷかと揺れ、甘いハーブの香りと湯気が俺の鼻腔をくすぐる。
「な、なんでもないわっ! 別に……羨ましくなんて……」
「あら、素直じゃないわね。アリアは華奢で可愛らしいじゃない。でも、少し肩が凝っているんじゃないかしら? ほら、揉んであげる」
「ひゃっ!? や、やめ——」
拒絶する間もなく、マジョリカの柔らかく温かい手が俺の細い肩に触れた。
指先が絶妙な力加減でコリをほぐしていく。
だが、至近距離にある彼女の圧倒的な「肉感」と、滑らかな肌の触感がダイレクトに伝わってきて、俺の思考は完全にフリーズした。
(お、落ち着け。相手は人間だ! この俺様は数百年の時を生きた魔王……女の肌の1つや2つで狼狽えるなど)
「んふふ、アリアってば、肌が真っ白でツルスベね。なんだか、食べてしまいたいくらい可愛いわ」
マジョリカの吐息が耳元にかかる。
彼女の手は肩から背中、そしてすべすべとした太腿のあたりへと滑り降りてきた。
「ちょ、ちょっとマジョリカ!? どこを触っているのよバカ者……じゃなくて、恥ずかしいわっ!」
「いいじゃない、女同士なんだから。魔王討伐の旅では、ゆっくりお風呂に入る暇もなかったもの。今夜はたっぷり、私に可愛がられなさいな」
(女同士。そうだった、今の俺は女(聖女)扱いなのだ!! だからといって、なぜこんな同性からの甘い責め苦に耐えねばならんのだ!!)
勇者レオンの男としての接近も恐怖だが、マジョリカのような包容力抜群のグラマラス美女による怒涛のスキンシップも、精神を破壊するには十分すぎる威力だった。
「ひ、悲鳴を上げるわよ……!? 助けてレ——じゃなくて、誰かー!!」
「ふふ、声を出したら、外で待ってるレオンたちが飛んで来ちゃうわよ? それでもいいの?」
クスクスと愉しそうに笑うマジョリカに抱きすくめられ、俺は湯船の中で完敗を悟った。
(魔王城の溶岩風呂より熱い。だが逃げられん。覚えておけ人間ども、元の姿に戻ったら、まずこの城の風呂場を真っ先に木端微塵にしてやるからなーーー!!)
湯気と甘い香りが満ちる大浴場に、魔王の心の悲鳴が虚しく響き渡るのだった。

da243072 No.4157

マジョリカの豊満な胸に抱きすくめられたまま、俺は湯船の中でジタバタと抵抗を続けていた。
「ま、マジョリカっ! 苦しい、苦しいから離れなさい!」
「あらごめんなさい。アリアがあんまり可愛いから、ついつい力が入っちゃったわ」
マジョリカはクスクスと笑いながらも、俺の背中に回した手を優しく撫で下ろす。
彼女の指先が、背筋を滑っていく。
そこはドレスを着ていた時にも大きく開いていた部位であり、過敏になっている肌に温かい湯と彼女の触感がダイレクトに伝わり、背筋に甘い痺れが走った。
「ひゃうっ!? な、どこを触っているのよ!」
「ふふ、背中を流してあげようと思っただけよ。ほら、力を抜いて?」
(この女、手慣れておる……。まさか魔法使いというのは全員こういう怪しい施術の心得があるのか!?)
魔王時代の俺なら、このような軟弱な攻撃など一蹴できただろ。
だが、今の身体は華奢で敏感な聖女アリア。
マジョリカの手が滑るたびに、体中の力が抜けて湯船に沈みそうになってしまう。
俺が必死に耐えていると、マジョリカはふと手を止め、少し真面目な声で呟いた。
「……でも、本当によかったわ」
「え……?」
「魔王との最後の戦い。あなたが倒れた時は、本当に生きた心地がしなかったんだから。レオンなんて、髪を振り乱してあなたを抱きかかえて、半狂乱になっていたのよ?」
マジョリカの言葉に、俺は思わず息を呑んだ。
あの決戦の瞬間。俺が死に際に放った『魂転移』の光に包まれ、本物のアリアの魂が眠りについた時のことか。
勇者レオンが必死に彼女を抱きしめていた光景が、アリアの残留思念のような形で脳裏に掠める。
「……レオンが、か?」
「ええ。だからね、アリア。あなたが無事でいてくれて、こうしてまた一緒にお風呂に入れているのが……私、本当に嬉しいの」
マジョリカはそう言うと、愛おしそうに俺の頭を胸元へ抱き寄せ、優しく髪を撫でた。
(〜〜〜〜〜っっっ!?!?)
顔面が、マジョリカの圧倒的な柔らかさと温もりに埋もれる。
甘いハーブの香りと、彼女の温かい鼓動がダイレクトに耳に届く。
(な、なんだこの包容力は……。優しい言葉をかけながら胸に埋め込むなど、卑怯千万! まさかこれが人間の言う『母性』という禁断の魔法なのか!?)
魔王としてのプライドが「逃げろ」と叫ぶ一方で、アリアの身体と精神はすっかり毒気を出され、マジョリカの抱擁に「安心感」を覚えてしまいそうになる。
このままでは、身体だけでなく心まで完璧に「聖女アリア」に塗り替えられてしまう——!
「あ、アリア? 顔がすごく赤いわよ? 大丈夫?」
「う、うるさい……っ! のぼせただけだ……バカ者……っ!」
「あらあら、大変! ほら、上がりにしましょう!」
急激なのぼせと、精神的なオーバーヒートにより、俺の視界はぐるぐると回り始めた。
マジョリカが慌てて俺を抱え上げようとするが、その豊かな胸の揺れが目に入り、俺の意識は完全にノックアウトされた。
「……覚えておけ……マジョリカ……。次に会う時は……絶対に……勝つ……」
「え? なにが?」
最後に弱々しい捨て台詞を残し、俺(魔王ザガン)は、可憐な聖女の身体のまま、グラマラスな魔法使いの腕の中で優雅に失神したのだった。



[Return][Go to top] Catalog [Post a Reply]
Delete Post [ ]
[ futaba / tachiha / aiba / honba / aoba ] [ main / recent post ]