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/tachiha/ - たちは板κ

リレー小説用
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落ちそう………

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視界に飛び込んできたのは、煌びやかなドレッサーのライトと、鏡に映る息をのむほど可憐な美少女の姿だった。
フリルが幾重にも重なった華やかなピンクのステージ衣装に、しなやかに背中を流れる黒髪、そして神秘的に輝く紫色の瞳。
どこからどう見ても、今をときめくトップアイドル――しかし俺の頭には、しがない男として生きてきた確かな記憶が残っていた。
満員電車に揺られ、疲れ果てて床についたはずの、あの泥のような日常だ。
だが混乱する意識を余所に、もう一つの膨大な記憶が脳裏に溢れ出してくる。激しいレッスンで流した汗の熱さ、何万人ものファンが叫ぶ歓声の振動、スポットライトを一身に浴びる震えるような高揚感。
歌の歌詞も、完璧なステップも、スタッフたちの顔すらも、すべて自分のこととして「分かって」しまうのだ。
「――私、本当にこの子になっちゃったのか……?」
胸元に手を当てると、衣装越しに小さく跳ねる鼓動が伝わってくる。
男だった俺の戸惑いと、アイドルである彼女のプロ意識が不思議なバランスで混ざり合い、胸の奥が熱くなった。
その時、控え室のドアが軽やかに叩かれる。
「本番5分前でーす! 準備はバッチリですか?」
モニターには、超満員の客席を埋め尽くす眩しいペンライトの海が映し出されていた。
男としての感覚を抱えながらも、俺の体は自然と完璧な営業スマイルを作り、ドレスの裾をキュッとつまんでみせる。
「はい、バッチリです! 行ってきます!」
鈴を転がすような自分の可愛らしい声に少し照れつつも、俺は高鳴る胸を抑えて、光り輝く夢のステージへと足を踏み出した。

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まばゆい光の束と、地鳴りのような歓声を全身で浴びながら、私はステージの中央へと躍り出た。
男だった頃の自分は、人前に立つだけで心臓が口から飛び出そうになるほどの極度のアがり症だったはずだ。
それなのに今、胸を打つ鼓動はどこまでも心地よく、全身の細胞がこの瞬間を歓喜しているのが分かる。
アイドルの身体と精神が、恐怖を期待へと塗り替えてくれていた。
曲が始まった瞬間、一切の迷いなく身体が動き出す。
記憶を辿るまでもなくステップは滑らかで、喉からは鈴を転がすような透明感のある歌声が伸びやかに響き渡る。
頭で考えるよりも早く、指先の角度一つひとつまでが可憐なパフォーマンスを紡ぎ出していった。
「あ、これ……完全にいける!」
圧倒的な身体感覚への信頼からふっと心の余裕が生まれると、男としての悪戯心がふいに顔を出した。
アップのカメラがぐっと自分に寄ってきた絶妙なタイミングで、予定にはなかったバッチリと決めたウィンクを繰り出してみる。
次の瞬間、ドーム全体を揺らすほどの黄色い悲鳴と地鳴りのような歓声が爆発した。
モニターに映し出された己の破壊的な可愛さに、自分自身でさえ一瞬クラッとしそうになりながら、私は満足気な笑みを浮かべて次のステップへと軽やかに飛び出した。

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怒涛の本編が終わり、万雷の拍手と歓声を背に受けながら舞台袖へと引っ込むと、待機していたマネージャーが興奮で顔を真っ赤にして駆け寄ってきた。
「凄かったぞ! 特にサビのアドリブのウィンク、SNSのトレンドも配信のコメント欄も大爆発だ! 最高のファンサだよ!」
「ちょっとー! あんな可愛いアドリブ、リハーサルで聞いてないんだけど!? ずるい!」
駆け寄ってきたメンバーの少女たちが、汗ばんだ顔に弾けるような笑顔を浮かべて私の肩を揺さぶる。
男だった頃なら可愛い女の子たちにこんな至近距離で囲まれたらパニックになるところだが、今の私には彼女たちの誇らしげで愛おしい感情が痛いほど伝わってきた。
同じステージを駆け抜けてきた仲間としての絆が、胸の奥を温かく満たしていく。
その時、ドーム全体を揺らすほどの「アンコール!」のコールが、楽屋裏にまで雷鳴のように響き渡ってきた。会場の全員が、私たちの登場を今か今かと熱望している。
タオルで汗を拭い、アンコール用のライブTシャツの裾をキュッと結んで素早く衣装を整える。
鏡に映る自分の表情は、かつての冴えない男の面影など微塵もなく、誰よりも生き生きと輝いていた。
「みんな、待たせちゃってるね。最後の一曲まで、もっと夢中にさせちゃおう!」
掛け声とともに舞台袖で円陣を組み、気合の一声を上げて再び光の満ちるステージへ躍り出た。
イントロが流れた瞬間、歓声のボルテージは最高潮に達した。
ステージの端から端まで軽やかに駆け抜け、スタンドの奥まで届くように大きく手を振る。男の時には決して知ることのなかった、誰かの希望になれる圧倒的な快感と喜び。
「みんなー! 今日は最高の時間をありがとう! 大好きだよー!」
満面の笑みで叫びながら手をかざすと、視界いっぱいに広がるペンライトの海が一段と激しく揺れた。
スポットライトを一身に浴びながら、私はこのアイドルとして生きる新たな人生を、心から楽しんでいた。



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