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/tachiha/ - たちは板κ

リレー小説用
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8fd8987f No.2219

f4372240 No.2758

耳を突き刺すような喧騒と、肺を焼くような熱さで目が覚めた。
​「……ッ、ゲホッ! ゴホッ、ハァ、ハァ……ッ!!」
​口から溢れ出たのは、大量の塩素臭い水だ。
朦朧とする視界の中で、誰かが必死に俺の胸を押し、口を塞いでいたような感触が残っている。
​「息をした! 気がついたぞ!」
「救急車、早く!」
​周囲の叫び声が、ひどく高い。
見上げれば、真っ青な夏の空と、眩しすぎる太陽。視界の端には、学校の古いプールサイドのコンクリートが見えた。
​(……え? 学校?)
​おかしい。
俺はさっきまで、締め切り直前のオフィスで、三晩徹夜の末にエナジードリンクを煽っていたはずだ。心臓が嫌な跳ね方をして、視界がぐにゃりと歪んで、そのまま机に突っ伏した――そこまでの記憶は鮮明にある。
​「大丈夫!? 莉緒奈(りおな)ちゃん! わかる!?」
​必死な顔で覗き込んできたのは、水着姿の若い男。
おそらく体育教師か何かだろう。
だが、彼が呼んだ名は俺の名前ではない。
佐藤とか、田中とか、そういう無難な中年男の名ではない。
​「あ……あぅ……」
​声を出そうとして、凍りついた。
喉から漏れたのは、鈴を転がすような、あまりにも幼く、高い少女の声だった。
​呆然としたまま、自分の手を見る。
そこにあったのは、キーボードを叩きすぎてタコができたゴツゴツした指ではない。
白く、細く、小さな、水に濡れてふやけた子供の手だった。
​視線を下に落とすと、紺色のスクール水着に包まれた、平坦で小さな胸。
​「……嘘、だろ……」
​つぶやきは、誰にも聞こえないほど小さかった。
四十年近く連れ添った、あの重くて疲れ切った「おじさん」の体はどこへ行った?
​「莉緒奈ちゃん、すぐ先生たちが助けるからね! 頑張って!」
​必死に励ましてくれる教師の瞳に、怯えたような、でもどこか愛らしい少女の顔が映っている。
それが自分なのだと理解した瞬間、俺の意識は再び、夏の陽炎の中に溶けていった。
​四十代、独身、社畜。
過労死の果てに手に入れたのは、あまりにも瑞々しく、あまりにも前途多難な、小学五年生の放課後だった。

a1674150 No.2775

「……ん」
カーテンの隙間から差し込む西日が、まぶたの裏をオレンジ色に焼く。
鼻をつく消毒液の匂い。どこか遠くで響く、部活動の掛け声と蝉の鳴き声。
(ここは……保健室か)
ゆっくりと体を起こすと、パイプベッドがギィと軋んだ。
頭が重い。
だが、それ以上に体が「軽い」ことに戦慄する。
視界に入るのは、薄汚れた天井ではなく、清潔なシーツと、そこから覗く驚くほど白く小さな自分の足。
(夢じゃ、なかったんだな)
俺は、確かに死んだ。
2026年7月24日。
空調の効きすぎたオフィスで、心臓が爆ぜるような痛みを感じ、そのまま意識を失った。
なのに、どうしてか。今の俺は、昭和の香りが残る小学校の保健室で、小学五年生の少女「莉緒奈」として生きている。
(莉緒奈。如月莉緒奈……。なるほど、俺の『知識』がそう言ってるな)
不思議な感覚だった。
俺としての記憶は鮮明にあるが、この体の持ち主が持っていた知識や状況も、まるでパソコンの共有フォルダから引き出すように、脳内にインデックスされている。
【如月 莉緒奈(11歳)のステータス】
家庭環境: 結構いいとこのお嬢さん。
父: 中堅企業の重役。俺(おじさん)の感覚からすれば、娘に激甘な理想の上司。
母: おっとりしたお嬢様育ちの専業主婦。
習い事: ピアノ(月曜)、バレエ(木曜)。
「……週一の習い事なんて、ホワイト企業かよ。俺なんて週七でサービス残業だったのに」
口から出た声は、やはり透き通った鈴の音のようだった。
ラノベ脳な俺の推測が正しければ、本物の莉緒奈ちゃんは、あのプールの事故で魂が天に召されてしまったのだろう。
そこに、たまたま同じ日、同じ時間に「過労死」した俺の魂がスポッと嵌まってしまった――。
「莉緒奈!? ああ、莉緒奈、よかった……!」
ガラリと保健室のドアが開いた。
現れたのは、上品なベージュのワンピースを纏った、おっとりとした雰囲気の美女だ。
莉緒奈の母、如月(きさらぎ)香苗。
「お母、さん……?」

「そうよ、お母さんですよ。学校から電話が来た時、生きた心地がしなかったわ……」
彼女は俺を抱きしめた。
香水の良い香りと、母親特有の温もり。
四十代の独身男には縁遠かった「無償の愛」が、小さな体を通じて心に染み渡っていく。
「先生から聞いたわ。プールの授業中に足がつってしまったんですって? もう、無理をしちゃダメよ。あなたはピアノもバレエもあるんだから」
「……ごめんなさい。もう大丈夫だから」
「ええ、ええ。パパもね、今すぐ会社を早退して帰ってくるって言ってたわ。莉緒奈が好きな高級アイスを買い占めてくるって」
(パパさん、職権濫用がすぎるぞ。でも、そんな風に心配されるなんて……悪くない)
かつての俺は、誰にも看取られず、エナジードリンクの空き缶に囲まれて死んだ。
それがどうだ。今は、誰かが俺のために泣き、誰かが俺のために仕事を放り出して駆けつけてくれる。
「さあ、おうちに帰りましょう。今日はもう、ゆっくり休んでいいのよ」
母に手を引かれ、保健室を後にする。
校門の外には、黒塗りの送迎車が止まっていた。
(おじさんから、お嬢様小学生へ。人生の二周目にしては、ちょっと難易度がバグってる気もするけど……)
校庭に降り注ぐ、暴力的なまでの夏の陽光。
だが、その暑さすら、今は「生きている」証拠のように感じられた。
(ま、いいか。今度は定時で上がれる人生を目指そう。まずは、あの『パパ』に甘えて、アイスを食うところからだな)
俺は、自分でも驚くほど自然に、母の手を握り返した。
202X年7月24日。
それは俺が死んだ日であり、俺が「彼女」として新しく始まった日でもあった。

a1674150 No.2776

校門の前に停まっていた黒塗りの送迎車に乗り込み、数分。
辿り着いたのは、都心の一等地にそびえ立つハイグレードなタワーマンションだった。
保健室で着替えた莉緒奈の「いつもの私服」は、パフスリーブの白いブラウスに、ラベンダー色のフレアスカート。
素材の良さが肌触りでわかる。中身がおじさんの俺には、あまりに眩しすぎる出で立ちだ。
「さあ、莉緒奈。まずはプールの塩素を綺麗に洗い流しましょうね」
「あ、うん。そうだね……」
リビングへ入るなり、母・香苗さんは当然のように俺の手を引いて脱衣所へと向かった。
待て、まさか。
「お母さん、一人で入れるよ?」
「何を言ってるの、今日は大変なことがあったばかりでしょう? フラッとしたら危ないわ。さあ、脱ぎましょうね」
逆らえない。
おっとりとした微笑みの裏にある、お嬢様育ちらしい「慈愛の強制力」に押され、俺は観念した。


脱衣所の大きな鏡の前で、香苗さんが手際よく俺のブラウスのボタンを外していく。
目の前で、母親の白い指が動く。やがてブラウスが肩から滑り落ち、続いてスカートも足元へ。
(う、わ……)
鏡に映ったのは、白く、細く、守りたくなるような少女の肢体。
そしてその横で、香苗さんもまた、自らのワンピースのファスナーを下ろしていた。
「ふぅ、今日は本当に暑かったわね」
シュルリ、と布が床に落ちる。
そこにあったのは、中堅企業の重役夫人という肩書きに相応しい、あまりにも豊潤な「大人の女性」の肉体だった。
(……ご、極楽か?)
俺の視線は釘付けになった。
香苗さんの下着は、繊細な刺繍が施されたピンクのレースたっぷりの上下セット。
お嬢様育ちらしい上品な華やかさがあるが、その中身は実にもっちりとグラマラスだ。
出産を経験し、年齢を重ねたゆえの柔らかな曲線。
特にお腹周りの、わずかに乗った「肉」が、かえって女性としての包容力と艶めかしさを強調している。
(不謹慎すぎる……! だが、これがラノベなら完全にサービスシーンだぞ……!)

「どうしたの、莉緒奈? ぼーっとして。さあ、中に入りましょう」
浴室の扉を開けると、ミストサウナのような熱気と、高級なバスソルトの香りが立ち込めた。
広い浴槽に浸かり、香苗さんが俺の体を丁寧に洗い始める。
「莉緒奈は、本当に肌が白くて綺麗ね。パパが心配して、毎日『宝物だ』って言うのもわかるわ」
「そう、かな……」
スポンジの柔らかな感触。
背中を流されている間、俺の目の前には香苗さんの豊かな胸元が揺れている。
四十代独身、社畜の極致で死んだ俺にとって、これはあまりにも劇薬すぎた。
「次は前ね」
くるりと正面を向かされる。
香苗さんの優しい瞳が、俺を見つめる。
彼女は自分の体にある肉の柔らかさを隠そうともせず、俺を抱き寄せるようにして髪を洗ってくれた。
お腹の心地よい弾力が、莉緒奈の小さな体に伝わってくる。
「……気持ちいい」
思わず本音が漏れた。
塩素の匂いが消え、代わりに母の香りと石鹸の清潔な匂いに包まれる。
前世の俺が、深夜のオフィスで求めていた安らぎが、ここにはすべて揃っていた。
「よかった。今日はパパと三人で美味しいアイスを食べましょうね」
風呂上がり、お揃いのパジャマに着替えさせられながら、俺は心に誓った。
この「莉緒奈」という人生、全力で守り抜いてやると。
社畜おじさんの知識と、この可愛らしい少女の特権。
それらを駆使して、二度目の人生は最高に甘いものにしてやるんだ。

82534107 No.2788

夕食後、父が文字通り「買い占めて」きたハーゲンダッツの期間限定フレーバーを三人で突いた。
「莉緒奈、本当に無事でよかった。パパ、会議中だったけど心臓が止まるかと思ったよ」
高級スーツを脱ぎ捨てた父・誠一は、デレデレの笑顔で俺の頭を撫でる。
冷たくて甘いバニラが、火照った体に染み渡る。
(……悪くない。いや、最高すぎるだろ、この環境)
​「さあ、莉緒奈。今日は大変だったんだから、もうお部屋で休みましょうね」
香苗さんに促され、俺は自分の部屋へと向かった。
淡いピンクと白で統一された、お嬢様感溢れる子供部屋。
「おやすみなさい、莉緒奈」
香苗さんが優しくおでこにキスをして、照明を落として出ていった。
​しばらくして、ドアが微かに開く音がした。
(パパか……?)
薄目を開けると、父・誠一が枕元に立ち、愛おしそうに俺の寝顔を見つめていた。
「……無事でよかった。本当にな……」
熱い吐息混じりの独り言。
彼は俺の掛け布団を丁寧に直し、名残惜しそうに部屋を後にした。
俺はそのまま、狸寝入りを決め込む。
(……知らない天井だ)
40年見慣れた、雨漏りの跡がある安アパートの天井じゃない。
ふかふかのベッド、いい匂いのシーツ。
だが、静まり返った室内で、俺の研ぎ澄まされた「おじさん」の聴覚が、隣の主寝室から漏れ聞こえる異変を察知した。


​壁越しに、密やかな、だが確かな熱を帯びた音が響いてくる。
「っ、あなた……。莉緒奈が寝たばかりなのに……」
香苗さんの、あの透き通った声が、今は濡れたように艶っぽく震えている。
「いいじゃないか。今日は本当に怖かったんだ。こうして、お前を抱いて、生きている実感を得たいんだよ」
衣擦れの音。そして、肌と肌が密着する、独特の吸い付くような音が聞こえ始めた。
​「あっ……んぅ……! 誠一さん、そこ……。……激しいわ…っ」
「香苗。ああ、なんて体が柔らかいんだ。……今日はずっと、これを考えていた」
「やだ……。あ、ああっ! ダメ、声が出ちゃう……っ」
​先ほどまで俺を慈しんでいた「聖母」の声が、一変して「女」の悦びに狂っていく。
バフッ、バフッ、と重厚なベッドのマットが沈み込むリズム。
そして、逃げ場のない密室で響く、乾いた、肉と肉がぶつかり合う「パンッ、パンッ」という生々しい音。
​「ふぅ、はぁ……っ。あなた、……お願い。今日は後ろからしてほしいの……」
「後ろから? 積極的だね、香苗」
「だって、もっと、奥まで……感じたいから……。っ、……あ、あああああッ!!」
​四半世紀近く枯れ果てていた俺の「男」の部分が、少女の体の中で微かに疼くのを感じる。
しかし、聞こえてくるのはそれだけではなかった。
​「次は、私が上に……。あなたの顔を見ながら、イキたいの……」
「くっ。香苗、締め付けすぎだ……」
「いいでしょう? あ、あぁっ! くる、……くるわっ! あがっ、……あぁぁぁんっ!!」
​最高潮に達した香苗さんの、獣のような、それでいてひどく甘い絶叫。
やがて、激しいピストン音は、重なり合う二人の荒い吐息へと変わっていった。
​(……おいおい。この家、教育に悪すぎないか?)
​俺は寝返りを打ち、耳まで布団を被った。
隣で繰り広げられたあまりにも濃厚な「親の情事」。
前世では縁のなかった、生命力に溢れた家族の形。
(ま、これも『生きてる』ってことか)
俺は苦笑いしながら、莉緒奈としての深い眠りへと落ちていった。

56724ff6 No.2809

結局、隣室から響く「生命の躍動」は、たっぷり二時間は続いた。
四十代だった頃の俺なら、翌日は確実に寝不足で白目を剥いていただるところだが、子供の肉体というのは恐ろしい。
泥のように眠り、目が覚めれば驚くほどスッキリとした視界が広がっていた。
細胞の一つ一つが瑞々しく、漲るエネルギーに溢れている。これが「若さ」か。
​学校生活は、拍子抜けするほどスムーズに終わった。
というより、五年生の算数や国語は、かつて資格試験や納期に追われていた俺からすれば、もはや「癒やし」のレベルだただ、あまりに簡単すぎて、ノートを取るふりをしながら「いかに中身がおじさんだとバレずに、この小学生ライフを謳歌するか」というシミュレーションに耽る苦痛の方が大きかった。
​そして、放課後。
莉緒奈のスケジュール帳に従い、俺は指定されたバレエ教室の門を叩いた。

​「こんにちはー」
​鈴を転がすような声で挨拶をし、女子更衣室の重い扉を開ける。
そこは、前世の俺が決して立ち入ることの許されなかった、聖域にして禁域。
ムッとした熱気の中に、制汗剤のシトラスの香りと、タイツ特有のナイロンの匂いが混じり合っている。
​「莉緒奈ちゃん、お疲れ様。今日も頑張りましょうね」
​声をかけてきたのは、高校生くらいのスタイルの良いお姉さんだ。
更衣室には、小学生から成人クラスの女性まで、五人ほどの先客がいた。
彼女たちは、俺という「子供」の視線など一ミリも意識することなく、淡々と、しかし大胆にその肢体を晒している。
​俺は、自分の着替えを手に取ったまま、呆然と立ち尽くした。
​すぐ目の前では、大学院生くらいだろうか、黒髪を夜会巻きにした凛々しい女性が、ブラウスを脱ぎ捨てたところだった。
鍛え上げられた背筋が、照明を反射して美しく波打つ。アンダーウェアを外し、レオタードに足を通す瞬間、こぼれんばかりの豊かな胸が重力に従って揺れ、タイトな布地に押し込められていく。
その境界線の肉感は、まさに芸術品だ。

​その隣では、モデルのような細身の女性が、ストッキングを脱ぎ、真っ白なタイツを履き直している。
長い、あまりにも長い脚椅子に腰掛け、脚を高く上げた際に露わになる、鼠蹊部の滑らかな曲線。
バレエで培われたしなやかな筋肉が、薄い皮膚の下で生き物のように動いている。

「ねえ、今日の先生、ちょっと厳しいらしいわよ?」
​談笑しながら着替えているのは、二人組のOL風の女性たちだ。
一人は、少し小柄だが驚くほど肉付きが良い。スポーツブラを外した瞬間の、解放された胸の弾力。
もう一人は、対照的に引き締まった腹筋と、キュッと上がった小尻が印象的だ。
彼女たちがレオタードの股布を引き上げ、食い込みを直す仕草の一つ一つが、前世の俺の脳内にある「おじさんセンサー」を激しく刺激する。

56724ff6 No.2810

最後の一人、莉緒奈と同じくらいの年上の少女は、既にレオタード姿で柔軟を始めていた。
幼さと、バレリーナとしての完成されたラインが同居する、危うい美しさ。
​(ご、極楽だ。間違いなく、ここは地上に現れたエデンだ)
​血気盛んだった頃の記憶が、網膜に焼き付く光景に呼応して、脳内に快楽物質を撒き散らす。
「これだよ、これ! 人生二周目のボーナスステージはこれなんだ!」
昂ぶる感情のまま、俺は無意識に、自分の股間へと意識を向けた。
​だが。
​(………………ない)
​そこにあるのは、膨らみでも怒張でもない。
レオタードの薄い布地を押し返すような、「かつての相棒」の力強い主張は、どこを探しても存在しなかった。
あるのは、滑らかで、平坦で、どこまでも無機質な、少女の股間。
​(そうだった……俺、今、女なんだ……)
​どれほど興奮しても、それを発散する術も、象徴する形も持たない。
目の前の「極上」を楽しみ尽くすための、最も重要なツールを失っているという事実に、俺は急激に賢者タイムのような虚脱感に襲われた。
​「莉緒奈ちゃん? どうしたの、早く着替えないと遅れちゃうわよ」
​お姉さんに肩を叩かれ、俺は力なく「……はい」と答えた。
スタイル抜群の女性たちに囲まれ、視覚的には最高潮。
だが、物理的には絶望。
​俺は、小さく溜息をつきながら、ピンク色のタイツに自分の細い足を通した。
この「お嬢様ライフ」、前途多難なんてレベルじゃないぞ。

56724ff6 No.2811

更衣室での絶望を振り払い、俺はスタジオへと足を踏み入れた。
全面鏡張りの室内、高い天井。
そして、ピンと張り詰めた空気。
講師は、現役を退いたばかりだというシュッとした美魔女、安達先生だ。
​「さあ、始めましょうか。まずはバー・レッスンから」
​ピアノの伴奏が鳴り響く。
中身はおじさんの俺だが、莉緒奈の体には「教育」が染み付いていた。
安達先生が示すポーズに合わせ、体が勝手に動き出す。
​(……え、何これ、すごい)
​前世の四十代の体なら、前屈をしただけで腰が悲鳴を上げ、膝を曲げれば「ポキッ」と嫌な音が鳴っていた。
だが、今は違う。
アン・ドゥ・トロワの合図に合わせて膝を深く曲げる(プリエ)と、筋肉がバネのようにしなやかに沈み込み、再び立ち上がるときには羽のように軽い。
​「莉緒奈ちゃん、今日のアン・ドゥオール、とても綺麗よ」
​安達先生が驚いたように目を細めた。
それもそのはずだ。俺には「おじさん」としての客観的な視点がある。
鏡に映る自分を見る。
背筋をピンと伸ばし、指先まで神経を研ぎ澄ませる。
莉緒奈の幼い体は、俺の「こう動かしたい」という脳の命令に対して、驚くほど忠実に、かつ過剰なまでに敏感に反応するのだ。
​「次はセンター。グラン・ジュテ(大きな跳躍)をやってみましょう」
​順番が回ってくる。
俺は軽く助走をつけ、床を蹴った。
その瞬間、視界がぐんと跳ね上がった。
​(浮いてる……!?)
​重力から解放されたような感覚。
空中で180度開脚された足は、まるで重さを感じさせない。
着地の衝撃も、しなやかな足首と膝がすべて吸収し、音もなく床に降り立つ。
​「……素晴らしいわ」
​安達先生だけでなく、他の生徒たちの視線も俺に釘付けになっていた。
更衣室で着替えていた年上の女性たちからも「あの子、あんなに飛べたっけ?」という囁き声が漏れる。
​「莉緒奈ちゃん、何か……憑き物が落ちたみたいにキレがあるわね。集中力が今までと全然違う」
​先生に褒められ、俺は少し照れくさくなった。
中身がおじさんだから、余計な雑念(おやつ食べたい、とか、友達と遊びたい、とか)がなく、ただ自分の体のメカニズムを試すことに没頭していただけなのだが。
​(これ……面白いかもしれない)
​四十代の社畜時代、駅の階段を上がるだけで息切れしていたあの頃が嘘のようだ。
自分の思い通りに動く、若くて、美しくて、可能性に満ちた肉体。
股間の喪失感は依然として悲しいが、この「超人的な身体能力」を手に入れた快感は、何物にも代えがたい。
​「今日はここまで。莉緒奈ちゃん、この調子でコンクールも視野に入れましょうか」
​「……あ、はい。頑張ります」
​安達先生に特別に肩を叩かれ、俺は心地よい疲労感とともにレッスンを終えた。
バレエを終えて外に出ると、夕暮れの街並みが、前世で見ていたものよりずっと鮮やかに、キラキラと輝いて見えた。

56724ff6 No.2813

心地よい疲労感に包まれて帰宅すると、リビングでは安達先生の話題で持ち切りだった。パパは、俺が安達先生に褒められたと報告するなり、「さすが俺の莉緒奈だ!」と鼻高々だ。
​だが、その影で、ママの香苗さんが少しだけ唇を尖らせていたのを、俺は見逃さなかった。
夕食後、俺が部屋でくつろいでいると、クローゼットの奥をゴソゴソと探るような音が隣室から聞こえてきた。
​「……あら、まだ入るかしら」
​そんな独り言とともに、鏡の前で自分を確認する気配。
偶然、トイレに立った際に開いたドアの隙間から見えてしまったのは、大学時代のものだという、淡いピンク色のレオタードに身を包んだ香苗さんの姿だった。
莉緒奈のものよりずっと深いカット、そして何より、今の彼女の豊潤な肉体には、そのレオタードはあまりにも「小さすぎた」。
​「……まだ、大丈夫よね。莉緒奈ばかり見ちゃダメよ、あなた」
​鏡に映る自分に、そんな熱っぽい言葉を投げかけていたママ。色気は「大丈夫」どころか、完全にキャパシティをオーバーしていた。

​夜、静寂が訪れると、またあの「音」が始まった。
昨日よりもさらに熱を帯び、執着に満ちた声だ。
​「ねえ、あなた……。どう? 私のこの姿。安達先生より、ずっと……いいでしょう?」
​香苗さんの、甘く、それでいて挑発的な声が響く。
​「ああ、香苗……。驚いたよ、そんなものを持っていたなんて。ピンクの布が、今のお前の体に食い込んでたまらない。胸が、今にも溢れそうだ……」
​パパの興奮した息遣いが、壁を伝ってダイレクトに鼓動を揺さぶる。
続いて、衣擦れの音。どうやらパパは、レオタードの薄い布地越しに、香苗さんの豊かな双丘を揉みしだいているようだ。
​「んっあ、あなた。このまま……挟んであげる。莉緒奈にばかり見惚れてる悪いパパには、こうしてあげるわ……」
​「っ! 香苗、なんて柔らかいんだ。レオタードの冷たい質感と、お前の熱い肌が、交互に当たって……ああ、最高だ!」
​ジュポッ、ヌチャッ、という湿った音が響き渡る。
前世の知識が、それが何を行っているのかを克明に再現する。
レオタードの胸元を無理やり押し広げ、溢れ出した「大人の肉」でパパの剛直を挟み込み、上下にしごいているのだ。いわゆるパイズリ。
香苗さんの「んんぅーっ!」という、鼻にかかった艶めかしい吐息が、執拗に繰り返される。
​「はぁ、はぁ……もう、我慢できない。香苗、上においで」
​「ええ……。今日は、私があなたを……独り占めするわ……」
​ギシッ、とベッドが大きく沈む音。
香苗さんがパパに跨り、自らその熱を体内に迎え入れる。
​「あ、ああああぁっ……! はいった……っ、奥まで、全部……っ!!」
​香苗さんの絶叫に近い喘ぎ。
レオタードを着用したままの騎乗位。
「パンッ! パンッ!」という、昨日よりも重く、肉厚な衝撃音が断続的に続く。
ママのムチムチとした太ももがパパの腰を締め付け、弾力のある腹部がぶつかり合う音が、俺の部屋まで生々しく届く。
​「もっと……もっと激しくして! 安達先生よりも、莉緒奈よりも、私を見て……っ! ああ、ああぁ、いく……いっちゃう、あなた、あなたぁ!!」
​二人の結合部は、おそらくレオタードのクロッチ部分が横に避けられ、獣のような情交が繰り広げられているはずだ。
香苗さんの声は、次第に言葉にならない狂おしい悲鳴へと変わっていく。
四十代独身男の魂を持つ「莉緒奈」は、暗闇の中で天井を見つめ、ただただ圧倒されていた。
​(……ママ、安達先生への対抗意識が凄すぎるだろ。ていうか、二時間コース確定かよ……)
​若返った肉体は、この過剰なまでの「生の音」を、嫌応なしに敏感に受け止めてしまう。
俺は、将来の自分(莉緒奈)の姿に一抹の不安と期待を覚えながら、再び熱い夜の余韻に身を委ねるしかなかった。

a9c3bdfc No.3066

休日、如月家は家族揃ってお出かけだ。
パパの運転する高級車に揺られ、向かった先は都内でも有数な百貨店。
​前世の俺なら、入口のハイブランドの門構えだけで気圧されていたはずだが、今は莉緒奈。
パパに手を引かれ、お嬢様として堂々と絨毯を踏みしめる。
​だが、目的地に着いた瞬間、俺の「中身(おじさん)」が激しく動揺した。
​「莉緒奈、今日はママのお買い物に付き合ってね。パパはあそこのカフェで待ってるから」
「えっ……あ、うん」
​連れてこられたのは、淡い照明と甘い香香りが漂う高級ランジェリーショップ。
繊細なレース、透けるようなシルク、そして官能的な曲線を描くマネキンたち。
かつての俺にとっては、ネットの画像か、あるいはデパートの片隅で視線を逸らして通り過ぎるだけの「眩しすぎる聖域」だった。
​「うわぁ」
​思わず声が漏れる。
視界のどこを見ても、女性の「艶」を凝縮したような布切ればかり。
四十代独身男の魂には刺激が強すぎる。
毒か薬か、とにかく脳が焼けるような感覚だ。
​香苗さんは、俺がまだ子供で、大人の下着なんて興味がないと思い込んでいるのだろう。
屈託のない笑顔で、俺の顔を覗き込んできた。
​「莉緒奈、どうかしら。パパ、最近お仕事頑張ってるから……たまには驚かせてあげたいんだけど。ねえ、パパはどんなのが好きだと思う?」
​(……ママ、それを実の娘(中身おじさん)に聞くのか?)
​あの激しい「安達先生への対抗意識」を知っている身としては、返答に困る。
彼女の指先が、深いスリットの入った黒いレースをなぞる。
その横顔は、母親というよりは、恋する一人の女の顔だ。
​俺は、おじさんとしての「男の本音」と、莉緒奈としての「無邪気さ」を絶妙にブレンドして答えることにした。
​「んー……ママが着たら、パパは何でも喜ぶと思うよ? だってママ、綺麗だもん」
​まずは模範解答。
香苗さんの頬が、嬉しそうにぽっと赤らむ。
​「でもね……」
​俺はあえて、清楚さと背徳感が同居する真っ白なベビードールとセットのショーツを指差した。
純白。だけど、胸元のカットは大胆で、素材の透け感が絶妙に男の想像力を掻き立てる一品だ。
​「これ、とっても可愛いと思うな。白いのが、今のママに一番似合いそう」
​「あら、莉緒奈、センスがいいわね。白……そうね、新鮮かもしれないわ」
​香苗さんは満足げに頷くと、俺が選んだ純白のセットを店員に渡した。
さらに彼女は、自分自身の「攻め」の姿勢を崩さないためか、深いワインレッドのブラとソングのセットも追加で手に取っていた。
​(ワインレッドに、白のベビードールか)
​今夜もまた、二時間コース……いや、新調した勝負下着のせいで三時間コースになるかもしれない。
会計を済ませ、ショップを出る香苗さんの足取りはどこか軽やかで、その背中からは隠しきれない色気が溢れ出していた。
​「パパをびっくりさせましょうね、莉緒奈」
​そう言って俺の手を握りしめる彼女の掌は、期待に昂ぶっているのか、少しだけ熱を帯びていた。

9c5954c7 No.3067

エレベーターの扉が静かに開き、吹き抜けの開放感あふれる1階のカフェへと足を踏み入れる。
パパは窓際の席で、冷めたブラックコーヒーを片手にぼんやりと外の通りを眺めていた。
その視線の先には、下校途中だろうか、短いスカートをなびかせて笑い合う女子高生のグループがいた。
​「あら、あなた。随分と熱心に外を見ていらっしゃるのね」
​ママの声が鼓膜を震わせた瞬間、周囲の空気がマイナス5度くらい下がった気がした。
香苗さんの口元は微笑んでいるが、その瞳の奥には冷徹なまでの「観察」の光が宿っている。
​「い、いや、香苗。違うんだ。莉緒奈が高校生になったら、あんな風に友達と出かけるようになるのかなって、つい父親としての想像をしていただけで……」
「そう。高校生、ね。若くて、瑞々しくて……素敵よねえ」
​言葉は優しい。
だが、パパの背中に突き刺さる圧は、熟練のハンターが獲物を追い詰める時のそれだ。
パパは額の汗を拭いながら、必死に弁明を続けていたが、俺は確信した。
今夜の「査問」は、昨日までの比ではないだろう。

​豪華なランチを終えて帰宅すると、パパは「少し体を絞ってくる」と、最新のアドウェアに身を包んでランニングに出かけていった。
(……おいおい、毎晩あんなに『運動』しているのに、まだ走る体力が残っているのかよ。重役のバイタリティ、恐るべしだな)
​一方、ママは帰宅するなり、またもやクローゼットの主となっていた。
俺が「子供だから何もわからない」と高を括っているのか、あるいは昨日の安達先生や、カフェでの女子高生への対抗心が理性を上回っているのか。
部屋のドアは全開だ。
​俺は廊下を通りがかるふりをして、その光景を網膜に焼き付けた。
香苗さんが引っ張り出してきたのは、時代を感じさせないオーソドックスなブレザータイプの制服だった。
​「……っ、ふぅ。やっぱり、少しきついわね」
​鏡の前で、彼女は必死にシャツのボタンを留めている。
白のシャツは、今の彼女の豊潤すぎる胸に抗いきれず、ボタンとボタンの間からブラジャーのレースが覗きそうなほどパンパンに張り詰めている。
まさに「弾けそう」という表現が相応しい。
紺色のチェックのスカートも、大人になった彼女の丸みを帯びた腰回りと、突き出たお尻のラインを隠すどころか、かえってその輪郭を鮮明に強調していた。
​(すげえ。コスプレなんてレベルじゃない、現役への執念だ)
​赤のリボンをなんとか結び終えた彼女は、鏡に向かって「まだ、いけるわ」と呟き、その艶めかしい女子高生(?)姿を自画自賛していた。
​俺はそっと自室に戻り、見ぬふりをして宿題を広げた。
だが、ペンを動かすふりをしながら、スマートフォンで検索バーを叩く。
「IT企業 過労死」そして、自分の名前。
​検索結果のトップには、簡素なニュース記事が出ていた。
『都内IT企業で40代男性社員が心不全により死亡。過重労働の疑いで調査』
そこには、俺がかつて生きた証が、わずか数百文字の無機質な文章にまとめられていた。
誰も悲しまず、ただの数字として処理された「俺」。
​(……さよなら、おじさんの俺)
​どこか遠い世界の出来事のように感じながら、俺はブラウザを閉じた。
今の俺は、如月莉緒奈。この温かくて、少し狂ったほどに愛が深い家庭の娘だ。
​「莉緒奈、おやつにしましょう」
​廊下から弾むようなママの声が聞こえた。
ダイニングに向かうと、そこには先ほどまでの「無理やりな女子高生」の姿はどこへやら、落ち着いた普段着の上にエプロンを締めた、いつもの優しいママが笑顔で待っていた。
​テーブルの上には、手作りのマドレーヌと、温かい紅茶。
甘い香りが、死の記憶を優しく上書きしていく。
​「美味しいわよ、パパには内緒で、一番大きいのは莉緒奈にあげるわね」
​彼女の微笑みは聖母のようだったが、あのパツパツの制服を今夜着ることになるんだ、と思い出すと、俺は紅茶を少しだけ吹き出しそうになった。

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穏やかなティータイムが終わり、西日がリビングの床に長い影を落とし始めた頃、玄関の解錠音が静かな室内に響いた。
​「ただいま。ふぅ、今日はいい汗をかいたな」
​ランニングから戻ったパパの声だ。
その足取りは、数キロの走行を終えた直後とは思えないほど力強く、むしろ夜に向けてエンジンを再加熱させているような異様な活気に満ちている。
俺は急いで自分の部屋に戻り、ベッドに潜り込んだ。
時刻は夕食前。子供が不自然に寝ていても「遊び疲れて昼寝をしている」と思わせるには絶好の時間帯だ。
​パパはそのまま脱衣所へ直行し、シャワーを浴び始めた。
水しぶきの音が微かに聞こえる。


​パパが浴室から出た気配がした。
それと同時だ。
隣室の主寝室で、ママが動いた。
​「おかえりなさい、あなた。シャワー、済ませたのね?」
​廊下で交わされる短い会話。
だが、ママの声には昼間の聖母のような穏やかさは微塵もなく、どこか挑戦的で、獲物を誘い出すような湿った響きがあった。
​「ああっ!? か、香苗? お前、その格好は?」
​パパの驚愕したような、そして喉を鳴らすような声。
俺は耳をそばだてた。
扉の向こうで、あの「制服」が、パパの理性を粉々に粉砕したのが分かった。
​「今日、カフェで見ていたでしょう? 『高校生』の莉緒奈が楽しみだって。だから、私が先に見せてあげようと思って。どう? さっきの女の子たちより、ずっと、いいでしょう?」
​香苗さんの言葉は、パパの耳元で囁かれているのだろう。
カサリ、とブレザーの硬い布地が擦れる音が聞こえる。
続いて、パパが荒々しくママを抱き寄せたような、ベッドが大きく軋む鈍い音が壁を伝ってきた。
​「香苗。お前、なんて格好を……。シャツのボタンが、今にも弾けそうじゃないか。このスカートの短さも、お前の……その……身体には、刺激が強すぎる」
​「いいのよ、壊しても。あなたに、全部めちゃくちゃにされたい気分なの。見て、ここ。きつくて、苦しいのよ……?」
​パパの理性は、そこで完全に決壊したようだった。
「パンッ!」という、シャツのボタンが耐えきれず弾け飛んだような鋭い音が一つ、静かな夕暮れの部屋に響いた。
​「ああ、香苗……! お前、最高だ。そのリボンを解くのが、もどかしい……!」
​「んっ……ああぁっ! ダメよ、そんなに急いじゃ。スカート、捲りすぎっ。ああ、あなた、あなたのそこ……っ、制服越しに当たって……熱いっ!!」
​始まった。
昨日までとは違う、背徳的な「コスプレ」というスパイスが加わった情事。
布地が擦れる音、激しい呼吸、そしてパパの野性味を帯びた低い唸り声。
香苗さんの声は、制服という「若さの記号」に包まれているせいか、いつもより少しだけ幼く、それでいて絞り出すような淫靡さを増していた。
​(おいおい、まだ夕食前だぞ。しかもママ、制服のボタン本当に飛ばされたのかよ……)
​俺は布団を頭から被り、必死に「昼寝のふり」を続けた。
心臓が嫌な跳ね方をする。
それは、前世の死の予兆としての動悸ではなく、あまりにも生々しい「生命の狂騒」を隣で聞き続ける、若すぎる肉体の生理的な反応だった。
​隣の部屋からは、「パン、パン!」という肉のぶつかり合う音に混じって、制服の硬い生地が擦れ、乱れる音が絶え間なく響いてくる。
​「はぁ、はぁ……あなた、すごっ、制服を着たまま、中までっ。あああぁっ! 幸せ……私だけを見て、私だけを……っ!!」
​香苗さんの絶叫に近い悶え声が、壁を容易く突破して、莉緒奈の鼓膜に焼き付いていく。
前世の自分が無機質なニュース記事の中で消えていったその一方で、今、この壁一枚隔てた向こう側では、あまりにも濃厚で、あまりにも狂おしい「愛」が爆発していた。
​俺は目を閉じ、再び訪れるであろう長い、長い「二時間コース」の始まりを確信した。

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二時間後。
隣室から響いていた、制服の生地が激しく擦れる音と、香苗さんの「ああっ、ボタン、もう……っ!」という悲鳴にも似た歓喜の声がようやく収まった。
​俺は、限界まで「昼寝」を装い、心臓の鼓動を落ち着かせることに全力を注いでいた。
四十代おじさんの精神をもってしても、実の親のコスプレ情事を生中継で聴かされるのは、もはや精神修業に近い。


​「莉緒奈ー、起きてる? ごはんよー」
​廊下から聞こえてきたのは、驚くほどスッキリとした、それでいてどこか潤いを帯びた香苗さんの声だった。
俺はわざとらしく目をこすり、あくびをしながらリビングへ向かう。
​「……ふわぁ、よく寝た……」
​食卓に座ると、そこには信じられない光景が広がっていた。
パパはランニング後だというのに疲れを見せるどころか、頬が上気し、エネルギーに満ち溢れた顔でステーキを頬張っている。
そして、対面に座るママ。
彼女は先ほどまでの「パツパツの女子高生」から一転、上品なシルクのブラウスに着替えていたが、その首元には隠しきれない紅い痕が、一つ、二つ。
​(……パパさん、激しすぎだろ。マーキングかよ)
​さらに視線を落とすと、ゴミ箱の隅に、ちぎれた赤い糸がついた白いボタンが虚しく転がっているのが見えた。
やはり、あの「弾ける音」は空耳ではなかったのだ。
​「莉緒奈、今日はよく眠れたみたいね。顔色がとてもいいわ」
​香苗さんが微笑みながら、俺の皿にサラダを取り分けてくれる。
その指先がわずかに震えているのは、二時間に及ぶ「課外授業」の余韻だろうか。
​「うん、お昼寝したから元気だよ。……ねえ、ママ。その首、どうしたの? 赤いよ?」
​あえて、子供特有の無邪気な残酷さで突っ込んでみた。
パパが派手に咳き込み、ワインを喉に詰まらせる。
​「え、ええ……。これ? さっき、お部屋をお掃除していた時に、ちょっと……柱にぶつけちゃったの。ねえ、あなた?」
​「そ、そうなんだ! 香苗はうっかり屋だからな。ハハハ……」
​(柱にぶつけて、あんなに艶めかしい声が出るかよ)
​俺は心の中で毒づきながら、柔らかい肉を口に運んだ。
前世の俺なら、独り身の寂しさに耐えかねてテレビの音を大きくしていたはずの夜。
今は、この狂おしいほどに愛し合う両親と、豪華な夕食を囲んでいる。
窓の外には、タワーマンションから見える夜景が宝石のように散らばっていた。
​「莉緒奈。明日からは月曜日ね。学校も、バレエも、頑張りましょうね」
​「うん、頑張るよ。……パパも、お仕事(と夜の運動)頑張ってね」
​最後の一言は、小さく肉と一緒に飲み込んだ。
二度目の人生、小学五年生の夜。
隣の部屋から再び「……ねえ、あなた。明日は、何を着てほしい?」という密やかな囁きが聞こえてくるまで、あと数時間。
俺は、莉緒奈としての「新しい日常」の深すぎる闇と光を、全身で味わっていた。

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あの嵐のような夜が嘘のように、翌朝は抜けるような青空が広がっていた。
パパとママの「二時間コース」の後は、驚くほど静かな時間が流れ、若い肉体の特権か、俺は一度も目を覚ますことなく深い眠りに落ちることができた。


「莉緒奈、おはよう! 昨日はよく眠れた?」
ダイニングに行くと、昨日までの激戦を感じさせない、清々しい笑顔の香苗さんが待っていた。
肌のツヤが異常にいいのは、間違いなく昨夜の「デトックス」のおかげだろう。
自室に戻り、登校の準備を始める。
鏡の前で、俺はふと足を止めた。
(やっぱり、スカートは落ち着かないな)
前世の「おじさん」としての記憶が、スースーする下半身にどうしても警鐘を鳴らす。
俺はクローゼットの奥から、少しボーイッシュなデニムのパンツを引っ張り出し、足を通した。
「莉緒奈? 今日はその格好で行くの?」
着替え終えたところに、香苗さんがひょっこりと顔を出した。
彼女の手には、淡い水色の、清楚なレースがあしらわれたワンピースが握られている。
「今日は、ズボンの気分なんだ」
「あら、せっかくの月曜日なのに。このワンピース、莉緒奈の白い肌に絶対似合うと思って用意したのよ? ほら、パパも『莉緒奈のワンピース姿は天使だ』って言ってたじゃない」
慈愛に満ちた、しかし断固とした拒否を許さない母親の微笑み。
お嬢様育ちの彼女にとって、娘を可愛く着飾らせることは、もはや一種の使命なのだろう。
四十代の社畜根性が染み付いた俺は、上司の命令に背けない平社員のように、大人しくデニムを脱いだ。
「わかった。それ着るよ」
「ええ、いい子ね。やっぱり莉緒奈はワンピースが一番だわ」
鏡の中には、どこからどう見ても可憐な「如月家のお嬢様」が立っていた。
中身がおじさんだとは、神様でも気づくまい。


ランドセルを背負い、集合場所へ向かう。
近所の子供たちが集まる登校班。
高学年の莉緒奈は、班のなかでも少しお姉さん的な立ち位置らしい。
「莉緒奈ちゃん、おはよう!」
「おはよう、莉緒奈ちゃん。今日のワンピ、可愛いね!」
下級生たちの無邪気な挨拶。
俺は「おはよう」と、なるべく鈴の音のような声を意識して返す。
小さな歩幅で、コンクリートの道を歩く。
前世では満員電車に揺られて死んだような顔で通勤していたが、今はランドセルを揺らしながら、夏の残り香が漂う通学路を歩いている。
このギャップに、時折めまいがしそうになる。
学校に着けば、そこからは「苦痛」の時間だった。
「はい、ではこの漢字の書き順を確認しましょう」
「三角形の面積の公式は……」
(知ってる。全部、三十年前に通った道だ)
黒板にチョークが走る音を聞きながら、俺は頬杖をついた。
教師の言葉は子守歌のように遠く、教科書の内容は一度読み流せば全て理解できてしまう。
周りの同級生たちが必死にノートを取る中、俺はノートの端に「今後の人生設計:定時退社と早期リタイア」と殴り書きしそうになり、慌てて消した。
(勉強、ある意味バレエよりきついな)
唯一の救いは、窓から入り込む初夏の風と、自分の手が驚くほど小さくて白いことを確認する瞬間だけだ。
退屈な授業が続く中、俺の脳内では、今夜も繰り広げられるであろう「隣室の狂騒」と、どうやって耳を塞ぐべきかの対策会議が、静かに始まっていた。

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退屈な午前中の授業が終わり、ようやく訪れた昼休み。
教室の喧騒に身を任せていると、にわかに後方のロッカー付近が騒がしくなった。
「なんだよ、お前が先にぶつかってきたんだろ!」
「嘘つくなよ! お前がわざと消しゴム落としたんだろうが!」
クラスの元気だけはいい男子、佐藤と鈴木が顔を真っ赤にして掴み合いを始めていた。
周りの女子たちは「やだ、また始まった……」と引いた目で見ているか、遠巻きに眺めている。
(やれやれ。四十路の感覚からすれば、消しゴムひとつで人生の貴重な休憩時間を無駄にするなんて、コストパフォーマンスが悪すぎるぞ)
中身がおじさんの俺は、深い溜息をついて立ち上がった。
莉緒奈の華奢な体で喧嘩の仲裁なんて柄じゃないが、このままヒートアップして怪我人でも出れば、放課後のバレエに響くかもしれない。
「ちょっと、二人とも。そのへんにしておきなよ」
凛とした、しかしどこか落ち着き払った声で二人の間に割って入る。
「なんだよ如月! 女には関係……」
「関係あるよ。あんたたちが暴れて、私の机の上のノートが汚れたらどうしてくれるの? それに、そんな風に掴み合ってると、先生が来て昼休み返上で反省文だよ。どっちも損しかしないでしょ?」
四十代の社畜時代、理不尽なクレームを言ってくる取引先と、やる気のない部下をなだめてきた「調整能力」が、莉緒奈の口を借りてスラスラと溢れ出した。
論理的、かつ淡々と「損得」を説く小学生らしからぬ圧に、男子二人は毒気を抜かれたように手を離した。
「ま、まあ、如月がそう言うなら……」
「俺も、反省文は嫌だし」
二人がバツが悪そうに自分の席に戻っていくのを見届けて、俺は再び席に座った。
周りの女子たちが「莉緒奈ちゃん、すごーい!」と目を輝かせているが、俺からすれば定例会議のトラブルを一つ片付けた程度の感覚だ。
「如月さん、今の対応、お見事だったわよ」
いつの間にか教室の後ろに立っていた担任の先生が、感心したようにこちらを見ていた。
「子供同士の喧嘩って、つい感情的になりがちだけど。あなたは相手を否定せずに、冷静に状況を判断して収めてくれたわね。先生、助かっちゃった」
「あ、いえ。ただ、騒がしいのが苦手なだけですから」
少しはにかんで見せると、先生は「責任感があるのね」とさらに評価を上げてくれたようだ。
内申点が上がるのは、二周目の人生設計において悪くない。
(ふぅ。おじさんの『交渉術』も、案外この小さな体で役に立つもんだな)
先生やクラスメイトからの賞賛を浴びながら、俺は内心で「さて、午後の授業をどう乗り切るか」と、再び退屈な再履修のスケジュールに思いを馳せていた。

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学校が終わると、俺……いや、莉緒奈としての「第二の戦場」であるバレエ教室へ向かう。
ランドセルからレッスンバッグに持ち替え、再びあの重い扉を開けた。

「こんにちは」
更衣室に入ると、月曜日のクラスは先日のメンバーに加え、さらに数人の成人女性がいた。
相変わらず、中身がおじさんの俺にとっては視線の置き場に困る光景だ。
目の前では、仕事帰りだろうか。タイトなリクルートスーツを脱ぎ捨てたキャリアウーマン風の女性が、ストッキングを滑らせるように脱いでいる。
デスクワークで少し浮腫んだ足を、愛おしそうにマッサージしてからタイツに足を通す所作。
ブラジャーを外した瞬間に解放される、重厚感のある胸の揺れ。
そしてその横には、女子大生風の二人組。
一人は背中が大胆に開いた黒のレオタードを、もう一人は胸元にシースルーがあしらわれたボルドーのレオタードを選んでいる。
(ふぅ。今日も、眼福を通り越して、もはや修行だな)
スタイル抜群の女性たちが、レオタードを股布までグイッと引き上げ、鏡で自分のラインをチェックする。
その無防備な背徳感に、俺の脳内おじさんは歓喜の声を上げるが、肝心の「相棒」がいない虚無感は、やはり少しだけ胸をチクリと刺す。

「さあ、皆さん。集中して」
安達先生の鋭い声がスタジオに響く。
今日の俺は、昼休みの喧嘩仲裁で「おじさんの冷静さ」を取り戻していたせいか、先日のレッスンよりもさらに体が軽く感じられた。
バー・レッスンが始まる。
かかとを軸に、つま先を外側に開く。
(指先の先まで、神経が通ってる感覚がする)
前世の俺なら、わずか5分で膝が震えていたはずのポーズも、莉緒奈の体なら羽毛のように軽やかに維持できる。
「莉緒奈ちゃん、背筋がとても美しいわ。まるで見えない糸で吊るされているみたい」
安達先生の言葉に、他の生徒たちの視線が集まる。
センター・レッスンに映り、ピルエット(回転)の練習。
一回転、二回転……。
三回転を回っても、三半規管が全く揺るがない。
俺の持つ「大人の空間把握能力」と、莉緒奈の「若くてしなやかな平衡感覚」が完全にシンクロしていた。
「……信じられない。莉緒奈ちゃん、あなた、化けたわね」
安達先生が、手にした指示棒を置くほどに見入っていた。
周囲の大人な女性たちからも、「あの子、急にプロの顔になったわ」と驚きの溜息が漏れる。
レオタードが肌に吸い付き、汗が首筋を伝う。
筋肉が熱を持ち、肺が瑞々しい酸素を求めて大きく膨らむ。
前世、冷房の効きすぎたオフィスで死を待っていた俺には決して味わえなかった、極上の「生」の躍動。
(これだ。この感覚のために、俺はこの人生に放り込まれたのかもしれない)
更衣室での興奮も、股間の虚しさも、踊っている間だけは忘れることができた。
レッスンの最後、大きなジャンプを決めた俺の姿は、鏡の中で誰よりも高く、美しく、自由に見えた。

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バレエのレッスンで使い果たした筋肉の熱さを抱え、帰宅したのは夜の八時過ぎだった。
玄関を開けると、安達先生の指導よりも激しい熱気が……ではなく、香苗さんの甘い芳香と、晩御飯の美味しそうな匂いが出迎えてくれた。
「おかえりなさい、莉緒奈。レッスン、頑張ったみたいね。汗、たくさんかいたでしょう?」
香苗さんは俺の顔を見るなり、まるで獲物を見つけたような……いや、愛おしくてたまらないというような眼差しを向けた。
彼女の右手には、すでにバスローブが握られている。
「うん。ちょっと疲れた」
「でしょうね。さあ、まずは汗を流しましょう。パパが帰ってくるまで、ゆっくり二人で温まりましょうね」
有無を言わせぬ慈愛。
またしても更衣室の誘惑とは違う、逃げ場のない「母の空間」へ引きずり込まれる。
高級マンションのバスルームは、まるで高級スパのような設えだ。
広々とした大理石の浴槽には、香苗さんが好むミルキーホワイトの入浴剤が満たされている。
「ほら、おいで。背中を流してあげるわ」
香苗さんは自分の服を脱ぎ捨てると、湯船の縁に腰掛けた。
露わになったその肉体は、昨夜の制服の時のような「女子高生への対抗心」とはまた別の、成熟しきった女の余裕に満ちている。
濡れた肌が照明を弾き、豊満な胸が呼吸に合わせてゆったりと波打つ。
俺は小さく息を呑みながら、バスチェアに座る。
前世の俺なら、鼻血を出して倒れているような光景だ。
しかし、莉緒奈としてのこの体は、不思議と「心地よい安らぎ」としてその光景を受け入れていた。
「今日、すごく頑張ったんだって? 先生から聞いたわよ」
スポンジで背中を洗われる。
柔らかく、温かい。
香苗さんの手は、赤子を扱うように優しく、けれどどこか執着を感じさせる強さで、俺の肩甲骨から腰のくびれをなぞっていく。
「うん。先生が、すごく驚いてた」
「そう。莉緒奈は特別だから。ママの自慢の宝物だもの」
背中に回された香苗さんの腕が、俺の胸元で交差する。
豊かな胸の柔らかい感触が、俺の背中に押し当てられる。
湯気の中で、彼女の体温が直に伝わってくる。社畜としてボロボロになり、誰に労われることもなく死んでいった俺にとって、この「無条件の奉仕」は劇薬だった。
「ねえ、莉緒奈。これからもずっと、ママと一緒にバレエの練習、頑張ってね。あなたが輝けば、ママも嬉しいの」
彼女は俺の髪を丁寧に梳かし、耳元で甘く囁く。
鏡に映る俺たちは、まるで聖母子像のような、それでいてどこか背徳的な色香を漂わせる二人組だった。
「うん、頑張るよ。ママ」
俺は、香苗さんの腕をそっと握り返した。
この柔らかな温もりを失いたくない。たとえそれが、歪なほどに濃厚な愛情であったとしても。
塩素の匂いも、レッスンの汗の匂いも消え去り、ただただ、母の甘い石鹸の香りに包まれる。
(このままだと、おじさんの理性も溶けてなくなっちまいそうだ)
湯船に浸かりながら、俺はそう思わずにはいられなかった。
しかし、ここには安らぎがある。
今日という一日の疲れが、ミルキーな湯の中に溶けていく。
風呂上がりに待っているのは、きっとパパとの夕食。そして、また夜には「隣の壁」から響く、あの情熱的なノイズが聞こえてくるのだろう。
だが、今はただ、この温かさに身を委ねていたかった。

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時計の針が8時を指す直前、玄関のチャイムが鳴り、パパが上機嫌で帰宅した。
「ただいま! いやあ、今日は会社で健康診断があってね。早めに切り上げられたんだ」
ダイニングテーブルで夕食の準備をしていたママが、「お帰りなさい、あなた」と優しい笑みを浮かべる。
しかし、パパはそれに気づかず、ネクタイを緩めながら、まるで同僚に話しかけるような軽さで今日の出来事を語り始めた。
「実はさ、採血のナースさんがすごく丁寧でね。針を刺す場所も全く痛くなかったし、すごくテキパキしてて……ああいうプロの仕事って見ていて気持ちがいいよな。採血の時、少しだけ世間話もしちゃってさ」
パパの言葉には他意はない。ただの世間話だ。
だが、その瞬間、ママの動きがピタリと止まった。
背中に向けられたママの瞳が、一瞬だけ鋭く光ったのを俺は見逃さなかった。
聖母のような穏やかさは消え失せ、その代わりにあるのは、狩人が獲物をロックオンした時の冷徹なまでの執念だ。
「そう。そんなに丁寧なナースさんだったのね」
ママの声はいつもよりワントーン低く、しかし驚くほど滑らかだった。
「あなた、今日の献立だけじゃ足りないでしょう? 少し買い出しに行ってくるわ。すぐに戻るから」
それだけ言い残すと、彼女はハンドバッグを掴み、嵐のような勢いで玄関を飛び出していった。
パパは「え? なんだ急に?」と首を傾げているが、俺は食卓の椅子を深く引き、静かに紅茶を啜った。
(まずい。パパ、地雷を踏んだぞ)
30分も経たないうちに、ママは帰ってきた。
手に持っていたのは、いかにも場違いなほど鮮やかなディスカウントストアの黄色のレジ袋だった。
彼女はそのまま自室へと向かったが、バッグの口が少しだけ開いており、そこから見えたのは純白の布地と、一目でそれとわかる看護師の帽子――カチューシャタイプのナースキャップだった。
「……ふぅ」
リビングを通り抜ける際、ママがふと俺と目が合った。
彼女の表情は、先ほどまでの氷のような冷たさではなく、獲物を仕留める準備が整った狩人の、どこか妖艶な笑みに変わっていた。
「莉緒奈、今日は少し早めに寝なさいね。……パパには、とっておきの『健康診断』をしてあげなくちゃいけないから」
ママはそう囁くと、クローゼットへと消えていった。
パパはまだ何も知らず、テレビのリモコンをいじりながら「あれ、今日の夕飯は何だっけ?」などと呑気なことを言っている。
俺は自分の部屋に戻り、ベッドに倒れ込んだ。
(今日のコースは、白衣の天使か。パパの健康診断の結果、間違いなく悪化するぞ)
夜が更けるにつれ、隣の部屋から聞こえてくるはずの「静寂」が、またしても激しい愛の音で上書きされる未来を確信しながら、俺は静かに毛布を頭まで被った。
明日の朝、パパがどんなにボロボロになってリビングに現れるのか、想像するだけで前世の社畜時代を思い出し、少しだけ同情心が芽生えた。

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主人公 (中身おじさん、外見お嬢様小学生) には目の毒な夜の営みですが、第2の人生である 「如月莉緒奈 (りおな) 」のために、あまりにも激しすぎる交わりは控えめにしてほしいのと、そういった裏事情をあまり生々しく展開しはい方向で物語が続いていく続きをどなたか書いて下さい。

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自室のベッドに潜り込んだものの、静寂の中で意識が冴え渡る。
ママの「早く寝なさい」という言葉は、子供に対する寝かしつけというより、「これからは大人の時間だから邪魔しないでね」という親としての最後通告のように聞こえた。
30分。
アラームをセットするまでもなく、俺の体内の社畜時計が「そろそろ現場確認の時間だ」と告げている。
俺は忍び足で廊下に出た。
家中の明かりは落とされているが、主寝室の扉だけが、あえて隙間を空けたままになっている。
(確信犯だ)
少しだけ扉を押し、隙間から中を覗く。
そこにいたのは、昼間の上品な主婦でも、夕方のエプロン姿の母でもなかった。
「あら、心拍数が上がっていますね。患者様、健康診断の結果が心配ですか?」
ベッドの脇に立っていたのは、袋から取り出されたであろう、あまりにも布面積の少ない「ミニスナース」だった。
丈の短い白衣は、今のママの豊満な肢体を隠すどころか、太ももの付け根までを露わにしている。
中には透け感のある薄いランジェリーを着用しているのが見て取れ、そのコントラストが異常なまでの背徳感を醸し出している。
足元にはガーターベルト、そして頭には、申し訳程度に乗せられたナースキャップ。
バッチリと決め込んだ夜会メイクが、その「コスプレ」を異様なまでの完成度に押し上げていた。
「か、香苗……。いや、ナースさん……。その格好は、刺激が強すぎるよ……」
ベッドに腰掛けているパパが、完全にたじろいでいる。
だが、その目は釘付けだ。
「ダメですよ。さっきのナースさんよりも、私がもっと丁寧に、あなたの隅々まで『診察』してあげるんですから」
ママは甘ったるい声でそう言い放つと、パパの膝の間に強引に割り込んだ。
手にはおもちゃの聴診器。
彼女はパパの胸元にそれを当てると、わざとらしく大きくため息をつく。
「聴診器越しでもわかります。……あなたの心臓、私のことでドキドキしすぎて、壊れかけてますね」
ママは聴診器を放り投げ、そのままパパの首に腕を回した。
制服の時とは違う、もっとダイレクトで、もっと剥き出しの誘惑。
ミニスカートの裾が、パパの太ももを撫で回す。
「さあ、診察を始めます。特別に……全部、脱がせてあげましょうか?」
「ああ……香苗……! もう我慢できない!」
パパの咆哮とともに、二人がベッドへ倒れ込む。
ミニナースのスカートが捲れ上がり、パパのスーツのネクタイが床に放り出された。
白い布地と、大人の肌が絡み合う。
「ああっ、そこ! 看護師さん、ちょっと激しすぎ……っ!」
「ダメです。健康のためには、これくらいの荒療治が必要なんですよ……っ」
また始まった。
今度は「健康診断」という大義名分を得て、二人の情愛は昨日よりも数段激しく、そして滑稽なほどに熱を帯びている。
俺は廊下で呆然と立ち尽くしていた。
四十代の社畜だった頃の俺は、こんなにも濃密で、こんなにも馬鹿げたほどに幸せな男女の姿を見たことがあっただろうか。
歪んでいるかもしれない。
だが、そこには紛れもない「愛」の爆発があった。
(今日のパパの健康診断、間違いなく『再検査』確定だな)
俺は、これ以上見ていると自分の精神衛生上よろしくないという判断を下し、そっと扉を閉めた。
制服の次はナース。
ママの執念と、それに翻弄されるパパ。
如月家の夜は、今日もどこまでも長く、そして甘く狂ったものになりそうだった。

5b05b472 No.3412

以前、『主人公 (中身おじさん、外見お嬢様小学生) には目の毒な夜の営みですが、第2の人生である 「如月(きさらぎ) 莉緒奈 (りおな) 」のために、あまりにも激しすぎる交わりは控えめにしてほしいのと、そういった裏事情をあまり生々しく展開にはしない方向で物語が続いていく続きをどなたか書いて下さい』

と書きましたが、

① 官能なのでそういった描写があるのはやむを得ないと思っていますが、今後もサービスシーンはほどほどのところで鑑賞するのはやめ (香苗さんに見つかると色々ヤバいからね)たほうがいいと思います。ただでさえ、色々執着されている立場なので、自分から危ない目にあわないのは最善だと思います。

② 2025/10月ぶり以来に、如月莉緒奈ちゃん (中身は40代の社畜おじさんの魂) のイメージ画像を何枚かUPしてほしいです。

③ 莉緒奈としての、習い事 「ピアノ」 のエピソードがまだあがってないのでそのエピソードを書いてほしいのと、

④ 莉緒奈として、せめて担任の先生やカウンセラーの先生など、第三者の大人な人たちに、自分の親の家庭の裏事情を素直に吐露させ、やり場、きき場に困っているといったシーンの旨のエピソードを作ってほしいのと、

⑤ 今の小学生の授業はつまらないから、自分にはもっと高度な進学内容のTOEIC などの英検○級や、漢検○級などのエピソード、ならびに入試や高校時代、中学時代先取りの現在の内容を取り入れるように、教員に進言するエピソードも今後考えてほしい (クラスメイトの喧嘩に仲裁するなどのエピソードも込みで)。

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(続き) ⑥ 莉緒奈マシマシのエピソードのみ、濃密にし、誠一さんと香苗さんの裏事情はあまり生々しく展開させない方向で今後ともどうか作ってくれるように強く願います。

莉緒奈ちゃんの記憶って、ステータスは前に簡単に挙げていましたが、もっと他にはないですかね ? 事故直前までの記憶とか引き出せるなら、その描写もあってほしいです。

あと、莉緒奈ちゃんとして口からついて出る言葉や表現は優しく年相応に、以前の 「あんたたち」だときつい感じがするので、「あなたたち」などなるべくおしとやかに、お嬢様っぽいイメージがつけるように、説明や一人称の置き方に配慮して下さい。宜しくお願いします。

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② の所、有難うございます。

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これまで

40代社畜生活を送っていたはずのおじさんである主人公は、11歳の小学5年生の令嬢、如月莉緒奈として憑依 ? 転生 ? に なっていた。いわゆるタイムリープ (時間跳躍) らしかった。如月気の表裏生活に困惑しながらも、また小学校の授業では苦痛をしいられながらも、習い事であるバレエ教室 (※ピアノ教室はまだ描かれていないのでカット) などにおいてめざましい発展を遂げていく。(続く)

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(続き) ただ、水面下ではそれぞれの場面で大人たちやそこに通う者たちが日夜話し合っていた。本物の如月莉緒奈の魂は天に召されていたものだと思われていたが、実はまだ成仏しておらず、本来の自分が辿り着く行く末を見届けるため、「観察」としていくために第三者の男女の身体に憑依を繰り返してよりしろを乗り換えながら逐一行動を見続けていた状況であることを、今の如月莉緒奈 (40代社畜おじさんの男性の魂) は、この時まだ知る由もなかった。果たして、如月家の表裏の情事、それをとりまく周囲の反応は果たして ! ? さまざまな感情が入り乱れる中、莉緒奈 (主人公) の人生2周目はまだまだ前途多難な真っ只中にあるのだった………… 。

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落ちそう………

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元社畜だった俺は気付いたら人生2周目 ? かどうかわからない 如月(きさらぎ) 莉緒奈(りおな) という令嬢の小5に転生 ? していた。今は月曜のレッスンにつきっきりだけど、この身体が持つ知識と、俺の知識を足したこの姿で、習い事のもうひとつ、ピアノにもなにかしらプラスになりうることがありそうだと、変な確信を得ていた。



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