49303833 No.1922
キヨヒコ(身体はタチーハ)は王都の宮殿で王様に謁見する機会を得た。
彼女は王様の前で一礼し、落ち着いた声で話し始めた。
「やはり行くのか。大魔法使いタチーハよ」
王様の言葉は理解と心配が混じったものだった。
王様はキヨヒコがタチーハの身体を使っていること、そして入れ替わった事実を知る数少ない一人だった。
「はい。大魔法使いタチーハの身体と名はやはり本物のタチーハ様にお返ししたいのです」
キヨヒコは自分の決意をはっきりと述べた。
彼女の目には、強い意志とタチーハへの敬意が見て取れた。
王様はしばらく考え込んだ後、ゆっくりと頷いた。
「わかった。だが、辺境の森は危険だ。以前のタチーハがオークの王として君臨していると知れれば混乱を招くかもしれない。
慎重に進め、そして彼女があなたを認識できるように何か証拠となるものを持っていきなさい。」
王様はそう言って部屋の片隅にあった小さな箱を手に取りキヨヒコに渡した。
それはタチーハが大魔法使いとして認定された時に受け取った魔法の結晶が入ったペンダントだった。
「これはタチーハが持っていたものだ。彼女なら、きっとこれを見てあなたのことを、自分の事を思い出し信じるだろう。」
宰相と騎士団長もこの場に同席しており二人は互いに視線を交わした。
「我々もタチーハ殿の安否を確認するために、密かに軍から偵察隊を出してます。1週間前ですが最終的に確認したのは辺境の森のこの位置です。
しかし彼女がオークの社会に溶け込んでいるなら無用な戦闘は避けてください。貴女の無事を第一に考えてください。」
宰相が忠告した。
騎士団長も言葉を添えた。
「タチーハ殿は我々に多くの恩義があります。その恩に報いるためにも彼女を無事に連れ戻してください。大魔法使いタチーハよ、どうかお気をつけて」
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キヨヒコは深く頭を下げ、感謝の意を表した。
「ありがとうございます。王様、宰相様、騎士団長様。
必ずタチーハ様を見つけ出し、彼女の身体を返すことをお約束します」
彼女はタチーハの身体で、タチーハの知識と魔法を駆使して辺境の森へと旅立つ準備を整えた。
ペンダントを胸に抱き彼女(キヨヒコ)は心の中でタチーハに語りかけた。
「待っていてタチーハ。必ずあなたの元へ行くから」
キヨヒコ(タチーハ)は王都を離れ、危険と未知が待つ辺境の森へと向かった。
彼女の旅はただの身体の返却だけでなく友情や理解、そして真の魔法の力を試される冒険の始まりだった。