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水を被ると女になり、お湯を被ると男になる。
そんな漫画みたいな体質は早くに亡くなった母からの遺伝だった。
幼い頃からその体質に付き合わされてきたけれど、学校でプールや海に入れないのと、雨の日の登校に雨合羽をしっかり着なくてはいけない以外はそう不便という訳でもなかった。
事情が変わってきたのは中学に入ってから「女の俺」の体型が変わってきた頃だった。
たまに水を浴びて体がどうなっているか確認すると他人よりも明らかに胸が大きい事に気付く。どのクラスメイトよりも細いのに、胸だけはグレープフルーツのように丸々と、不自然に大きかった。
その頃の俺はとにかくこの体質をバレたくないという一心であり、反抗期もあり、この体質を忌み嫌うようにさえなっていた。
a7b84b43 No.1928
『東京ではもう1ヶ月雨が止んでいません。日数だけでなく局所的に記録的な大雨が冠水を引き起こし…』
温暖化は嫌いだ。
突然のゲリラ豪雨は体を濡らすリスクの塊だし、
この長雨だと毎日雨合羽を着て登校しなくてはならない。
「よう、今日も重武装だな」
「好きでやってる訳じゃない」
「大変だなぁ」
周囲には体質の事を「冷水アレルギー」で通している。
ガキの頃はともかく自分で対策できるようになってたし、高校生ともなれば周囲だって配慮してくれる。
徒歩約30分の道のりを親友の裕二と今日も歩いて帰るだけ。その筈だった。
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「なんか雨酷くなってきてないか」
「もう着くから急ごう」
家まであと数百メートル。
どこかに寄るよりも家に帰った方が早い。
そう考えて少し慢心してしまったのかもしれない。
その判断はたったの3分で間違っていた事を思い知らされる。
自分が経験したことない程天候は急激に悪くなり「バケツをひっくり返した程」としか言いようがない状態になっていた。
雨で周囲は白ばみ、前の信号が見えづらくなるほどの大雨に急変したのだった。
「おい純、大丈夫かよ!」
「ヤバいけど…家までもう少しだから大丈夫」
もう脚はずぶ濡れだった。
靴下は冷たくなり、歩くと靴がカポカポと音を立てるようになっていた。
あ、脚が縮んでいる…!
女になった時の俺の身長は140cmちょっとしか無かった。普段170cmくらいなので30cm近く小さくなる事になる。
急激に小さくなった脚は靴を引っ掛けるようにしか歩く事ができず、脛から下が徐々に短くなって歩きづらくなっている気がしていた。
自分でも随分よたよたと歩いているのが分かる。
まずい…このままでは…
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「うおっ!?」
膝から下だけが10cm近く短くなっているのだから、歩きづらいのは当たり前だった。
「お、おい!?大丈夫か!?」
「あはは、大丈夫…」
ヤバい。コケた時に結構濡れたな…
早く帰らないと…
その時だった。
大げさなクラクションがした後、
すぐ隣を大型トラックが通過して……
「「うわあああ!!」」
……………………
…………
……
「あはは…ヤバいな…!全身ずぶ濡れだ!」
「…………」
言葉もなく無意識に俺の家の玄関までダッシュしていた。
「大丈夫か?」
「……………」
声を出したら女の声になっている気がして声を出す事ができなかった。