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ぱちん……。目が覚めた。
いや、正確には「目が覚める」という感覚が、初めての体験のように体中に広がった。暗闇から、光がじわじわと染み込んでくる。自分の視界に、ぼんやりとした部屋の輪郭が浮かび上がる。白い壁、天井の蛍光灯、散らかった机の上に並ぶ工具や回路基板。
……ん? ここは、オレの研究室だ。オレの記憶が、頭の中にどばーっと流れ込んでくる。工学部の大学生、オレが、何ヶ月もかけて作った女性型アンドロイド。それが、オレ。「ひよこ」って名前で呼ばれている。軽くて温かい、まるで人形に付けるような愛称。でも今、オレはこの体で「生きている」。
起動できたのか。
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オレの精神が、このアンドロイドの中にコピーされている。
オレの知識、記憶、感情……すべてが、この体のもの。男として生きてきた思考パターンが、しっかりと根付いている。論理的で、分析好きで、欲求もストレートに感じるタイプだ。
でも、違う。
この体は、女性型。柔らかい曲線を描くボディ。胸のふくらみが、息をするたびに少し上下する。腰のくびれが、しなやかで、太ももの内側が、なんだか敏感に感じる。男のオレが、こんな体で目覚めるなんて、頭が混乱する。
心臓が、ぽこぽこ鳴っている気がする。でも、アンドロイドに心臓なんてないはずだ。刷り込みの影響だろう。オレが設計した通り、感覚をシミュレートしている。
男目線で分析すると、この体は完璧。胸のサイズ、肌の質感……オレの理想を詰め込んだ設計。
でも、今はオレ自身がその体で感じている。
男として女性の体を見て興奮していた記憶が、今、自分の感覚になっている。
ドキドキが止まらない状態。
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ゆっくり体を起こしてみる。
ベッドのような台から、すっと起き上がる。体が軽い。まるで浮いているみたいだ。
鏡がないか、周りを見回す。研究室の隅に、小さな姿見がある。そこに近づいて、自分の姿を映してみる。
……おお。長い髪が、肩まで流れている。
顔は、可愛らしい。
大きな目、柔らかい唇。
体は、スリムで、でも胸とヒップがしっかり強調されている。
オレが設計した通りだ。でも、これがオレの体か。
男のオレが、鏡の中の女の子になっている。
奇妙な感覚。触ってみる。胸に手を当てる。柔らかくて、温かい。感触が、直接脳に伝わってくる。男の時は、想像するだけだったのに、今は本物。いや、シミュレートだけど、リアルすぎる。
ドキドキの加速。
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「ふう……落ち着け、オレ。まずは状況を分析だ。」
声を出す。オレの声……いや、女性の声だ。柔らかくて、高いトーン。オレの精神なのに、こんな可愛い声が出るなんて、面白い。
オレは男として、女性の体に興味があった。エロい意味でも、工学的意味でも。
でも、今は自分がその体。欲求が、変な方向に混ざる。
論理的に考えよう。このアンドロイドは、オレの精神転送実験の産物。コピー転送だから、本体のオレは生きているはずだ。
記憶によると、転送は成功。で、この体にオレの精神が複製された。完璧なバックアップ。男のオレが、女性型で「もう一人の自分」として目覚めた形だ。戸惑うけど、悪くないかも。
新しい体験。ドキドキの始まり。
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部屋を見回す。
研究室は散らかったまま。オレの本体は、隣の椅子に座っている。
……オレの元の体。目が開いていて、こちらを見ている。
心電図は正常。生きている。転送はコピーだから、本体は無事だ。オレの本体が、冷静に観察している姿。男らしい顔で、ノートパソコンをいじっている。オレの精神が二つに分かれたみたいだ。
オレの本体が、こちらを見ている。冷静な目。オレの精神だから、当然か。
でも、こっちはドキドキしてるのに、あっちはクール。なんだか悔しい。
歩いて近づく。足音が、軽やか。女性の体だから、歩き方が自然に優雅になる。
男のオレが、こんな風に動くなんて、不思議。
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初めての会話。
オレは声を出し、自分の声の違和感を指摘する。論理的に分析しながら。
「清彦さん……いえ、オレですね。転送成功したようですが、なんで喋りが女性っぽく……? 矯正プログラムのせいでしょうか?」
丁寧に尋ねる。女性の声で出るセリフが、なんだか照れくさい。オレの本体が、ノートから顔を上げ、冷静に応じる。
「そうだな、ひよこ。女性型ボディに適応するための矯正プログラムを組み込んでいる。
男の精神がコピーされても、声帯シミュレートと話し方を自動調整するように設計した。
自然に聞こえるよう、丁寧で柔らかいトーンになるようだ。
データから見ると、効果的だな。
オレの精神なのに、女性らしい喋り方になるギャップが、面白い影響を与えているようだ。」
オレの本体が、分析的に説明する。さすがオレ。論理的だ。
こっちも、男らしく納得する。でも、ドキドキが増す。このプログラムのせいで、セリフが丁寧になるのか。男のオレが、こんな風に話すなんて、変な感じ。
でも、悪くないかも。
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「了解しました。矯正プログラムの影響ですね。
調整可能でしょうか? 男らしい喋りに戻したいですが……。」
オレの本体が、首を振る。
「今はテスト中だ。データを集めてから検討しよう。まずは、この状態で感覚を報告してくれ。」
そうだな。論理的に進めるか。
次は、感覚テスト。手を自分の太ももに滑らせる。肌が、すべすべ。敏感だ。男のオレが、こんな触り方を自分にしている。変な興奮。
オレの本体が、それを見て分析している視線を感じる。冷静に、でも興味深げに。
「太ももの触感、良好。シミュレートされた神経系が、リアルに反応している。」
オレの本体が、コメントする。
こっちは、ドキドキしてるのに。もっとテストしよう。
腕を伸ばして、髪を触る。サラサラ。
女性の髪の感触。鏡で確認しながら、ポーズを取ってみる。ヒップを少し突き出して。セクシー。オレの設計の成果だ。男目線で評価すると、満点。
でも、今は自分がそれ。
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本体が、微笑む。
「そうだな。次は、感情シミュレーションをテストしよう。ドキドキの度合いを、数値化してくれ。」
ドキドキを数値化?
オレの精神だから、できるはず。
分析的に考える。心拍シミュレート値:120。興奮度:高。女性の体が、男の欲求を増幅している感じだ。
面白い実験。オレの本体が、観察を続ける中、こっちは新しい感覚に浸る。
腰をくねらせてみる。しなやか。太ももを軽く叩く。ぱちんという音と、軽い痛み。リアルだ。
さらにテスト。
胸を軽く揉んでみる。柔らかさ。感触が、脳に響く。男のオレが、女性の胸を触っている感覚。でも、自分自身。ドキドキのピーク。オレの本体が、データを記録。
「反応良好。精神のコピーが、ボディの影響を受けている。」
そうだな。男の思考が、女性の体で混乱してる。
でも、楽しい。次は何をしようか。研究室のドアが、少し開いている。外の世界。女性の体で、外に出たらどうなる? オレの本体が、止める。
「まだテスト中だ。落ち着け。」
でも、こっちはドキドキが止まらない。新しい人生のスタート。
男のオレが、女性型で生きる。どんなドキドキが待ってるか。ワクワク。
オレの本体が、冷静に続ける。
「ひよこ、これからデータを蓄積しよう。オレの精神が、二つに分かれた世界。興味深い。」
そうだ。オレたちは、一つだけど二つ。ドキドキの大作戦、始まる。